1952年に許可制で原動機付き自転車免許が創設されて以来、ペーパーテストだけで取得できる“ミニバイク”として親しまれてきた原付規格と原付免許制度。
このたび、パーソナルモビリティ規格と免許が整備されることとなり、同時に原付規格と免許が廃止されることが、国土交通省の発表により明らかとなった。
今回の改正道交法では、道路運送車両法における「原動機付自転車」の規格区分と、道路交通法における「原動機付自転車」の免許区分を廃止し、これまでの原付規格・免許は普通二輪に「原付限定」を創設し、統合させる。
また、原付規格創設以来、50ccという排気量とサイズは変更がなかったが、今回の規格・免許の変更で、排気量アップ、最高時速を60キロに統一、サイズアップと強度増強で乗車定員を自転車と同じ子ども2人までOKという大胆な改革をすることにより、子育て支援につなげる狙いがある。
さらに、これまでの原付区分に加えて、パーソナルモビリティ規格・免許が創設される。これは、トヨタ自動車やヤマハ発動機などが「超小型車」を開発中で市販・普及に向けて法整備を行うが、さらに新たに新設されるパーソナルモビリティ規格・免許は、自転車以上原付未満の自走式乗り物のことで、許可制の運転許可証が必要となる。
この「自走自転車」「自走車椅子」のパーソナルモビリティ規格の乗り物は、歩道も原動機や電動モーターの動力を使って人力を使うことなく走行することを許可することとなった。
ただし、この自走自転車・自走車椅子は最高時速15km以下に規制され、同時に通常の普通自転車や電動アシスト自転車の歩道走行も「徐行」が義務付けられる。
この「徐行」の概念は「時速4km以下ですぐに止まれる速度」という道路交通法の規定が明確に加わる。
略称は現在募集中だが、
「パモ」
「パソモビ」
「楽のり」
などの候補が上がっているという。
新たな「普通二輪原付限定」「パーソナルモビリティ」の詳細については次の通り。
●普通二輪原付限定(略称:新原付)
・最高速度は旧制度の原付30km/hが廃止され、原則60kmに引き上げられる。(一般道70キロ、80キロ規制の道路にあってはこれに準ずる)
これは、超小型車の最高時速規制(原則60キロ、高速道路は乗れない)と合わせ、道路上の速度差をなくすことで事故防止につなげる狙いがある。
・二人/三人乗りが可能に。(ヘルメット着用義務あり)
・6歳未満の子どもに限っては自転車と同様、3人乗りを可能とする。ただし、3人乗りが可能なのは、指定された「3人乗りレーン」のみとされる。国は今後、朝晩のバス専用・優先路や、自転車レーンを中心に、新原付の3人乗りレーンを整備していくという。この乗車定員を自転車と同じ子ども2人までOKにするという大胆な改革は、経済産業省や厚生労働省の要望もあり、子育て支援につなげる狙いがある。
・ただし、複数乗車運転ができるのは免許歴1年以降で、複数乗車運転講習が義務付けになるとともに、複数乗車運転講習受講済み証をナンバー横に掲示義務となる。
・着用可能なヘルメットの規格は従来のJIS規格125cc以下の区分をなくし、従来の125cc以上用の着用が義務付けられる。つまり、ハーフ型、オワン型等は禁止され、ジェット型またはフルフェイス型に限られる。
・なお、原付限定の最高速度規制が緩和されることに伴い、警察庁ではライダーの乗車用ヘルメットの取り締まりを強化していくと言う。具体的には、半ヘル・オワンヘル狩りを行うほか、顎ひもが正しく締められているかどうかも法令で明文化し、取り締まりの対象とする。
・新原付免許は教習所で取得が可能になる。
これまで、ペーパーテスト+免許取得後講習義務だったのが、実技テストが必須となる。
指定教習所での教習時間は、実技3時間+座学3時間となり、筆記試験1時間+技能試験1時間の合計8時間を1日で受講+受験が可能となる。
・教習料金は、4500円(座学@1500円×3時間)+9000円(技能@3000円×3時間)+6000円(筆記・技能試験@3000円×2)=1万9500円程度とされる。これに、発行手数料等が加わる。
・教習所の座学がオンライン授業化される。
近い将来、指定教習所における座学教習レベルの均衡化と安価化、運転免許取得の容易化を目指して整備を進めているオンラインレッスン化に伴い、新原付の座学教習は全てオンラインレッスンとなる。
・新原付免許はこれまでの原付免許同様、普通自動車免許等に付随される。ただし、普通自動車免許取得時には実技教習時間が1時間増え、ダミー幼児を使った複数乗車教習が追加される。
・二人乗り可能で最高速度が引き上げられることに従い、車体の規格はブレーキやサスペンション、フレームなどを中心に、強化された規格に変更される。
・排気量は従来の50cc以下から80cc以下に引き上げられる。この規格変更は、これまで軽自動車が360ccから550cc、660ccと排気量アップするとともに車体の強化も図られたことによって、安全性が増したことを教訓に、ブレーキやフレームなどの増強に伴い車体重量増となることから排気量も上げられることとなった。
・新原付の排気量が引き上げられることに伴い、従来の250ccと400cc規格もそれぞれ10%増しの排気量となり、275ccと440ccの新規格となる。これは、排気量に余裕をもたせることにより、排ガス規制や騒音規制を容易にクリアできるようになる。
●パーソナルモビリティ(自走式自転車・自走式車椅子)
・これまであいまいだった自走式の乗物に関して新たに法律を整備する。
・パモ規格の主な特徴は、時速30km/h規制をする一方、いくつかの条件をクリアしたパソ車両のみ、歩道や自転車レーンを走行できるようになる。
・パモ規格の条件とは、①ヘルメット着用義務、②前後左右の衝突予防装置装着義務づけ、③灯火類(ヘッドライト、ブレーキランプ、ウインカー)の装着義務、④実技講習の義務づけ、⑤簡易筆記検査の義務づけ、⑥ゴールド免許はなく2年毎許可証更新、⑦自賠責保険義務づけ、などとされる。
・歩道走行時は「徐行」が義務付けられる。また「徐行」とは「時速4km以下ですぐに止まれる速度」と道路交通法に規定が明記されることとなった。
・「歩道上の徐行義務」はこれまでも道交法にあったが、今回の改正道交法ではこれまでの普通自転車に対しても厳格に適用され、警察庁は「徐行狩り」の取り締まりを行う方針を明らかにした。
・セグウェイなどの立ち乗りタイプは、転倒時の頭部への衝撃が大きいため、横二輪型は禁止され、四輪タイプに限られる。
・なお、新原付にあっては徐行義務を守れば歩道走行ができることとなった。新原付以上の二輪車にあっては、重量が重く衝突時の衝撃が大きく、従来通り歩道走行はできない。
●改正道交法施行後の取り締まり民間依託
・自転車の右側通行(逆走)、自転車の信号無視、自転車のヘルメット装着(特に二人乗り、三人乗り時)、二輪車のオワン狩り・半キャップ狩り、歩道上の徐行義務、以上の違反に関しては駐車取り締まり同様、民間依託することとなった。