9R(タマ)さんのこと
タマさんと最初に出逢ったのは、2005年の夏ごろ、相模川の河原だった。
当時、河原にあったカート場でミニバイクの練習をしに行ったとき、手のひらくらいのちっちゃな彼が飛んだり跳ねたり、独りで楽しそうに駆け回っていた。
そのうち飛びついてきたので、めでたくウチの子になった。
連れて帰って来て、はて名前はどうしよう、と。
初めて飼う猫さんだから、猫らしい名前にしようと思って、ふと思いついたのが「タマ」だった。
乗っているバイクのロゴが「ユメタマ」のように見えるから、というのは確か後付けの理由で。のちに2015年に玄関先でミーミー鳴いていてウチの子になった、ちっちゃい彼女は「ユメ」という名前を授け、めでたく二人揃って「ZX-9R」=「ユメ」ちゃんと「タマ」さんということになった。
タマさんは小さいころから賢くて、それゆえ、「さん」付けで呼んでいる。
飼い主と違って、ものおじせず、人見知りもせず。
小さい頃からハーネスを付けてはお散歩したり。
特徴的な鼻の頭の模様、左右対象なお顔の模様、真っ白でふわふわの胸とお腹の毛並み。
誰に見せても「かわいい」「りりしい」「かっこいい」と言われる自慢のタマさん。
ポンポンしっぽ気味のしっぽを触るとコの字型に曲がっていて、最初は誰かに虐待されたのでは、とか、交通事故に遭ったのではと心配したのだけれど、調べてみるとそれはカギしっぽという和猫の特徴だということがわかって、ほっとした。
あるとき、とても大切にしていたアクセサリーを失くしてしまい落ち込んでいたときのこと。1週間くらいたったとき、階段からカランコロンと音がした。タマさんがそれを見つけて、2階からはたき落として教えてくれたのだった。
2006年はわたしにとって、心身ともに非常にしんどい年だった。ライフワークにしているマン島で大きな事故の目撃者となったり、別の事故にまつわる事件に巻き込まれたり。数か月ものあいだ一日中、暗い部屋の隅で体育座りをして泣いていると、タマさんはそっと寄り添って涙を舐めてぬぐってくれた。
タマさんが小さいころは噛み癖があり、お腹空いた!の合図が、すねやアキレス腱を噛むことだったけど、3歳を過ぎたころにはそれもなくなり、お腹空いた! 宅配便が来た!(なぜかトラックが近くに停まっただけで、ウチへの配達かどうかもわからないうちにウチへの配達だとわかってしまうらしい)、シッコしたよ? うんちしたよ? 片づけて! 遊んで! 抱っこして! そんなとき、仕事をしているかたわらに来ては、にゃーと鳴いて教えてくれた。
そんなタマさんも、自分の病気のときは教えてくれなかった。抱っこをせがみ、ただただ息が荒くなっていき、病院に連れて行くと尿路結石で危ない状況だった。間一髪、手術で助かり、それからは健康そのものだった。骨格が大きかったのもあるけれど、最大で体重は6kgにもなった。
(ZX(ユメ)9R(タマ))
2015年のある日、窓の外で小さな仔猫がミーミー鳴いていた。我が家の周りは地域猫が愛されている土地柄で、これまでもいろんな猫さんが通りすがってきたのだけれど、その子は何かを訴えかけるような感じで、家の中を覗き込みながらミーミー必死に鳴いていた。
「ウチの子になる?」と聞くと、ミーと答えるので、その日からタマさんに加えてもう一人家族が増えた。前述したように、「ZX(ユメ)」と名付けた。

それから1年くらいは、同じ部屋にいるとフーフー言うくらい、タマさんはユメちゃんのことを受け入れなかった。いっぽうのユメちゃんも、負けじとタマさんに果敢にアタックを続けていた。
1年くらい経ったころ、ふと隣の部屋が静かになったので見に行くと、二人は愛し合っていた。それから大の仲良しになり、ひとときも離れなくなった。
タマさんは玉無しなので子どもができることはなかったけれど、少し弱ってきた今年の夏も、雰囲気だけではあったけれど愛し合っていた。
(ドライブも好きでした。病院に通い始めたついこのあいだの姿)
去年の夏から年末にかけて、タマさんの体重が半分くらいになってしまった。もともと好き嫌いはけっこうあって、大好きだった種類のご飯を食べなくなったり、いままで見向きもしなかったちゅ~るを食べるようになったり。
タマさんがウチに来た頃は、最期のことなんて想像もできなかったけれど、タマさんから学んだことは、猫の体重って人間の赤ちゃんに近いんだな、ということ。わたしはきょうだいがいない一人っ子で、子どももいないし、いとことも没交渉なので赤ちゃんを抱いた経験がほとんどなかったけれど、なるほど猫さんの温もりと重さがなぜだか幸せを感じるのは、そのサイズ感や体温の高さからくるものなのかもしれないと思った。
猫の寿命は10歳から20歳くらいだと言われているけれど、もしも自分に子どもがいたとしたら、親離れするのは高校生くらいだろう。子育ての期間はせいぜい18歳くらいまでだろう。そう思ったら、タマさんユメちゃんたちと穏やかに暮らし、そのとき──最期が来たならば、それは子どもが親離れするようなものなのだ、と自分に言い聞かせよう。
そう思っていた。
今年のお正月、丸三日間お水もご飯も食べなくなったタマさん。いつもの動物病院は5日からで、たまたま別の大きめの動物病院が開いていたので連れて行くと、肺に影が見つかった。それから3日置きくらいに肺の水を抜いたり、点滴をしたり。
治療が終わるとタマさんは決まってお散歩をしたがった。病院のロビーを猫さんがうろうろお散歩する姿は、動物病院とて珍しいらしく、看護士さんやお医者様が入れ代わり立ち代わり見に来ては笑顔でエラいね、賢いねとほめてくださった。
(診察前にうろうろお散歩)
最後の診察は先週の金曜日で、そのときはもう立ち上がることもできなくなっていた。
なので、いつも寝ている2階の寝室ではなく1階の居間で寝かせる準備をしたものの、朝になると気力で2階に上がってくる。
夕べ──土曜日の夜は1時間おきに様子を見ていたのだけど、いつの間にかベッドから廊下に降りていて、そこで倒れ込んでいた。いつものように1階のおトイレに自力で行こうとしたんだと思う。強いな、タマさん。
今朝。けっきょく最期も大きな声で鳴いて教えてくれた。わたしの腕の中で。いまも寝ているみたい。
ありがとね、タマさん。
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