なぜSSTR(サンライズ・サンセット・ツーリング・ラリー)が盛り上がっているのか?
わたし自身はまだ参加したことがないのですが、ここ数年、とくに昨年はツイッターをはじめSNSや、実際のライダー同士の会話で
“SSTR(エスエスティーアール”
という言葉を見聞きすることが何度もあり、その盛り上がりを感じていました。
昨年は参加費1万円するイベントにも関わらず、3000人以上の参加があったということです。
SSTRサンライズ・サンセット・ツーリング・ラリーとは、公式サイトによれば
SSTR(サンライズ・サンセット・ツーリング・ラリー)は、世界的なオートバイ冒険家・風間深志が発案した、オートバイによる独走的なツーリングイベントです。基本ルールは、日の出とともに自身で定めた日本列島の東海岸からスタートし、日没までに日本海の千里浜にゴールするという単純明快なもの。
「Chasing the Sun」(太陽を追い駆けろ)をテーマに掲げ、東の海に昇る朝日ととともにスタートし、太陽を追い駆けながら日本列島を横断し、石川県の千里浜にて西の海に沈む夕日を見送るという、かつてない壮大なスケールのアドベンチャーラリーです。
優劣をつけるものではなく、それぞれのライダーが自身の旅のテーマに沿い、無事にゴールゲートを通過し、全国から集ったライダー同士で交流を深める事を主な目的とした自己完結型のラリーです。
とのこと。
なるほど、「ラリー」の本来の意味である“集う”という意味でのラリーというわけです。
ところで、先日、facebook上でつながるグループ「バイク女子部」の新年会に行ってきました。
そこでも「SSTRに出たい人、情報交換しましょう!」という自己紹介をされる方がいらっしゃいましたので、なぜSSTRが盛り上がっているのか? その理由を探るべく、あれこれお話しをうかがってみました。
彼女らが目をキラッキラさせて語ったところによると──。
・SSTRは日の出から日の入りまでに日本海の千里浜でゴールするツーリングラリーである・ルートは自分で設定できる。ルートを考えるのもまた楽しい
・ただし、チェックポイントがある
・重要なチェックポイントもあるが、全部を回る必要はない
・参加者は同じステッカーを貼っているので判別できる
・走っていると、参加者同士という連帯感を感じ、挨拶したりするのが良い!
・宿を取るのが困難なほど、何千台も集まるイベントになっている
・エントリーは全員できるわけではない(そのため、日程発表日やエントリー開始日などが徐々に発表される)
・参加者にはゼッケンナンバーが配布される。ナンバーが若いほど良い、とされる
・千里浜はしまった砂浜の有料道路だが、他にはないシチュエーションなので特別感がある
・とくに、ゴール間際に上り坂やクランクがあって運転困難だが無事通過できると達成感がある
・ゴール間際は参加バイクの大渋滞となるが、それはそれで壮大な風景で印象深い
さて。
なぜSSTRがこんなに盛り上がっているのか、文化人類学をかじったわたしとしては、伝統となった都市祭礼になぞらえてちょっと考察してみようかなと。
都市の祭礼を研究してきた米山俊直によれば、祭礼には五つの要素があるとし(1986 米山 p204)、次の項目を挙げています。
①決まった時と場所②シンボル
③変貌した空間
④祭壇と儀式
⑤参加者
これにSSTRを当てはめると──。
①決まった時と場所
日程はだいたい同じ時期に決まっている。
時間は「日の出&日没」と決まっている。
場所も千里浜と決まっている。
②シンボル
完走すると「完走記録証」がもらえるそうですが、一番のシンボルは冒険家・風間深志さんの存在ではないでしょうか。
南極などをバイクで走破した風間さんを頂点として、誰もが自分なりの冒険にチャレンジできる……そんなスピリッツを感じさせるイベントです。
③変貌した空間
オートバイで走る道路は通常、舗装路なわけですが、SSTRのゴールは砂浜になっている千里浜。参加者にとってのバイク的日常空間が、砂浜によって非日常を体験できるんですね。
そして、何百台、何千台ものオートバイが一堂に会すことも日常ではなく、SSTR開催時の千里浜は見事に変貌するというわけです。
④祭壇と儀式
ゴールの場所そのものが祭壇的と言っていいかもしれません。
そこに至る砂浜走行はライダーにとってある種の儀式的……と言ったら言い過ぎでしょうか。
⑤参加者
祭祀の場合、参加者は祀るもの・祀られるもの、とされますが、都市祝祭の場合、あるいは広義に地域イベントと考えると、参加者は地元住民と主催者とイベント参加者、ということになるかと思います。
SSTRの場合、後援リストには地元市町と観光協会などの名前が並び、地域ぐるみでこのイベントを応援していることが分かります。
伝統行事が持続的に行われるようになるかどうかは“変化”というファクターが重要だと言ったのは確か米山だったかと。例えば、祇園祭りではオランダからの金襴緞子を取り入れるなど、新しいものを取り入れることでマンネリを防いだり。
また、これは祇園祭に限らず全国の祭りでよく行われていますが、神輿などは氏子単位で持ち回り制度にするなどして、新風を吹き込むと同時に伝承していく役割も果たします。
SSTRにそういった仕掛けがあるのかどうかわかりませんが、タンデム参加や親子参加も受け入れていることで、そのような流れになっていくのかもしれません。
* * * * *
いろいろと書きましたが、スマートフォンの普及と、SSTRがチェックポイントのチェックに使うスマホアプリの使い勝手の良さ、安定性も、急激な参加者増につながったのではないかと思います。
フォトコンテストも開催することで、ツーリング×スマホで情報発信という相乗効果が生まれたのではないかと。
正直、「紙のバイク雑誌+ガラケー」時代では、短期間にここまで参加者が増えることはなかった気もいたします。
もっとも、草千里という事例もあるわけですが、あちらは10年という年月をかけて口コミで拡がった結果であり。
なんにせよ、宣伝は大切ですねぇ。
新年会という場で、ほんの数人にほんの少しの時間、SSTRについてお話しを伺いましたが、さらっと聞いただけでもバイクイベント成功への鍵があるのではないかと感じました。
バイクで町おこしの先駆者、ウエルカムライダーズおがのを行っている埼玉県小鹿野町の皆さまも、祭礼の五つの要素をチェックしてみてはいかがでしょうか。
ウエルカムライダーズおがののメインイベント、「いちにちライダー宿」は10月6日(日)に開催が決定したそうです。
今年のSSTR、残念ながら5月末の日程は必ずマン島TTレースにかぶるのでわたしは参加できませんが、皆さま、熾烈なエントリー確保ができた暁には、ぜひ安全に楽しんでくださいませ。
(参考)SSTR昨年の参加者データ
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