二段階右折を議論する衆議院会議録
昨日のブログ『柏で凄まじい二段階右折の交差点を見つけた』を書く前に調べていたら、こんな議事録を見つけましたので、備忘録。
(太字は筆者による)
第102回国会 交通安全対策特別委員会 第5号 昭和六十年五月十五日(水曜日) 午前十時開議○太田政府委員 (筆者註:警察庁交通局長)
ただいま原付の二段階右折の問題について具体的に御指摘があったわけでございますが、現在の過密混合化いたしました道路におきまして、車両の通行方法について明確な規定を設けませんと交通の流れの錯綜を招いていたずらに混乱を生じさせる、あるいは弱い立場の原付の運転者の方が被害を受けるというふうなことになるわけでございまして、このたびお願いいたしておりますのは、原付がある交差点で二段階右折をするか一回でするかはその原付の運転者だけが判断してその者だけがわかっているというのでは、今のような道路情勢からいたしまして必ずしも十分ではない、その交差点に参ります交通参加者のすべてがその原付がどういう行動をするであろうかということを十分予知し一理解し得る、そういう中において二段階右折というものを設ける必要性というものを認めたわけでございます。
もちろん先生から御指摘がございましたような、そういう基本的な精神といいますか、御趣旨は十分踏まえながら今後も対応していかなければならないと思いますけれども、二段階右折の問題については今申し上げましたような特別な事情がございますので、御理解賜りたいと存じます。(中略)
○玉置(一)委員 (筆者註:衆議院議員、民社党。発言当時は41歳だと思われます)
次に移りたいと思います。
今回の法案の改正の中で原付自転車の運転方法、特に右折の方法についての変更というものがございました。これは事前のお話を聞いておりますと、国際法上の関連があるということでございました。その面についての状況がどうなったか、今まで話がありましたけれども、それを簡単にお願いしたいのと、それから今まで既に保有されております方ももう何百万人というふうにおられるわけで、果たしてこの法律施行になってすぐに皆さんがなじまれるかという心配もあるわけでございますから、この変更後、法律施行の完全な形で実施されるまでの手順、それから啓蒙についてどうされるのか、この辺についてもお伺いしたいと思います。○安藤説明員 (筆者註:警察庁交通局交通企画課長)
原付の二段階右折でございますが、御指摘のように、現在原付は千四百万台で、二輪と四輪の混合交通で非常な危険を呈しているわけでございます。そういう趣旨からして、広幅員道路では、車線変更をして中心点に寄って右折することの危険性を回避するために、これは日本独特のルールになるわけでございますが、原則三車線以上の広幅員道路については自転車と同様に二段階で右折する、対面交通との接触を避けるという考えから今回とらせていただいた措置でございます。
なお、施行までの準備といたしましては、交差点によっての横断歩道の移設だとか、あるいはたまり場所あるいは交差点改良を伴う等の、必要な、安全に二段階右折できるような事前の措置は相当講じていかなければならないというふうに思っております。○玉置(一)委員
家庭の主婦の教育だとか特に高齢者の方の教育だとかというのは、これは今までこの委員会で論議をされてきたけれども、交通安全についてもなかなかうまくいかないというような状況でございまして、本当にある一定期間内でそういう切りかえができるのかなというような心配もあるわけです。
今回の附帯決議の論議をしている中で、警察当局に対する非常に不信感というか、こういうものがあったのはよく御存じだと思いますけれども、こういうことも踏まえて、取り締まりの各府県警のレベル、これを統一的にやっていただかなければ、ある府県は非常にやさしくというのは変ですが、かなり柔軟な対応ができる、片方では決まったものはしようがないということでびしびしとやるということもあるかと思うのですけれども、こういうことを踏まえて、原付だけではなくてほかのことも踏まえて、警察当局として各府県に対して今回の法改正の中でのいろいろな問題点、あるいは柔軟なというか、運用をやっていく場合にそれぞれの現状に合った形でのこれからの行政のいわゆる執行をお願いしたいと思います。
この辺について、警察庁長官、今までのいろいろな理事会でのお話を聞いておられると思うので、その点を踏まえてお話をいただきたいと思います。○鈴木(貞)政府委員 (筆者註:警察庁長官)
交通行政、これは国民行政と言ってもいいような状況でございますし、また実態から見まして、まさに広域的ですね。今制度的には都道府県警察を中心とする警察行政ということでございますけれども、交通に限りません、あらゆる面において広域的に全国的に広がっている。なかんずく交通問題、これはまさに広域的な立場からやはり全国斉一にやるということが非常に肝要と思いますので、今先生のおっしゃいました点を踏まえまして、警察庁、管区というふうなそれぞれの立場で、全国が斉一に同一の認識とレベルでそれぞれ誠実にやっていくということで指導してまいりたいし、そういうことでやってまいるように努力してまいります。
○玉置(一)委員
再び原付のお話でございますけれども、二段階右折方式になった場合に、交差点の左方に車両が一たん停止をするというような形になるわけでございまして、今までのいろいろな交差点で見ておりますと、原付の人というのは意外と前へ前へ進もうという気がありまして、道路にかなりはみ出てとまるということもあります。右折方法が変わったために、逆に言えば交差点の改良ということをやらなければいけないのではないかというような気がするわけでございまして、この辺について警察庁と建設省とどういう連携をとられて、どういうことを考えておられるか、その辺についてお聞きしたいと思います。
○太田政府委員
二段階右折は、今お話がございましたように原付の非常に多数の方を対象に実施をしていただくというようなこともありますので、当面は片側三車線以上の広幅員の道路、これから実施をしてまいりたい。
それで、全くの試算でございますけれども、片側三車線以上の道路延長というのは約二千キロぐらいはあるのじゃないか。そこにある交差点というのは、約五千ないし六千ぐらいあるのじゃないか。これはまだ全く腰だめの話で恐縮でございますけれども、かなりの数になるわけでございます。そういうところをまず最初にやってまいりたいというふうに考えておりますが、そうした場合に、今の数千という交差点の中に似、お話しのように片側三車線以上であっても交差点の向こう側に車がたまるというようなことで非常に危険な場所というのもないわけではございません。そういうところにつきましては、交差点の改良というものを含めまして、さらに自転車の横断帯だとか横断歩道の移設あるいは交差点の中に誘導標示を行うというようないろいろなことを考えましてそれで対策を講じていく、これをやるにつきましては道路管理者と十分連携をとってやってまいるという考え方でございます。
そういうような現場での措置をいろいろ行いましてもなおかつ原付の滞留スペースが確保できないというような場合には、道路標識によりまして、逆に、片側三車線以上であっても二段階右折を実施しない交差点ということではっきりさせてまいりたいというふうに考えておりますが、今御指摘の道路管理者との緊密な連携というのは、各段階におきまして十分これから詰めてまいりたいというふうに考えております。
二段階右折の周知、交差点の改良が前提である、という前提は30年経って達成されているのか。
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