モーターサイクリスト誌にマン島TTの記事を寄稿しましたが、元の原稿はこちら
今度、発売される発売中の『モーターサイクリスト』誌に寄稿しましたが、著者に許諾なく校正改変されておりましたので、こちらに元の原稿を載せておきます。
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すっかりTVスターとなったガイ・マーティン選手が参戦しない2016年のマン島TTレース。主役は、現役最多勝利を誇るレジェンドにして昨年のシニアTTの覇者ジョン・マクギネス選手。キング・オブ・マウンテンと称される伝説のライダー、ジョーイ・ダンロップ選手を呈した公道レースの名門ダンロップ家の若き雄マイケル・ダンロップ選手。そしてTTウィーク中5勝の完全勝利の記録保持者にして大事故から奇跡の復活を遂げたイアン・ハッチンソン選手。この3人になるであろうという予想通りの展開となった。
1907年から変わらず公道を使うオートバイのロードレース、マン島TTレース。イギリス連合王国には属さない独立した島だからこそ開催が実現した伝統のレースは、1周60km、230ものコーナーを周回する難関コースを攻略することが“走る実験室”と呼ばれた。両大戦後に初の世界グランプリ開催の地となり、“road racing capital of the world”と称された。世界GPシリーズから外れた後も、TT-フォーミュラ1の世界選手権ステータスを維持し、後の世界スーパーバイク選手権の雛型となった。
現在はFIMのクラシックミーティングという特別な国際規格のレースイベントとして、主に市販車改造の二輪車クラスとサイドカーのレースが毎年5月末から6月初めの2週間に渡って行なわれている。
TTは現存する最古のモータースポーツイベントであり、公道で繰り広げられる非日常のエクストリームな光景を間近で観戦できることから“バイクの聖地”とも呼ばれ、人口約9万人の島に世界中からマン島の人口に匹敵する数の観戦客が訪れる。また、コース上では1000人以上ものボランティアがレースを見守る。
今年のトピックはなんと言っても、現在23勝中のマクギネスがJ・ダンロップの勝利記録26勝に迫れるかどうか、そしてそれを阻むのは誰か、の2つであった。マクギネスの勝利確実と思われた電動バイクのTT Zeroクラスでは、日本のチーム無限が開発した神電伍がまさかのマシントラブルで4位に。一方、初日に行なわれたTTスーパーバイクでは、M・ダンロップが驚異の平均時速記録を更新、133.393マイル(213.429km)を叩き出して優勝した。
今年の真の王者を決める2週間の長丁場の最終戦、シニアTT(事実上スーパーバイクのレース2)もM・ダンロップが勝利を収めたが、スーパーストッククラスで発覚したM・ダンロップ車のレギュレーション違反による失格問題、そして同じBMWでシニアTT2位となったハッチンソンが指摘したM・ダンロップ車への特別供給パーツ提供問題など、遺恨を遺した大会でもあった。
真のレーサーレプリカRC213Vの参戦(ブルース・アンスティ選手)や、2ストV4エンジンのスターMMX500の参戦(イアン・ロッカー選手)などの話題もあった反面、大会期間中、前座レースも含めて5人の選手が命を落とすという現実もあった。それでもTTが続くのはなぜか。この紙幅で答えることは不可能だ。TTは来年も5月27日から6月9日に開催される。
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