FIMから“ロードレース Road Race”の文字が消えた
2016年も明け、モータースポーツカレンダーをチェックしようと、FIM 世界モーターサイクリズム連盟のサイトを見に行ってみましたところ、たいへん気になることに気付きました。
FIMでは、長らく“ロードレース Road Race”という言葉を使っていました。
それが、(おそらく)2016年より “サーキットレーシング Circuit Racing”という言葉に変更されました。
FIMによる2016年のカテゴリー分けは以下の通りとなっています。
【SPORT】Circuit Racing
Motocross
Trial
Enduro
Rallies
Track Racing
これまでの言い方であるロードレース──ターマック(アスファルト)敷きでコーナーの連続する道路状のクローズドサーキットでのレース──を「サーキットレーシング」に言い換え、オフロード系はモトクロス、トライアル、そしてエンデューロとラリーを明確に分け、さらにはオーバル(楕円形)のコースで行われるレースを「トラックレーシング」──日本やアメリカではダートトラックと呼び、ヨーロッパではスピードウェイレース、フラットトラックなどと呼ばれる。広義にはアイスレースも含まれる──と呼び換えました。
ロードレース Road Race (またはRoad Racing) の呼び方は、モータースポーツの歴史的成り立ちに深く関係しており、そもそもモータースポーツの発祥は公道ないし道路状の場所で行われたことから名付けられたものと考えられます。
19世紀終わりから20世紀ゼロ年代にかけての黎明期には、いわゆる“AtoBレース”と呼ばれる都市間レースがヨーロッパ大陸や北アメリカ大陸で行われ、恒常的なコース設定はありませんでした。
ですから、レースの速さは現在のマン島TTレースでも使われている通り、「平均時速」が世界的な尺度であったわけです。(コースそれぞれのラップレコードは他サーキットと比べることができないが、平均速度なら世界共通で比べることができる)
それが、1905年に四輪車のレースとして始まったマン島TTレースがのちにTTマウンテンコースとして恒常的コースとして設定され、経年の進化を測れるようになっていったのに加え、1907年には世界初の常設サーキットとしてイギリスのブルックランズが開設され、道路状のクローズドサーキットで行われるレースもロードレースと呼ばれるようになりました。
1970年代まで世界グランプリ選手権でさえも、ロードレースはクローズドサーキットで行うものと、公道(ないし公道的コース)で行うものがありました。
それが、世界グランプリで公道コースを排除することとなり、公道を閉鎖して行うロードレース、いわゆる“公道レース”は独自の道を歩むこととなりました。
現在、公道レースとして有名なのはマン島TTレースですが、その他にもアイルランドでは各地で開催されていますし、ヨーロッパ大陸やニュージーランドでもあちこちで開催されています。
世界規模ではありませんが、南米でも盛んなようです。
というわけで、公道レースに携わっている人にとって、「“真のロードレース Road Race”は公道レースなのだ」という言説すら聞いたりします。
わたしは、単純に呼び方とコースの種類の違いだと思っておりますが。
そのような経緯も含めての、このたびのFIMにおける呼称の変更に至ったのではないかなと思われます。
さらには、ヨーロッパでたいへん人気のあるスピードウェイレースをさらに盛り上げていくため、
サーキットとトラックの呼称をあえて分けるということもしたのかもしれません。
トラックという言い方は、広義にはサーキットも含まれていたと思いますが、ここらで明確にカーブのある道路状のものをサーキット、オーバルなものをトラックと呼ぼう、ということになったのではないかなと。
さて、ここで気になるのは、FIMにおける公道レースの位置付けです。
マン島TTレースは、2016年もFIM傘下のAUCがオーガナイズしており、
FIM Classic Meeting Number: FIM 196/04
というステイタスが与えられています。
この「FIMクラシックミーティング」の説明はなかなか難しいのですが、FIMのお墨付きがある伝統的なイベントですよ、みたいな感じです。
ところが、FIMの公式サイトを検索しても、今年はこのクラシックミーティングの情報が上がっておりません。
その他の公道レースに関する情報も出てこないですねぇ。
マン島政府は、マン島TTレースの運営を含めた「公道レース選手権」という“コンテンツ”を世界に売って出ようとする動きがあります。
これは、ロンドンオリンピックを請け負ったブランディング会社を立ててまでの大がかりな構想です。
もしかすると、FIM系のプロモーターと相対立するものなので、FIMは静観している? みたいな話しなのかも、とも思ったり。あくまで推測ですが。
そんなわけで、FIMからロードレースの文字が消えた、の情報でした。
ちなみに、FIMではモータースポーツの他に「ビヨンドスポーツ」という理念も掲げており、
【Beyond sport】Ride Green
Ride Clean
Tourism
Women
Public Affairs
モータースポーツ以外に、環境問題、ツーリズム、女性の活躍、啓蒙活動などを掲げております。
| 固定リンク | 0
「スポーツ」カテゴリの記事
- マン島TTとは、いかなるレースなのか。~2013公式DVDライナーノーツより(2021.07.04)
- サーキットの入場料を一覧にしてみた(2018.05.11)
- 【お知らせ】5月6日スパにしサーキットスクールはレディスクラスも開催!(2018.04.10)
- 日本のMFJはFIMと違って引き続き「ロードレース」の呼称を使用(2016.01.15)
- FIMから“ロードレース Road Race”の文字が消えた(2016.01.14)
「06.マン島TTレース」カテゴリの記事
- 2023年もマン島TTレースの記事は「バイクのニュース」(&ヤフーニュース)に寄稿します(2023.05.30)
- 『マン島TTレース2022』(DVD/ブルーレイ)封入の解説冊子を書きました(2023.04.19)
- 「サンデーGX」連載中の『ジャジャ』(えのあきら先生)に小林ゆき撮影の写真が!!(2022.10.17)
- 【記事寄稿のお知らせ】バイクのニュースで「マン島TTトラベリング・マーシャル」について書きました(2022.07.11)
- マン島TT土産話会、満員御礼!(2022.07.10)
「MFJ」カテゴリの記事
- 日本のMFJはFIMと違って引き続き「ロードレース」の呼称を使用(2016.01.15)
- FIMから“ロードレース Road Race”の文字が消えた(2016.01.14)
- 2016年モータースポーツ/バイク関係主要イベント(2016.01.17)
- 年金関連のツイートまとめ(2013.03.09)
「12.モータースポーツ」カテゴリの記事
- 【Youtube】Kommonちゃんねる に「Vストローム250SX 試乗会の帰りに夏の思い出を語る」をupしました!(2023.10.01)
- 2023年もマン島TTレースの記事は「バイクのニュース」(&ヤフーニュース)に寄稿します(2023.05.30)
- 『マン島TTレース2022』(DVD/ブルーレイ)封入の解説冊子を書きました(2023.04.19)
- 2023年2月18日(土) ゆきズムじゃんぼりーvol.6開催のお知らせ(2023.01.28)
- 【記事寄稿のお知らせ】バイクのニュースで「マン島TTトラベリング・マーシャル」について書きました(2022.07.11)
「01.バイク」カテゴリの記事
- 【Youtube】Kommonちゃんねる に「Vストローム250SX 試乗会の帰りに夏の思い出を語る」をupしました!(2023.10.01)
- アドベンチャーでも軽い! スズキ V-Strom250SXに乗ってきました(2023.09.30)
- 『週刊新潮』(2023年9/28号)の原付関連記事にコメントが掲載されました(2023.09.25)
- 停まるときはリアブレーキも使いましょう(2023.09.19)
- 8月12日(土)13日(日) The Kommonsライブ・ゆきズムin北海道2023 &Kommonうでわマルシェ(2023.08.02)
「18.モトGP」カテゴリの記事
- 2023年2月18日(土) ゆきズムじゃんぼりーvol.6開催のお知らせ(2023.01.28)
- バレンティーノ・ロッシ選手が走った同じ道を走った(2021.08.06)
- 3月20日(土) 21日(日) ゆきズムじゃんぼりーvol.4 開催いたします(2021.03.07)
- DUCATI松戸の熱情型スタッフ小川さん×小林ゆき=先輩後輩対談を生配信しました(2020.05.16)
- 2月15日(土) ゆきズムじゃんぼりーvol.3開催!(2020.01.06)