論文「判例研究 バイク規制校則裁判(高知地判昭和63.6.6)」の紹介
とても古い論文ではありますが、丸刈り強制やパーマ禁止なども含め、昭和の時代に高校生がどのように校則等に縛られていたかが思い起こせる資料だと思います。
参考までに。
大田 肇1990 「判例研究 バイク規制校則裁判(高知地判昭和63.6.6)」『津山工業高等専門学校紀要』27, 91-97頁.
もうひとつ。
川瀬八洲夫,菊入三樹夫1993 「青年期教育と学校パラダイムの相対化─生徒指導とその方法過程に必要なもの─」『東京家政大学研究紀要』33(1),59-68頁.
(pdfへのリンク)
川瀬/菊入論文には、以下のようなことが書かれています。
「若者達に取って極めて魅力的であり,またたいへん危険な存在でもあるバイクについての対応は,学校教育の場においては古くより声高に論じられているが,高等学校におけるバイク問題は,今論じている典型的な実例である(9).バイク問題に対する,従来の家庭・学校・社会の対応は,結果的に子供の社会化を妨げてきたにすぎない.この問題が示唆しているのは,子供をとりまく存在者達の子供達への希望(これが正当なものかどうかの考察が必要)の調整と,実施の内容やその段階等の明瞭化と,相互批判の必要性である.」[川瀬/菊入 1993]
(太字は筆者による)
その脚注には、
「(9) 神奈川県教育庁高等学校課は,昭和55年以来実施してきた「バイクの4+1ない運動」(免許を取らない.車を持たない.車に乗らない.乗せてもらわない.それに,子供の要求に負けない.)を大きく転換した.この運動を推進してみたものの,事故がいっこうに減少しない現実に対応したものだが,当の高校生がこの運動の主体になっていなかったことから,「車社会を生き抜く,高校生の,高校生による,高校生のための交通安全運動」への転換を目指してのことである(かながわ新運動,『中等教育資料』Nd570,PP.78,1990.8) 従来の運動は交通安全教育ではなく,高校生からバイクを遠ざけることでしかなかった.高校生からバイクを遠ざけておくには強制力が必要となり,校則による禁止とその違反に対する処分という,秩序維持の優先策が取られてきた.現在でもこのような方法での「指導」は一般的に行われている(「バイク禁止校則訴訟」毎日新聞1992.3.20, 「バイク3ない運動の堅持」京都新聞1992.6.16).これらの事例に共通しているのは,子供達への具体的な行為の行使主体が学校と社会となっており,最も緊密な当事者である家庭がその後方に隠れて現れてこないこと,あるいは家庭は他の存在者にその当事者的実質を委ねてしまっていたことである」[川瀬/菊入 1993]
(太字は筆者による)
とあり、当時の神奈川県における「バイクの4+1ない運動」の変遷についてまとめられています。
繰り返しますが、この内容は今から20年以上前の話であり、この頃の高校の校則の常識(と思われていること)が(全国的に、一般的に)今に生きているとも思えません。高校生が髪を染めたり、ピアスをしたり、化粧をしたり、シャツの裾をズボンに入れなかったり、学校指定のカバンやコートを使わないのは常識になってきました。(学校によって校則の厳しさに差があるでしょうけども、少なくとも横浜や東京都心ではそれらの行為はかつての不良、あるいはヤンキーと呼ばれるマイノリティによるものではなく、ふつうに見かける光景になっているという印象があります)
さて、話をバイクに戻しますが。
思うに、高校生と二輪車の問題は、免許取得と、バイク通学、学外でのバイク利用、学外活動におけるスポーツとしてのモータースポーツ活動は分けて考えるべきではないか、そのことを二輪車業界は教育界にしっかり説明していかないといけないのではないかなと、頭の中を整理しつつあるところです。
運転免許交付は、国によって道路交通法を理解しているというお墨付きをもらうことですし、バイク通学となると近隣道路の渋滞やら安全確保、駐車場所確保などの理由によって規制されても仕方ない場合もあると理解しますし、学外でのバイク利用は場合によって許可されてよい(保険や装備など条件を付けるなど)と思いますし(登山や水遊びの方がよっぽどリスクが高いわけですし)、モータースポーツ活動は学校が制限なんかするべきでないと考えます。
わたしは3ナイ研究家でもなんでもないですけど、興味があったのでこのような論文を発掘してみました。
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