拡大するアフリカ大陸の二輪車市場、次なる一手は“重厚長大”
アフリカ大陸全体の人口は約10億人超と言われているが、二輪車の保有台数は推計で3000万台にすぎない(*1)。
今後、アフリカ大陸の経済発展が進めば、ASEAN各国の二輪車普及率に匹敵するほどの普及(4人に1台)が望め、潜在的には約2億5000万台の需要が見込める(*2)、二輪車市場にとって最後の畑、最後の楽園になるかもしれない。
* * * * *
現在の二輪車市場を牽引しているのは、中国・アジア諸国・東南アジア諸国、そして南米市場である。
これら新興国では経済成長が著しく、今後は二輪車から四輪車需要に移行していくと予測される。
過去の分析では、「各国の経済成長と二輪車の普及状況の関係から、1人あたりGDPが3,000ドルを超えると、四輪車への移行が進み、二輪車の普及率が低下する」との推計がある(ベルガー 2005)。
これを踏まえてアフリカ諸国で一人あたりGDPが3000ドルを超えている国を挙げると、以下の通りである(IMF 2011)。
1位 赤道ギニア 14,500.42
2位 セーシェル 11,204.08
3位 ガボン 10,518.28
4位 ボツワナ 9,537.40
5位 モーリシャス 8,741.53
6位 南アフリカ 8,078.45
7位 ナミビア 5,862.04
8位 リビア 5,509.98
9位 アルジェリア 5,503.16
10位 アンゴラ 5,314.14
11位 チュニジア 4,316.56
12位 カーボヴェルデ 3,660.86
13位 コンゴ共和国 3,630.79
14位 スワジランド 3,383.54
15位 モロッコ 3,084.45
以下、一人あたりGDPが3000ドル以下のアフリカ諸国を列記しておく。
16位 エジプト 2,931.83
17位 スーダン 1,959.42
18位 南スーダン 1,765.08
19位 ガーナ 1,579.72
20位 ナイジェリア 1,522.06
21位 サントメ・プリンシペ 1,473.18
22位 ジブチ 1,466.97
23位 ザンビア 1,413.77
24位 レソト 1,282.56
25位 カメルーン 1,225.22
26位 モーリタニア 1,184.92
27位 セネガル 1,132.66
28位 コートジボワール 1,062.10
29位 コモロ 902.65
30位 チャド 891.88
31位 ケニア 832.53
32位 ベナン 802.16
33位 ジンバブエ 752.07
34位 マリ 669.14
35位 ルワンダ 620.33
36位 ブルキナファソ 600.98
37位 トーゴ 599.93
(以下略)
(以上の統計は「世界統計のネタ帳」から抜粋した)*3 太字で示した国のうち、エジプトと南アフリカはオートバイ愛好家がもともといる土地である。また、ケニアとナイジェリアはホンダが生産・販売拠点を作った国である。
注目のアフリカ諸国各国の人口は、南アフリカ 5000万人、エジプト 8000万人、ナイジェリア 1億6000万人、ケニア 4000万人で、この4か国の合計は3億3000万人となっている。
つまり、このアフリカにおけるバイク先進国の南アフリカとエジプト、それに今後需要が見込めるナイジェリアとケニアの4か国で、8250万台もの需要と推計されるのだ(*4)。
この、ケニアとナイジェリアには前述したように、ホンダが2011年に現地法人を設立し、生産・販売を手がけている。
しかしながら、アフリカでの二輪車市場の特質として週刊ダイヤモンドでは、
「年間300万台が販売されるアフリカ大陸全体でのホンダのシェアはわずか1%程度。ほとんどを中国とインドの格安二輪車メーカーに握られている(中略)。 アフリカ市場は「格安のバイクを壊れるまで乗りつぶして、アフターサービスは気にしない」という特性があるという」(週刊ダイヤモンド編集部 2011年7月18日)
のように述べている。
ホンダは過去、1979年にナイジェリア進出を果たしたが、近年は中国からの低価格車が席巻、アフリカでのシェアを得られないでいた。
そこで、満を持して投入したのが、2011年発売の低価格戦略車で新型の小型二輪車「Ace CB125」「Ace CB125-D」である。
さらに、ホンダはケニアに生産・販売の拠点となる現地法人を設立。
「ケニアの新会社はHondaにとって、南アフリカ、ナイジェリアに続き、アフリカにおいて3番目の現地法人となります。また、生産工場としましては、ナイジェリアに続く2番目の生産拠点となり、Hondaのアフリカにおける二輪車の年間生産能力はナイジェリアと合わせて17万5000台」になるという(本田技研工業 プレスリリース 2013)。
【アフリカ大陸の二輪車市場、次なる一手は?】
新興国需要と言えば、今一番ホットな話題は“電動バイク”であろう。
しかし、アフリカ大陸の特徴を踏まえると、
・昼夜の寒暖の差が激しく、日中の最高気温は40度以上、夜間の最低気温は0度以下と過酷で、気温15度~28度程度でないと性能を発揮できない電動バイクは実用には向かない・電力事情が極端に悪い地域が多く、またコスト的にも、平均的な移動距離を鑑みても、電動バイクは実用には向かない
といった事情から、アフリカ大陸で電動バイクを普及させることは困難であると推測される。
とくに、ナイジェリアは原油産出国ということもあり、アフリカ大陸での二輪車市場は、今後もガソリン内燃機による二輪車が主要な原動機となるだろう。
さて、BRICsの次の市場として期待されるアフリカ市場の需要喚起として、ホンダのように低価格路線で種を蒔くのはもちろん、次の一手を用意しておかなければ、二輪から四輪需要に移行するころには二輪車需要が廃れてしまう恐れがある。
そこで、日本二輪車開発研究所(略称:JMDI ジムディ) (*5)では、アフリカ市場に向けたリサーチを行っている。
それによれば、
黒人ランナーの(体型は)「比較的小さく細く長い脚に特徴づけられる」(佐川 2012)
とされ、民族によるが、アフリカ系民族の体型は、比較的、股下が長いことがわかった。
また、
「東アフリカのケニア西部で伝統的な牛牧社会の1つ であるキプシギス民族の社会」ではもともと、「男性が、牡牛や去勢牛と自分を同一視するが故に尊重 し、経済性では牝牛には比べようもない程劣る去勢牛を少 しでも沢山飼って牛群を膨張させて自分の威信を誇示 しようとする文化慣行」があった(小馬 1985)
という。
オリンピックのマラソンなど長距離競技が強いことで知られるカレンジン族の中でもナンディと呼ばれる少数民族は、
「自分たちは、祭りと戦い、そして走ることが好きだ」とカレンジンを構成する小民族ナンディの若者は胸を張る。牧畜民として、牛争奪を巡る近隣民族との紛争が多かったカレンジンの社会では、勇ましさ、優れた運動能力は、伝統的に尊敬を集める」(関 2005)
という。
これはつまり、彼らの社会では、
「大きくて」「重い」もの
に価値を見いだしているのであり、日本二輪車開発共同研究所では、現代アフリカ社会に於いて牛に替わるアイデンティティの誇示には、オートバイがうってつけの道具である、という結論に達した。
そこで提示されたのが、以下のスクープ画像である。
特徴として、以下の点が挙げられる。
・牛泥棒をしてより大きくて重い牛を奪取した男ほど尊敬されるという民族柄、バイクも大きくて重いことが男の威厳として誇示される。・したがって、車重はボスホスに匹敵する500kg以上。重さを構成するフレームは日本製のハイテン鋼で、当該地域においては原材料自体が資産価値を帯びる。もし、マシンオーナーになにかあったとしても、残された家族は、バイクに使われているハイテン鋼などを、資材原料として売買することが可能なためである。
・大きくて重いバイクのほうが、牛泥棒ならぬバイク泥棒を予防することができる。
・もちろん、ガソリンタンクは完全防備となっている。
・股下が長い彼らの体型的特徴に合わせて、シート高はDR800の890mmをはるかに凌ぐ999mm。この“9”が3つ並ぶ数字にも理由があり、アフリカでは“9”という数字が珍重されているからだという。
・シート高999mmという条件は、エンジンデザインの自由度も生んだ。これまでオートバイのロングストロークエンジンと言えば、例えばカワサキのVN2000が103mm×123mm=2053ccなどがあるが、今回アフリカ市場に投入するモデルでは、「超ロングストローク」と名付けた140mmオーバーのエンジン開発を急いでいる。また、車高に対してバランスを取るため、バランサーも一気に重くできるということで、エンジニアたちの新たな挑戦が始まっている。
「大きくて重い」バイクは、すでに四輪のV8エンジンを積んだボスホスがあるが、アフリカ市場ではリズムやグルーブ感が重要なファクターとなるため、V型2気筒エンジンで開発が進められている。
新開発のエンジンはあくまで、アフリカのドメスティック市場向けであるため、アフリカ市場から盗難等で他大陸等に輸出されても補修部品がなく、かえって資産価値が高まると考えられる。・なお、専用アクセサリーとして、取り外し可能なオーディオ(スピーカー・ラジオ・ガジェットスタンド付き)が装備される。
・ときには、オートバイのエグゾーストノートが祭りの太鼓代わりとなるよう、スロットルレスポンスは繊細で、マフラーには「フェスティヴァル・モード」が搭載されている。
・そのスロットルは従来になく太いもので、これは統計的にアフリカ系人の手指が大きくて長いためである。
・長距離走ることも多いため、シートは従来の常識をはるかに超える厚みのあるものとなっている。また、この厚みがシート高を高くすることに貢献している。
・アフリカ諸国では二輪車の定員数が2名とは限らないため、タンデムシートには最低でも2名以上乗れるように、後方に長く伸びたデザインとなっている。
日本二輪車開発研究所では「今後、「超ハイシート高・超ロングストロークエンジン・超重量車重」の“重厚長大”車は、これまでのオンロード・オフロード・ツアラー・アメリカンなどに加えて、“アフリカン”という新たなカテゴリーを形成していくだろう」、としている。
・・・なお、
*1 4月1日ですので、あくまで推計値。
*2 4月1日の推計値。4月1日の。
*4 4月1日なので4人に一人という計算に基づく。
*5 4月1日ですけど、このような4メーカー共同研究所・シンクタンクがあってもよかろうもんですたい。
***本日は4月1日ですから。
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