G-FP2DF1P69Y Kさん(48歳)をいかにして華麗にサーキットデビューさせるか: 小林ゆきBIKE.blog

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2012.03.02

Kさん(48歳)をいかにして華麗にサーキットデビューさせるか

先日、旧知の知人Kさん(48歳)から、こんな相談を受けました。

「今度な、5月にな、サーキット走行会走ろうと思てんねんけど、いきなり走れるかいな」

“走れる”を翻訳すると、「みっともなくない走り」「そこそこ普通な走り」という意味のようで。

Kさんのスペックは以下の通り。

・バイクブームの頃、レインボーで練習したのち、限定解除を果たす。

・ちょいちょいバイクは乗っていたが、あまり楽しいとは思わなかった。

・ここ10年はほとんど乗っておらず、ビッグバイクに乗るのは3年ぶり。

・サーキットデビューするために、BMWのS1000が納車されたばかり。

・スポーツはテニスを嗜んでいるが、ビール腹が悩み。

Kさんの目論見とは、

・バイクを楽しく走れるようになりたい。

・サーキット(ミニバイクコースではなく大きなサーキット)でも、そこそこ走れるようになりたい。

・5月までの2カ月でなんとかしたい。

とのことでした。

開口一番、

ミニバイクやるといいですよ、XR100とか誰か貸してくれる人いないの、ってかS1000買うゆとりがあるならミニ買っちゃえば。せめて250cc以下のオフ車とか用意できません?」

って答えました。
初心者の場合、運転技術を習得するのに、かなりの部分、「小は大も兼ねる」からです。排気量も、車両の大きさも。

しかし、Kさんが曰く、

「だって、ぜんぜん姿勢が違うやんか? S1000、すんごい前傾しとるし?」

って言うんです。

ち・が・ー・う! 認識がちがーう!!

「もしかして、バイクってハンドルで曲がるって思ってません?

と答えました。

違うのん?

ああ、やっぱり。

自転車や模型なんかでやってみるとわかりますけど、車体がまっすぐなままハンドルだけ切っても二輪車は曲がることができません。

ハンドルを切って前輪に舵角を付けるのは、あくまで曲がるきっかけに過ぎず、バイクをコーナリングさせるためには、ハンドル操作とほとんど同時に車体を傾ける必要があります。

車体を傾けるには、人車一体の動きが必要になってきますが、このとき、いわゆる「ニーグリップ」ではなく、「バイクの重心位置を動かす」イメージを持つとよいでしょう。

「バイクの重心位置」とは、フロントホイールのアクスルシャフト+ステムシャフト+ピボットシャフト+リアホイールのアクスルシャフト、これらの点と点を結んで、トラスをイメージ。そのトラスをもっとも効率良く左右に傾けられる場所が「バイクの重心位置」です。

ライダーがバイクに接している面は、手のひら、お尻、太股(場合によっては膝も)、足の裏(場合によっては踵の内側も)ですから、バイク側で考えると、ハンドル+シート+ステップの位置関係も点と点で結んでトラスをイメージし、もっとも効率良くバイクを左右に傾けられる場所はどこかと考えてみる。
バイクのジオメトリーと、ライダーとバイクの関係、それらを総合して……。

「こんな風に考えてくと、力を入れるべきはハンドルではない、前傾姿勢かどうかは基礎的な操作の習得という意味ではあまり関係がない、ということが分かるでしょう?」
「なるほど~」

バイクの構造と動きを理解するには、Tensegrity(テンセグリティ)の概念を参考にしてみると良いと思います。
点と点を結んだ三角形は、どのような角度になっても張力と圧縮力がバランスすれば崩れない、というものです。(ヤフーの画像検索結果)


バイク初心者にありがちなのは、

・目線の持っていき方

・アクセルをちゃんと開けられるか

・ブレーキをちゃんとかけられるか

という、ごく基本的な事項が出来てない場合が多いので、パワーの小さいバイクや、足付きや重さなどの不安要素が取り除かれる、小さいサイズのバイクで練習を始めると上達が早い、というのが定石です。

一度だけKさんとツーリングに行ったことがあるのですが、走りはごく普通でしたが、強いて言えば、慎重でおとなしい走りだったという印象があります。
おそらく、そのまま大きなサーキットを走ると、メリハリのないダルい走りになるのではないかと推察されます。
そこで、アクセルをしっかり開ける練習とブレーキをしっかりかける練習として、

停止から全開で○km/hまで加速、そこからフルブレーキ

という練習をするとよいのではないかと思いました。
かつて、警察署主催の安全運転講習会で習った練習方法です。

0-10km/h、0-20km/h、0-30km/h、0-40km/hくらいまで、それぞれ練習します。

「ところで、ツナギは持ってるんですか?」

「まだ、そんな段階やないし」

「いやいや、サーキット走るならツナギがないとダメでしょう、これから全日本とか鈴鹿8耐とかシーズンに入るから、注文してすぐ出来るわけじゃないし」

「なんや、形から入るんかいな」

「そのビールっ腹だし、“吊るし”じゃキツいと思うよ~、どのメーカーさんにしますかね? RSタイチさん? クシタニさん? ヒョウドウさん? デグナーさん? ブーツとかグローブだって、早めに準備してナラシしといた方がいいと思いますよ~」

「そ、そんな、煽るな、て……」

練習よりなにより、Kさんは革ツナギを注文することから始めた方が良さそうです。


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