G-FP2DF1P69Y 何故わたしは真夏でも、長袖+長ズボン+グローブ+バイク用シューズ+フルフェイスでバイクに乗るのか: 小林ゆきBIKE.blog

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2011.08.16

何故わたしは真夏でも、長袖+長ズボン+グローブ+バイク用シューズ+フルフェイスでバイクに乗るのか

科学的な思考は、(研究者の)個人的な経験を排除して考えよう、という前提があるいっぽうで、対象者の(個人的な)経験を科学的に分析するという分野もあります。それでも、自分の行動はある程度、自分の経験によって規定されるのだな、なんてことを思いつつ。

ってな堅苦しい前置きはさておき。

長年バイクに乗ってますが、ある経験を境に、わたしは真夏でも長袖+長ズボン+グローブ+バイク用シューズ+フルフェイスヘルメットでバイクに乗るようになりました。

夏、真っ盛りになると、あの事件を思い出します──。

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あれは大学生時代、バイクの免許を取ったけどまだ自分のバイクを持っていなかった頃だったと思います。
大学の近くに引っ越し、日頃の移動の足として自転車を手に入れたわたしは、その日も何かの用事で自転車に乗って出かけました。

多摩丘陵まっ只中の山坂きつい横浜出身のわたしは、日常的に自転車に乗るという経験がなかったので、山手線の内側だけど下町風情が残る平らなその町で日々、自転車に乗ることをとても新鮮に感じていました。

その日は暑い暑い夏の日で、たしか、ショートパンツにノースリーブ、もちろんグローブなどせず自転車に乗っていたように記憶しております。

家を出て、ほんの50mくらい漕ぎ進めたところで“事件”は起こりました。

その道路は、幹線道路に出る手前のよくある狭い路地で、一方通行だし住宅街なので車通りはあまりないところです。
自転車ですから、やや左側通行していたと思うのですが、右側からスレスレに自転車の小学生が追い抜いてきました。

すると!

その小学生はどういうわけだか、追い抜きざまにこちらを振り向き、ぺっと唾を吐いたのです。
そして、その唾はわたしの顔に命中してしまいました。

一瞬、何が起こったのか判らなかったのですが、子どもの悪質ないたずらと悟り、自転車に乗ったまま、「こら!ちょっと待て!」と怒りながら、その小学生を追いかけました。
すると、小学生は止まるどころか、わたしの自転車の前に回り込んできて、急に脚を出してぶつかってきたのです。
わたしはその弾みで大転倒肘と膝をザザーっと地面にこすりつけてしまい擦過傷でみるみる血まみれになってしまいました。

それでも、すぐに起き上がって自転車に乗り、小学生を追いかけました。
すると、その小学生は、ちょうどその先のセブンイレブンに悠然と入っていくところでした。

自分も店内に入り、(多分、怒鳴り散らしていたとは思います)その小学生に「なんであんなことするの! どこに住んでる子? どこ小学校? お母さんは家にいる? お母さん呼んできて!」などと首根っこをつかみながら話しかけたんだと思います。
そのようなことをする小学生なので、答えもいい加減なもので、「お母さんはいない。買い物しに来たんだから手を離せ」などと言っています。
血だらけの大学生が小学生の首根っこをつかんで怒り散らしているわけですから、店員さんたちも見て見ぬふりであります。

親に連絡しろ、と言っているのに、その小学生ガキは首根っこをわたしに掴まれたまま、マンガを立ち読みし始めました。首根っこをつかんでいるヒジから血が滴っているというのに。
そのガキの異常な行動に戸惑っていると、突然、ガキは読んでいたマンガを投げ捨て、わたしの腕を振り払ってセブンイレブンの店内から外へ逃げていってしまいました。
当然、追っかけましたが、今度は見つかりません。

怪我をさせられたことよりもむしろ、「東京のガキはスレてる……」と都会の澱のようなものを垣間見て、ショックを受けたことを覚えています。

やり場のない怒りと不条理さをどうやっておさめたものかと思案しているうちに、「そうだ、これは交通事故だ、当て逃げなのだ」というアイディア(?)が沸いてきました。
怪我をさせられた悔しさと、買い物だなんだかんだと言いながら嘘を言われてその結果逃げられた悔しさもあります。
そこで、血だらけのまま、近所の交番に行ってみました。

大の大人がヒジやヒザを血だらけにして現れたものですから、そこにいた若い警察官は「ど、どうしたの?」と若干動揺していました。
話を聞いてくれそうなその態度に悔しさが一気に込み上げ、「こ、子どもに唾を吐かれたんですぅ……」と泣きながら訴えました。

「子どもに唾? どういうこと?」

と、おまわりさんはハテナ顔です。
しかし、ここからのお巡りさんの対応は今考えると素晴らしかった。

「まあ、いいからここに座りなさい」

とか言いながら、応急救護セットを取り出し、まずは怪我の手当てをしてくれました。
事件の顛末も、ただ話を聞くだけでなく、何やら調書のようなものを書きながら対応してくれました。
今考えると、それは被害届でも調書でも何でもなかったと思うのですけど(本格的に調書を取るようだったら、本署に連れて行かれたハズ)、キチンと話を聞いてもらえたおかげで、わたしの気持ちはほぐれていきました。

何しろ、コトは小学生の仕業です。警察が本格的に捜査するはずもなく、まあ、結局はわたしのやれら損なわけなんですけど、とにかく気持ちを収めるしかない。

そんな不条理な事件を経験したのが、まだバイク初心者だった真夏の出来事でした。


* * * * *


わたしの育った地元横浜は、

・駅まで徒歩8分ずっと下り坂(逆に駅から家へはずっと上り坂なので12分かかる)

・駅前の「駐輪場」に自転車が1台もない。原付しかない

・丘の上にあった高校経由のバスは、雪が降ると運休する(チェーンをしても勾配がキツすぎるので登れない、下ると止まれない)

・高校から駅に下るバス車内は、標高差で耳がキーンとなる

みたいな環境だったので、日常的に自転車に乗ることがない地域でした。
そのため、自転車に乗ることですら、この事件があるまでナメていたのですけど、たいしてスピードなんか出ていないにも関わらず、ちょっと転んだだけで、自転車でさえこんなに怪我をしてしまうということを経験で理解したので、バイクで転んだらなお酷いことになるんだろうなー、という想像力のもと、わたしは今まで真夏でも長袖+長ズボン+グローブ+バイク用シューズ+フルフェイスヘルメットという格好でバイクに乗るようになりました。

今まで道路で転んだことは(交通事故も含めて)10回もないと思うのですけど、まあ仮にこれまで40万km走行してきた中で10回転んだとしましょう。計算してみると、

10回/40万km

10万kmあたり2.5回

年換算で 0.4回/年

となります。
小林ゆきがバイクで転倒する確率は2年に一回あるかないか。
これが、多いのか少ないのかはわかりませんが。

これまで、デイトナバイクウィークの取材ですとか、とある撮影でノーヘルで走った経験もあるので、ノーヘルとかノースリーブやサンダルでバイクに乗る爽快感というのも理解しているつもりです。

ですが、わたし自身は、低い確率であってもやっぱり、これからも長袖+長ズボン+グローブ+バイク用シューズ+フルフェイスヘルメットでバイクに乗るつもりです。

そして、その信条を他人に強要・強弁するつもりはないことを書き添えておきます。

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【追記】

「想像力」が未経験の世界を補うのではないかなー、とは思っております。

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