ニーズ≠欲しいバイク、ニーズ=必要なバイク
国内復権へ…二輪大手、てこ入れに躍起 低コスト車投入で需要刺激(フジサンケイビジネスアイ 2010.12.20 05:00)
この記事を読んで、タイトルだけまず浮かんだので、メモ的に。
ちなみに、国内二輪販売台数減の中心は原付で、とくに50ccの販売台数だけが激減しています。
ここ10年ほどは中古車の販売が活況で、たとえば250ccクラスの中古車販売台数は2009年度で約18万台。250ccクラス新車販売台数は約4万8000台なので、4倍近くも中古車が売れています。
中古車販売総数だと概算で約80万台から100万台近くあるのではないかと言われておりまして、新車の販売台数が2009年に38万台(うち、原付は25万5000台)にまで落ち込んだので悲観的な報道が続きましたが、実際には新車・中古車を合わせて100万台以上は販売されているという現状があります。
さて。
これまで、弊ブログや記事・論文等で書いてきた通り、二輪需要減の要因をわたしはこう考えています。
①社会構造の変化
→高校・専門学校・大学進学率が上がり、16歳~18歳の就労人口が減った。この年齢層だと四輪免許は取れないため、二輪車による通勤や配達業務の需要がかつてはあったが、この年齢層の二輪車による通勤や配達業務需要が減少に転じた。
②産業構造の変化
→かつては農業・漁業・林業など一次産業と、郊外の工場など二次産業の割合が高く、中卒の16歳~18歳と、高卒で経済的理由によりまだ四輪車を買えない(もしくは四輪免許を取れない)層が、通勤・配達業務のための二輪車需要があった。近年は一次産業・二次産業の割合が減り、二次産業の場合は通勤バスなどに、三次産業従事者は鉄道網の発達により、通勤は鉄道やバスなどに移動手段が変化した。
③大都市部の公共交通機関の発達
とくに東京圏と関西圏の大都市周辺の鉄道網の発達や、バス路線の拡充で、通勤・通学手段が公共交通機関にとってかわられた。ここ数年は、二輪車に対する駐車取り締まりも大きく影響している。
④中小都市部と地方都市の公共交通機関の衰退
大都市圏に対して、中小都市部、地方都市、郊外、農村部、山村部は公共交通機関が衰退し、移動手段は二輪車ではなく、四輪車に移行した。
移動手段の四輪化は、高齢化や若年層の都市部への人口移動も影響している。
ところで、上の①から④は「必要な交通手段」としてのバイク需要なのですが、「欲しいバイク」、すなわち、趣味的なバイク需要はどう変化してきたのでしょうか。
実のところ、趣味的バイク需要は1970年代あたりからはさほど変化していないのではないか、という気がしています。
もちろん、時代によって「お金持ちのステイタス」「高度経済成長下の労働者のレジャー」「空前のバイクブームを背景にした若年層への普及」「リターンライダーの出現」など、トレンドは変化していますが、329万台→38万台のような大きな変化は、「欲しいバイク需要」からは起こっていないのではないかという気がします。
ともあれ、「ニーズ≠欲しいバイク、ニーズ=必要なバイク」と考えると、おのずと「必要なバイク」にどのような性能を持たせたらよいのか、その結果、どのような価格なら需給を満たすのか見えてくるのではないかと思いました。
125ccクラスのスクーターが売れ始めたのは、価格戦略というより、ニーズを満たす必要最小限の性能がそこにはあるからではないかな、と。
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