「モータースポーツ文化」って何だろう?
あるレースでのひとこま。
パドックはライダー、チーム関係者、ファン、地元の人でごった返していた。 7、8歳の地元の男の子と思われる子どもたち数人が、通りすがる人に「これ、誰のサイン?」
と言いながら、シャツを胸までたくし上げ尋ね回っている。
手にした油性マジックで、有名ライダーとおぼしきライダーから、身体に直接サインをもらったのだ。
しかし、それが誰のサインだかわからない。
それで、レースファンと思われる通りすがりの人に尋ね回っていたのだった。微笑ましい光景に、カメラを構える人。すると。
「フィフティピー! フィフティピー! 払え! 写真撮るなら金を払え!」
子どもが叫ぶ。
この状況には、いくつもの「スポーツ文化」をはらんでいる。
・ファンだけでなく、地元の人もパドックに来てレースに親しんでいる。・パドックは無料で見学できることをファンも地元の人も知っている。
・パドックでライダーやチームの人たちと触れ合えることをファンも地元の人も知っている。
・ファンや地元の人のために、ライダーやチームの人びとはサインをしたり、ポスターやスポンサーグッズを配るなどファンサービスを行なっている。
・地元の大人のレースファンだけでなく、地元の小学生までもがパドックが見学できることを知っていて、レースに親しんでいる。
・(子どもでも)レースに参戦しているライダーが羨ましい存在、かっこいい存在と見ている
・(子どもでも)レーシングライダーのサインなど生の証が尊いもの、貴重なもの、自慢できるものとして認識している
・子どもがライダーのサインをもらっている光景を写真で残すという行為。レースそのものではなく、レース周縁に起こっている事象もスポーツの側面として捉えていること
・たとえ名前や顔の認識がなくとも、レーシングライダーは尊敬される存在であることを認識し、羨望のまなざしを送る
・より成績の良いライダー、有名なライダーのサインの方が価値があると思っている
・「サインをもらった子ども」という情景に商品価値があることを子どもは知っている
このような「スポーツ文化」は、当該スポーツ競技の「周縁の文化」であり、そもそも当該スポーツ競技そのもののルールや選手・チーム、観戦方法などが認知されていることが前提となる周縁の文化である。
ちなみに、上記のフィールドノーツは、2009年のマン島TTレースでのひとこまです。
この話には続きがありまして。
「50P!」と叫んでいた子どもに、通りすがった地元の人と思われる50代の男性が、
「ここで商売するなら政府の許可が要るんだよ、だからお金くれ、なんて勝手に言っちゃダメだ」
とまさに正論で子どもを諭していたのでした。
++++++++++++++++
さて。
先週末、ツイッターを使って
「スポーツ文化ってなに? モータースポーツってなに?」
という質問を投げかけたところ、たいへん議論が盛り上がりましたので、こちらでいったんまとめておきたいと思いましたが、それはまた今度。
ハッシュタグは#sportcultureです。
ツイッターのいいところは、アカウントを持っている人でないと発言できないことです。ですから、ブログのコメント欄のように、通りすがりの言いっぱなし、匿名にしても属性がわかりにくいということがなく、@--というアカウントを辿れば、その人が他にどんなつぶやきをしているか一目瞭然なので、割とノイズが少なくなるという部分だと思います。
数日、皆さんの意見を伺っていて感じたのは、
「モータースポーツ文化って具体的にどんな事象でしょう、どんなことがありますか」
という問いかけだったにも関わらず、その議論は、
・モータースポーツの抱える問題点・モータースポーツ文化啓蒙
・モータースポーツ文化の発展
という方向に行きがちだということでした。
それだけ、皆さん、モータースポーツを取り巻く社会的環境に一家言あるのですね。
どのようにしたらモータースポーツが普及し発展するのかの啓蒙の前に、すでにあるものとして、どんなことがモータースポーツ文化と言えるのか、具体的な事例を挙げた上で整理するのがいいのではないかと考え、「モータースポーツ文化ってなに?」という問いかけをしました。
引き続き、皆さんの意見をお待ちしております。
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