G-FP2DF1P69Y ULSTER GRAND PRIXアルスターグランプリを観てきた~公道レースとクローズドサーキットのロードレース: 小林ゆきBIKE.blog

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2009.08.16

ULSTER GRAND PRIXアルスターグランプリを観てきた~公道レースとクローズドサーキットのロードレース

アルスターグランプリに行ってきた

8月12日から16日までフェリーでマン島からベルファストに渡り、バリメナというところに滞在しながらULSTER GRAND PRIXに行ってきました。
日本語表記で、ULSTERは「アルスター」とか「ウルスター」とか「オルスター」に聞こえなくもないですが、ここでは以後「アルスターグランプリ」ないし「アルスターGP」と表記します。

アルスターグランプリ基礎知識

アルスターグランプリは、アイルランドで1922年に始まったロードレースで、場所やコース長を変えながら、現在は北アイルランドのベルファスト国際空港の近くのDUNDROD ダンドロッドの約7.4マイル(11.84km)の公道コースで行なわれています。

平均時速は133マイル(212.8km)を超え、平均時速ではクローズドサーキット(レース専用サーキットも含め)世界最速のレースです。
マン島TTレースは2007年に平均時速130マイルを記録して、世界最速の座を樹立したのですが、アルスターグランプリは2008年は雨でキャンセルになって今年、再び世界最速のレースを奪還しました。

世界最速のレース

日本人にとってレースの「平均時速」は馴染みがほとんどなく、レースの速さは普通、「ラップタイム」(一周の所要時間)で表します よね。例えば、鈴鹿サーキット一周2分8秒とか、筑波サーキット1分00秒とか、そんな感じに。

なぜ、公道ロードレースが「平均時速」で速さを表すのかずっと考えていたのですが、やっと解けました。
公道レースはときどきコースが変わって距離が変更されたりするし、コースによってコンディションやコーナーのタイプがそれぞれ異なりますが、それらを別として世界共通の指針となるのが「平均時速」なのだということです。

アルスターグランプリはマン島TTと同じく、1970年代に世界グランプリがクローズドサーキット化されるのに伴い、世界GPシリーズからは外れ、現在は国際格式として行なわれています。

世界の公道レースの現況

公道レースはマン島TTレースくらいしか日本で知られていませんが、北アイルランドとアイルランドでは14か所ほどで行なわれていますし、イギリス(ブリテン島)ではスカボロー、他に北欧や東欧、ニュージーランド、オーストラリア、ブラジルなどでも開催されています。

アイルランド島は政治的には1949年にイギリス連邦としての北アイルランドと、EU加盟国かつユーロ使用国のアイルランドに分断されていますが、社会的には現在、国境の入出国管理所はないし、地元の人に聞くと、アイルランド島全体でひとつの国のような、別に違いは感じないという程度のことなんだそうです。

というわけで、アイルランド島とマン島の公道レースをひっくるめて、公道レースシリーズになっていたりもします。

それから、レースを統括する団体は、ACU(オートサイクルユニオン)がブリテン島とマン島、アイルランド島はMCUIC(モーターサイクルユニオンアルスターセンター)が統括しています。


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公道レースに対するわたしの考え

こうして公道レースのことを紹介していると、わたしが公道レースが大好きとか、公道レースに出ることを皆さんにおすすめしているとか、公道レース推進派とかいう風に思う方もおられるようですがそういうことではないんですよね。
今まで、そういうことはひと言も雑誌にも、ブログにも、インターネットのコラムにも、新聞や週刊誌へのコメントでも言っていないと思うんですが。

わたしの興味は「モータースポーツ文化」とか「モーターサイクリング文化」(オートバイの趣味の活動全般のこと。ツーリングやカスタムやレストア、メンテナンスなどなど全ての活動)にあって、「世の中にはいろいろな種類のモータースポーツやモーターサイクリングがあるのだなあ」という部分です。

そういうことを、一歩引いて、でもできるだけ全体を眺めて「文化」を把握したいと思っています。

日本のモータースポーツ文化やモーターサイクリング文化は極めて狭く、種類が少なく、ひいては楽しみ方の幅はまだまだ広げられるのではないかと感じます。

もちろん、日本のモータースポーツ文化、モーターサイクリング文化にもいいところはたくさんあって、例えばモータースポーツ文化で言えば、世界的に素晴らしくクォリティの高いサーキットが各所に点在し、オートバイそのものは非常に安く手に入るし、保険も安い。レースのライセンスやエントリー費は高いけど、その分、素晴らしいレースオフィシャルさんがレースを見守ってくれ、救急医療のシステムも(他諸国に比べれば)素晴らしいし安い。

その国、その地域に合ったバイクの楽しみ方やイベントのあり方というのがあって、いいところは見習えばいいし、ダメなところは反面教師として適切にリスク評価リスク管理を行なえばいい。

マン島TTレースはとにかく世界的に有名で、マスコミの格好のバッシングの餌食になりがちだけど、すぐ隣でもっともっと日常的な光景として行なわれているアイルランド島での公道レース、ノースウエスト200とDUNDROD150、アルスターグランプリ、あるいはマン島のTTコース以外で行なわれている公道レース、サザン100やジャービーロードレースはもっともっと緩やかに運営されていて、まあなんというか、ただただびっくりするばかり。

公道レースとタイムトライアルレース、クローズドサーキットのロードレース

公道レースの現場でレースしている人たち、レースを運営している人たち、観客の皆さんはそんなことはまるで意識にないようですが、「クローズドサーキットでのロードレース」と「タイムトライアルの公道レース(マン島TTレース)」、「マススタート(一斉スタート)の公道レース」とでは明らかに別のスポーツと考えるべきでしょう。

それは、例えば、スタジアム/アリーナ(競技場)で行なわれる100mスプリントや10km、20km陸上競技、公道を使って行なわれるマラソン、公道の中でも未舗装路や登山道で行なわれるクロスカントリーの違いのような。
同じ「走る」という行為でも、競技場の20km競争と、公道でのハーフマラソンが、競技の方法、ジャッジの方法、競技者のマインドが異なるように、オートバイの「ロードレース」とひと言で言っても、クローズドサーキット、公道レースのタイムトライアル、公道レースのマススタート方式のレースとでは、繰り返しますが、別の種類のスポーツです。

公道ロードレースとクローズドサーキットロードレースの違いについて、以下に簡略にまとめますと。

【ライダー】

公道

そこいらじゅうに、生活のためのインフラが物質として存在する(電柱とか、建物とか、歩道の段差とか、門柱とか、植木とか)ので、リスクの想定内で走ることが求められる

クローズド

基本的に転倒した先のリスクはあらかじめ排除されていることを前提に、限界に挑戦できる。しかし、たとえストレートであってもそこで他のライダーとぶつかったり、エンジンロックして、ストレートのコンクリートウォールにぶつかるだとか、そういう「想定外」の事故と結果は完全には排除しきれない。

【レース運営】

公道

観戦者のリスク管理が最大の課題。マーシャルは観戦者の安全管理も行なう。
膨大なマーシャルの数を必要とし、その多くは無償ボランティアに頼る。
レース中、コースオフィシャルがジャッジすることはほとんどない。(ピットレーンを除く)

クローズド

コースオフィシャルはレースのジャッジも時折行なう。(黄旗無視とか)
観客の管理はボランティアのオフィシャル/マーシャルではなく、警備員を雇って行なうことが多い。

【観客】

公道

身の安全を自分自身で行なうことが求められる。

クローズド

レース中の事故がふりかかってくることはほとんどない。観客の安全管理はオフィシャル/マーシャルではなく、警備員が行なうことが多い。

もっともっと違いがあると思うのですけど、今日はこの辺で。


アルスターグランプリの動画

動画は、アルスターグランプリの多分、スーパーバイクレース。
トップ集団が通過し、そのうちの1台がこの先の中速コーナーで転倒。向かい側のマーシャルタワーで黄旗を振っている様子です。
転倒したコーナーの左右は牧場で、言うならば自然のセーフティエリア、グリーンになっています。
ライダーは無事で、歩いて自力で帰っていきました。

この場所では救急車と救急隊が待機し、他にコーナーの先に左右それぞれ4人ずつくらい、合計10人程度のマーシャルが待機しています。

観客は手を伸ばせばライダーに届く位置で観戦することができます。

フラッグタワーがアウト側にあるのが不思議だなあと思ったのですが、この位置じゃないと、多分、ライダーからの視認性が確保できないのだと思います。

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