4メーカー現場トップの新春座談会から
社団法人日本自動車工業会、通称・自工会、またはJAMAが発行している「モーターサイクルインフォメーション いま二輪車の周辺では」という報道用資料の冊子があるのですが、そこで恒例の4メーカー新春座談会が掲載されていましたので、気になる発言をピックアップしておきます。
出席者は、
カワサキ 執行役員 汎用機カンパニー 営業本部長スズキ 常務役員 国内営業本部 二輪・特機国内営業部長
ホンダ 常務取締役 二輪事業本部長
ヤマハ 取締役 常務執行役員 MC事業本部長
(どうやら50音順)
となっております。
各メーカーが二輪車事業をどのようなネーミングの部門で管轄しているかを見比べてみるだけでおもしろいですね。
以下、モーターサイクルインフォメーション 2009年1月号より、イニシャルトークで抜き書きしてみます。
H (DN-01のような)独自の挑戦は、ずっと続けていきたいと思っています。
H (250のスクーターは)結果的に価格が高くなったことで、苦戦を強いられています。
K (Ninja 250Rは)アメリカでも日本でも人気が高くて、急遽、増産する必要に迫られましたが、何しろタイでの生産ですので、そうすぐに対応というわけにはいかず、需要予測の難しさを痛感しました。
Y 私どもも軽二輪のスクーターについては、非常に苦戦しています。これは、排ガス規制対応のための改良だとか、付加価値機能を搭載したために価格が高くなってしまったのが大きな要因です。
Y 50ccの原付一種は、当社では台湾で生産したモデルを販売していますが、排ガス規制の対応で価格が高くなり、大幅に落ち込みました。
S 原付二種のスクーター「アドレスV125」については、前年比でこれほど伸びると思ってはいませんでした。これまでは需要の中心は大都市圏だったんですけれども、2008年の上期は、それ以外の地域の需要が大きく伸びました。とくに、四国、九州、東北、いままで原付二種スクーターのマーケットがほとんどなかった地域の需要が大きくなっています。ガソリンの価格が200円近くなったときに、四輪と原付二種スクーターの使い分けをするかたがずいぶん増えてきたと思います。ガソリン価格は少し落ち着いておりますけれども、今年は原付二種の経済性などを、きちっと宣伝していきたいと思っています。
H 日本の二輪車市場は、いろいろな規制があって、結果的にマーケットが小さくなりましたが、ここ数年業界あげていろいろ取り組んだ結果、規制が緩和される方向にきて、乗りやすい環境になってきたというのは事実です。
S (ABSなど)安全技術が高まっていることも、きちっと社会的にPRしていく努力が必要なのではないかと感じています。
Y (ドラッグスターミーティングというツーリングのイベントの)特徴をみますと、年齢層が徐々に上がってきているのと、女性ユーザーの増加です。、女性の参加者は、昨年に比べて10%ぐらい増加しました。
H 便利な交通手段を、みんなに使ってもらうために何が問題かというと、駐車場の問題もありますし、また免許制度も昔からずっと同じ状態できているわけですから、もっと免許を取りやすい形にすべきではないか。その辺の主張を、少し広げた方がよいのではないかという気がします。
S 原付二種というのは、保険でも税金でもすごく恵まれていますよね。それほどコストをかけずに維持できる。
S 免許がもっと取りやすくなれば、(四輪との)使い分けがもっと進んで、通勤などでの省エネが実現していくんじゃないかと思います。そのためには駐車場の問題があるんですが、もともと駐車場法に入っていなかったのは、オートバイはあまり邪魔にならないという考え方があったんだと思います。ですから、そういう二輪車の特性をうまく利用して、歩道でも車道でも法的に止められる場所を作れば、もっと便利に使えるようになると思います。そうすることで、経済的にもメリットを受ける人は、かなりたくさん出てくるんじゃないかと思っています。
K 日本のユーザーが二輪車をもっと便利に使うには、もう一つ400ccの区切りがありますよね。欧米各国のようになれば、500~650ccクラスのモデルについて海外・国内を共通化することで開発・生産両方の効率化が進み、より適正な価格でユーザーのニーズに応じた多種類の二輪車を提供することが実現できると思います。
H 海外との制度的な共通化ということでいうと、国連を中心に行なわれている基準調和も、非常に重要な動きです。日本も含めて、環境規制みたいな数値を世界的に統一していこうという動きがあります。~国ごとに基準値が異なると、その国に合った製品の仕様を変更しなければならないので、きわめて生産効率が悪いといえます。できるだけ基準値を合わせていくことで、国連で決めたらそれに従うというようになってくれると、そのことがコストダウンにもつながり、生産効率の改善になります。
K 排ガスなどは、中国で走っても、ヨーロッパ、日本で走っても、人や環境に与える影響は同じなんですから、国ごとに決めるのではなくて、ハーモナイゼーションといいますか、基準を世界的に統一するほうが、はるかに合理的なように思います。
H ことに、日本独特なのは騒音の基準値です。国によって基準値が異なるために、現在、国産車と輸入車とで、いわば「ダブルスタンダード」の状態になっています。このあたりも、今後、国際的な基準統一という方向で推移することに期待したいと思っています。
K 買い替えようと思っても、代替する製品が国内投入されていないのでなかなか買い替えができないというような声もたくさん聞いています。つまり、それだけの潜在的な需要というか、リピーター候補は十分あるんだと思いますね。
気になる発言はこんな感じ。
まとめますと、
日本の二輪車需要の落ち込みは、
(1)駐車場問題が解決していない(2)免許制度、排気量区分が旧態依然だ
(3)しかし、今の悲惨な状況の元凶は、日本の排ガス、騒音規制によるガラパゴス化(池田センセー風味)にある
ということではないでしょうか。
対談からは、4メーカーさんたちのガラパゴス化規制への静かな怒りがみえてきました。
メーカー所在地を西から順に並べると、
K SY H
となりますが、座談会を読んでみますと、西高東低な感じがします。
ドメスティック市場掘り起こしのためのマーケティングは、東京の環八の内側ではなく、次のような条件の地方都市で行なうのがいいのではないかと思います。
・人口15万人以下
・公立高校はあるが私立高校や大学はない(高校がない市は除く)
・ユニーはあるがイオンはない(大・中規模ショッピングモールがある市は除く)
・もちろんデパートはない
・東京靴流通センターがある
・鉄道は通っていないか、あってもピーク時に2本/1時間以下
・駅があったとしても、駅前商店街がないか、あってもシャッター通りである
・病院はあるが産科はない
・一部上場企業の下請け会社の工場がある、または二部上場企業の工場がある
・一応、農業も産業基盤として存在する
・路線バスがないか、あってもピーク時に3本/1時間以下
・軽自動車率が高い
・冬に雪が積もらない
・以上の条件を満たす東京・神奈川以外
・以上の条件を満たす政令指定都市から50km以上離れている地域
いかがでしょうか。
このような地方都市こそ、バイク需要がまだ潜在していると思うのですが。
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