グーグルストリートビューを利用した初のバイク盗難?かもしれない事例
もて耐顛末期はちょっと中断しまして、気になるニュースがあったので検証してみることにした。
先日、首都圏近郊の新聞販売店で配達用のバイク(ヤマハメイト?と思われる)がごっそり10台も盗まれたという事件。「カブ型」ビジネスバイクは中国や東南アジアで人気があるということで、プロの犯行が以前から散見されていたが、今回はもしかしたら巷で物議を醸しているグーグルストリートビューを使ってバイク盗難の犯行に及んだかもしれない可能性を考えてみた。
もちろん、今回のエントリはグーグルストリートビューが使われた、という断定ではない。あくまで「可能性」の示唆である。
いくつかの報道を読んでみると、バイク盗難の犯行は、
・新聞配達用のバイク10台が盗難された・10台のバイクはワイヤでつながれていた
・店が無人になる午後10時30分ごろ以降に盗難された
・発見は午前1時ごろ
ここから考察するに、犯行は
・新聞配達用バイクを狙ったもの・計画的である
・10台一気に盗むということは、トラックを使った犯行、かつ複数人による犯行
・海外流通が目的?
・組織的プロの犯行?
ではないかと考察される。
ふた昔前のステレオタイプな尾崎ソング中学生の非行や逸脱によるものではないことは明らかである。
さて。
今回の犯行にグーグルストリートビューが下見に使われた可能性はないのだろうか。
もし使うとすれば、どんなことがストリートビューが犯行の手助けになってしまったのだろうか。以下に検証してみる。
【写真1・現場付近はくまなくストリートビューに網羅されている】
新聞配達バイク10台が盗難にあった現場付近は、国道や大通りから住宅街の細い路地まで、くまなくストリートビューが商店やビル、集合住宅から個人住宅であろうと写真を公開しているのが、ストリートビュー表示可能域の青線でわかる。
【写真2・新聞配達用バイクが並んでいることがストビューではっきりわかる】
現場となった新聞販売所。県道沿いに建てられていることがわかる。道路拡張前なのか、新聞販売所の前はガードレールが不自然に置かれている。当該地域市区町村では、道路拡張前にこのような仕切りを設けることはよくある。
クルマの出入りのため、建物向かって右側はガードレールが途切れている。したがって、ここにトラックを留め置くことは簡単だ。
また、路側帯があり、中央分離帯部分にはゼブラゾーンが設けてあることがストビューの写真から判別できるため、2トントラック程度なら路上駐車が物理的に可能なことが事前に判別できてしまう。
【写真3・駐車されているバイクの台数、どこの新聞社の販売所なのか判別可能】
ストリートビューをズームインしてみると、どこの新聞社の販売所なのか、ロゴから判別が可能だ。それ自体は宣伝になっていいのかもしれないし、そもそも看板は宣伝のために付いている。
ただ、今回の議論からは逸れるが、個人宅の表札は、宣伝のためではなく郵便や宅配などの利便性のために付けるものであり、プライバシー性が失われるものではないとわたしは考えている。
停めてあるバイクの台数も10台ほどだと数えることができる。
車種はカブ型ビジネスタイプだと判別が可能。
カブなのかメイトなのかバーディなのかは少々判りづらいが、このあたりの地域では、A社はカブ、B社はヤマハ系で2ストメイトから4ストメイトに移行中、C社はヤマハのギアを使っていることが多いので、土地勘があれば車種を指定して狙うことも可能だ。
【写真4・ターゲット物件の前の道路の雰囲気が判別可能】
盗難ターゲット物件の前の道は広いのか狭いのか、クルマ通り・人通りが多いのか少ないのか。クルクルと東西南北に回して写真を見ることができるストリートビューでは、そのような情報を得ることができる。
今回バイク盗難に遭ったターゲット物件の前の道のストビューを右にパーンして見ると…。
・片側1車線、上下線で2車線。
・路側帯があってちょっとした路上駐車が物理的に可能。反対車線の路側帯側も十分駐車が可能。
・すぐ先は左カーブで見通しがやや悪くなる(逃走犯には好都合)。
・すぐ先は右折車のために車線が広くなっている。つまり、直進でも右折でも逃走可能。
・Nシステムは見当たらない。ナンバーを読み取られる心配がない。
実に、これだけの情報がストリートビューから判別できてしまう。
【写真5・直進でも右折でも逃走可能】
ターゲット物件、今度は左側にストビューをパーンしてみると…。
・建物左側も、ガードレールの切れ目があるので路上駐車しやすい。
・直進レーンと右折レーンがあり、交通量の多い右折経路があることがわかる。
・Nシステムは見当たらない。
・周囲は民家が密集はしていない。
犯行は深夜に行われた可能性が高いが、近所の人は誰も犯行に気づかなかったのだろうか?
以下の写真を見ると理由がわかる。
【写真6・向かい側は中規模の畑】
盗難ターゲット物件の向かい側は、中規模の畑となっている。昼間は写真のように老人が畑の手入れをしている模様。
路側帯は十分の広さがあり、側溝にはフタがしてあるので、4トントラックくらいまでなら余裕で駐車できそうな場所だ。
しかも、夜はひと気がなくなることは容易に予測が付く。
以上が、今回、10台ごっそり盗難に遭った新聞販売店をストリートビューでプロファイルして考察してみたものである。
以下はオマケ。
【写真7・ナンバーや車種、色がはっきり判るストビュー】
今回のターゲット物件にほど近い住宅街のヒトコマ。わたしはクルマに疎いので、このクルマがどこのメーカーでなんの車種かはわからないけど、自宅前駐車場にロープやシャッター無しで停めてあり、ナンバーそのものが識別できてしまう、という例。これがオートバイだったとしたら恐ろしい。
グーグルはナンバーや表札の文字に対してボカシ処理で対処しているというが、このクルマの場合、なぜか段差をなくすプレートがボカシ処理されてしまっている。
【写真8・数字はおろか文字までくっきり】
さすがにヤバいのでこの写真は加工したけれども、上記のストビューを角度を変えたら、4桁の数字だけでなく、地域名、ひらがなまでわりとハッキリ見えてしまっている例。
さて、ここまで書いてきてわたしのグーグルストリートビューに対する意見は、
・何らかの線引きは必要
というものである。
他方で、いったん公開されてしまったインターネット上の情報はなかなか消し去りにくい。
風化するということもあるかもしれないが、自宅や自宅財産、自宅や勤務先、通学先での安全確保をしたい皆様がたにおかれましては、気持ち悪いとかそういう感情面の問題ではなく、起こりうる可能性のある問題に対して可能な限りリスクマネジメントを行い自衛しておいた方がいいのではないか、ということをお知らせしておきたい。
グーグルストリートビューの問題点に関しては、以下のエントリー、リンクも参考にされたし。
自宅でバイクを保管している人の視点から見たグーグルストリートビューの問題点の整理
また、高木浩光氏のブログ、高木浩光@自宅の日記のグーグルストリートビュー関連の記事も参考にされたし。
2008年09月15日当事者になって認識する「ストリートビュー」問題
2008年09月14日 「ストリートビュー」に対する意識調査アンケートの結果
2008年09月11日 グーグルが女子高に侵入して撮影した事例
2008年09月06日 不適切画像の削除作業は小鳥並の知能で行われる
2008年09月05日 「無断撮影公表に波紋」朝日新聞9月2日朝刊の記事
2008年08月31日 グーグル株式会社の3つの虚偽(まとめ)
児童生徒の視点で考え出されたストリートビュー等の用途とは
2008年08月30日 ストリートビューに写った自動車ナンバープレートは機械判読され得るレベル
2008年08月29日 グーグル社がゲートのある敷地内に進入して撮影した事例 その2
2008年08月24日 グーグル株式会社の広報姿勢が嘘八百なことを示す事例
2008年08月22日 「LOCATION VIEW」のプライバシーへの配慮状況
Googleストカーの撮影風景を再現しよう
2008年08月15日 「この先自動車通り抜けできません」を通り抜けていたGoogleストカー
Googleストカーの目線と常人の目線を比較する
2008年08月12日 日本の家屋の塀はグーグル社に適応して70センチ伸びるのか
2008年08月10日 通信プラットフォーム研究会 傍聴録 (Google社の発言あり)
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