「大丈夫」という返答はだめなんだな
・チベットが
・中国が
・聖火リレーが
・北京五輪狙いの
・ウイグルが
・グルジアで
とまあ、狙いすましたように、このグローバル化・メディア化された社会において世界情勢が喧しいわけですが、このご時世にチベットに旅に出ようとしている友人がいる。
その友人は旅のエキスパートだと思うけど、「ウイグル経由でチベットへ11日に旅立つ」と連絡が来たので、さすがにそれはどうなのと思って、延期した方がいいのではないか? と連絡してみた。
外務省の海外安全ホームページの危険情報によれば、中国は以下のような勧告が出ている。
●チベット自治区 :「渡航の延期をお勧めします。」(継続)●新疆ウイグル自治区
:「渡航の是非を検討してください。」(当面の間、不要不急の渡航は控えてください。)(引き上げ)
ただし強制力はない。
友人は案の定、
「自分は大丈夫」
という返事。
いわく、
・自分はコロンビアや中東も含めてこれまで旅の経験が豊富、だが危険には近寄らない。
・本当に危ないのはウイグルなので、そこを通過さえできれば、チベットそのものは大丈夫。
・本当に危なかったら旅はすぐ中止する。
・そもそも外務省の危険情報はあてにならない。
・オリンピック後だとチベットは冬になってしまう。
・オリンピックをやっているのでむしろチベットの観光客は少なくて旅がしやすい。
だから「大丈夫」なのだという。
たしかに中国は広いので、ウイグルもいろんなウイグルがあるだろうし、チベットもいろいろなチベットがあるのだとは思う。
しかし、わたしは、そんな返答では説得力がない、と伝えた。
伝えた話を整理すると、
・今までの経験は経験で大事なことだけど、2008年の世界情勢はたった1年前に比べても大幅に変わってきたことを日本にいても肌で感じる。だから、たとえ半年前が大丈夫でも、今現状まるで危険度が高まっているのは予想されていることである。これは、「安全/危険」の二分論ではなく、世界情勢を鑑みてのことである。
・たとえ経験豊富でも、「チベットの今」「中国の今」に向かうあなたの旅は常に新しい。だからこそ旅にまた出るのだけど、その「あなたにとって新たな旅」は常に緊張感を持ってしかるべきである。
・緊張感があるかないかは、結局、まわりの友人・家族は「あなたの言葉」でしか判断のしようがない。わたしはあなたが旅のエキスパートだということを知っているけれど、それでも、「自分は大丈夫」という言葉に説得力を感じない。
ここで彼はこう言った。
「なんかあったら死ぬだけだから」
・自分が死ねば周りに迷惑をかけないと思ったら大間違い。少なくとも肉親にパスポートを取っておいてもらうような配慮はないのだろうか。自分のボディ(あえてカタカナで書くけど)の搬送費用や肉親の渡航費は確保してあるのだろうか。それだけではない、「なんかあった」は「行方不明」ということもありうるし、そっちのほうが残された人のもやもやは一生残るだろうから、それは困る。行く先くらいはマメに連絡して。これは“旅”の醍醐味とは真反対のやり方だけど、世界情勢が不安な中で、あえて危険地帯に行くのだから、それくらいの義務は負って欲しい。
・一人旅だから他人は関係ないわけじゃない。この平和な日本(大雑把に言えば)に生まれて、育って、生きてきて、働くことができて、そういう環境にあるからこそ旅ができるわけで。大人だからという言葉は嫌いだけど、これまで長いこと旅ができてきたことは、知らず知らずのうちに周りの人たちの理解や協力があってこそ。だから、これからも旅を続けるには、そういう人たちの理解や協力がこれからも必要で、友人や家族が安心して旅に送り出せる体制を自分で作るのが大事なことなんじゃないか。
ここまで話していて気づいたのだけど、バイク乗りも同じことだなあ、旅人に向かって説教じみたこと言ってるけど、結局、このことは自分に対する説教というか戒めなのだなあと思った。
バイクに乗っていると、常に「バイクは危ない」と言われる。安全に扱えば安全に走れることも知っているし、バイクが危険なことも知っている。でも、「バイクは危ない」と問いかける人に、「いや大丈夫です」とだけ返答しても、「コイツ、わかってるんかいな」と思われてしまう。
昔はいちいち「そんなのわかってるよ」と感じてムっとしたりもしてたけど(親とかに向かって)、いまではなるべくニッコリ「ご心配いただきありがとうございます。気をつけて乗ります」と言えるようになりたいと思っている。
・だから、「大丈夫」って今言ってちゃいけないの。「危険に近づかないように慎重になります、努力します」って言わなきゃ。
旅人とのこの会話は、北京でアメリカ人旅行者が殺傷されたあとのことで、この会話のあと、ウイグルのテロが起きた。
危険にはいかに立ち向かうかの方が重要だと思っているし、どこにいつ行こうとfreedomこそが旅の醍醐味だと思うけど、さすがにわざわざこの時期、その場所に「旅」をしに行くのはやっぱりいかがなものかと思う。
今日、成田の出国審査で引っかかったらいいのになあ。
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