G-FP2DF1P69Y CPR(心肺蘇生法)の人工呼吸問題: 小林ゆきBIKE.blog

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2008.02.05

CPR(心肺蘇生法)の人工呼吸問題

LSO主催の応急手当講習に行ってきたのですが、そこで気になる話題があったのでちょっと調べてみた。

コトの発端は、

蘇生措置:人工呼吸は不要、心臓マッサージだけで効果十分 回復、併用しても大差なく

と題する毎日新聞2007年9月27日の記事。これは新聞一面に掲載されたばかりでなく、インターネットでも広く伝えられた。
わたしも実はすっかり鵜呑みにしていたが、応急救護、救急救命の現場にあって、問題は人工呼吸の要・不要という単純なものではないらしい。

このニュースは、実は毎日新聞がトップニュースと伝えた半年前にはすでに報道されていた。

心臓発作患者には人工呼吸をしないほうがよい

ヤフーヘルスケア経由 2007年3月16日/HealthDayNews

これらの記事は、イギリスの医学誌「Lancet」の3月17日号に掲載された、日本救急医学会関東地方会の研究班(班長、長尾建・駿河台日本大病院救命救急センター長)の研究論文に基づく。

心肺蘇生法のうち、人工呼吸に懐疑的であるとした研究は長尾氏らの研究の前からあったようで、東京法令出版発行の月刊消防に掲載された元原稿で以下のようなコラムにも詳しかった。

060604心マのみCPR再考
070501消える人工呼吸

筆者玉川氏が指摘しているように、マウス・トゥ・マウスの人工呼吸は、救助者の心理的ハードルを高くしてしまう、というデメリットがある。
その結果、人工呼吸どころか、心臓マッサージすら行われず、救急隊が到着するまで何もしない、見守るだけ、という状況が生まれやすくなってしまう、という弊害があるようだ。

そういえば、高校生のとき、保健体育の時間に同性同士で直接マウス・トゥ・マウスの訓練をさせられたことがあったなあ。当時は感染症の危険など言われていなかったのだ。

ところで、CPR時に人工呼吸+心臓マッサージの場合と、心臓マッサージだけの場合では、心臓マッサージのほうが救命率が高い、という長尾論文だが、いくつかの条件を前提にした場合の結果である。

1、調査期間が2002年から2003年の間であった。当時は日本ではAED(除細動器)の一般使用が禁止されていたため、CPRは人工呼吸2回+心臓マッサージ15回の方法が前提となっていた。

2、被調査者は、そばに人がいた状態で突然心臓が止まって倒れた人を対象としている。したがって、対象者は心臓疾患患者に限られた。

3、人工呼吸+心臓マッサージの場合の30日後の回復率は4%、心臓マッサージだけだと6%、両方なしの場合2%、という結果が出ている。

1については、AED禁止の時代の調査であった。
2については、調査対象者が心疾患に限られていたが、日本ではお風呂での溺れや餅などでの窒息事故が非常に多く、呼吸困難患者に対する母集団は改めて調査されるべき。
3については、AED解禁となった現在、AED併用の場合の調査結果も待ちたい。AEDを使用した場合、70%以上の回復率とも言われているからだ。


ところで、人工呼吸が科学的・医学的に必要か否かは、脳に酸素が送られるかどうか、だが、前述のように、医学的にどうかというより、心理的・社会的にCPRを躊躇してしまうという場合もある。
日本人の場合、群衆になると誰かがやるだろうという空気が生まれ、結果、人がいても何もしない野次馬だけ、というケースが多々ある。

また、CPR習得の問題として、人工呼吸と心臓マッサージの両方を習得するより、心臓マッサージだけをキチンと覚えるほうが簡単だ、ということもある。

これは、教習所で習う「急制動」とBMWがかつて提唱していた「フロントブレーキのみの急制動」の違いに似ている。

教習所で習う急制動は、

・フロントブレーキは4本がけ
・クラッチはできるだけエンジンブレーキを併用する
・フロントブレーキもリアブレーキもロックさせてはならない

というやり方。
対して、BMWが過去提唱していた急制動は、

・リアブレーキは(何も考えず)ロックさせてしまう
・クラッチも(何も考えずに)握ってしまう
・フロントブレーキはその分、ロックぎりぎりのところまでかける

というやり方だった。前後ブレーキをロックさせないようにするために躊躇して制動距離が伸びることより、緊急事態のときはとにかく短く停まることを優先させる、という考え方だ。

話は戻りますが。

家庭内の不慮の事故のうち、ただちに人工呼吸が必要な溺死と窒息を合わせると、年間約8000人程度の死者数である。(ソース:全国安全会議
これは、交通事故死者数よりも多い。

ただちに心臓マッサージを開始しなければならない心疾患の死者数は年間17万人。

動かしてはいけない場合が多い脳疾患の死者数は13万人。

不慮の事故死者数(交通事故含む)は3万8000人。

(どちらも厚生労働省人口動態統計、平成18年)

というわけなので、

できる人

できるだけ早く

行うのが救命救急、応急救護、応急手当なので、一般人にとっては必要あるとかないとか言っている場合じゃないんだとわたしは思います。


++++++日乗++++++

今日は渋谷で6時。

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