パリダカ治安悪化で中止に
通称パリダカことダカールラリーがアフリカの治安悪化で全面中止になったそうだ。というニュースを見て気になってたことを簡単にクリップ。
(グーグルの“ダカールラリー中止”に関するニュース検索)
1979年から始まったパリ・ダカールラリーは現在では冒険ラリーの最高峰だけど、なぜパリが出発点で、なぜアフリカを通るのか。
同じフランスを舞台とする(ダカールラリーはもはやフランスが舞台ではないが)歴史学者ヴィガレロが書いた論文には、自転車レースのツール・ド・フランスについて「国民国家」の視点で分析されている。
Vigarello,Georges, 1992 “Le Tour de France” 「伝統」「さまざまなフランス Les France」第三部第二巻『記憶の場』 Editions Gallimard (=ジョルジュ・ヴィガレロ著、杉本淑彦訳、2000年「ツール・ド・フランス」『思想』岩波書店、2003年5月号、pp.86-118.)
ツール・ド・フランスで使われる周回コースは、フランスの旧帝国地域、国境、国土をイメージさせるものだ、という。
マン島TTレースで使われるマウンテンコースも、マン島の主な町を通るルートである。ダグラス(首都)~セントジョーンズ(議会=ティンワルドが行われるまち)~カークマイケル(教会のまち)~ラムジー(マン島第二の港だったまち)を通る。黎明期には、マン島第二のまちオンカンを通らずにわざわざガバナーズブリッジ(マン島政府のある場所)を通るルートに変更されてまでいる。
バイクのTTレースの前に行われたカーTTのためのトライアル(試走)では、さらにキャッスルタウン~ポートエリン~ピールといったマン島の主なまちを通る、マン島ほぼ一周の壮大なルートだった。
これはつまり、「マン島」とはどんなところか対外的にアピールするためのルート選定だったのではないか、と思われる。
というわけなので、パリダカのルートも旧フランス植民地をイメージさせるルートなのだ、とも解釈できるのだが。
フランス側の主催者がルート選定して旧植民地の国々にレース開催を認めさせ、無事開催できてきたのは、第一次世界大戦の戦勝国であるフランスと旧植民地との間に依然として存続関係があったのではないか、結果的には和平が保たれていたのではないか、との見方もできるし、今回の事件はついに第一次世界大戦後の従属関係が崩れてアフリカの独立元年となるのではないか、とも思ったけど、今回の中止の原因は
「国際テロ組織アルカイダと関係のある「スラミック・マグレブ」という武装集団がモーリタニアで起こしたテロ事件」
だというわけで、国家間の問題ではなさそう。しかし、事件がギャングとか海賊・山賊のように強盗の類ではなく、思想を持ったテロなのであれば、グローバルな和平に影響を与える問題であり、モータースポーツもとうとうそこまで影響を受けるようになる時代になったのかと思って備忘録的につらつらとクリップした次第。
全然関係ないけど、ちょっと前までわたしのような仕事をしていると、「やっぱあれですか、最終的な目標はパリダカですか」とかなんとか聞かれることが多かった。わたしは目が悪くてコンタクトレンズ使用者なこともあって土系・砂系はほとんどやらないのだけど、バイク業界の最終的な目標・憧れとは一般的にパリダカなのか~と不思議に思っていた。たしかに、バブルごろからバイク業界でパリダカ、バハ1000をはじめとする海外ラリーに挑戦することが流行りではあった。それは、二輪車のエンデューロやラリーのライセンス制度が曖昧だ、という制度的なゆるさもあったように思う。ロードレースで、例えばデイトナ200を目指します、マン島TTを目指しますと言っても、基本的にMFJ国際ライセンスがないと無理だし。かつてMFJ国内ライセンスでもFIMライセンスが取れたけど、実力が国際ライセンス級でないとなあ。とか。
とはいえ、パリダカに興味がないわけではナイ。“パリダカ”という現象は見ておきたい。せめて、いつかはセレモニアルスタートだけでもいいから見に行きたいという企みは腹にいつも仕舞ってある。出来れば、パリのスタートがいいのだけれど。“パリダカ”だし。
++++++日乗++++++
トースターで餅を焼いたところターンテーブルに餅が絡みつくという惨事に(涙)。
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