三宅島、バイクのイベントでなければならなかったいくつかの理由
保育園から小学校、中学校、高校まで、そして車椅子のお年寄りも、みんなが笑顔をくれた、チャレンジ三宅島’07モーターサイクルフェスティバル。あんなに大勢のおとなが感動して嬉し泣きしているのをわたしは見たことがありません。
さて、三宅島復興を祈念した今回のイベントですが、オートバイのイベントでなければならなかったのか。そもそもイベントでなければならなかったのか。
実際に関わってみて、「バイクの」「イベント」でなければならない理由が見えてきました。
●島一周できるのは自動車か二輪車だけ
三宅島は現在も火山活動が続いており、火山性ガスの噴出が特徴です。島の4割以上が立ち入り禁止区域で、とくに島一周道路のうち、阿古高濃度地区と坪田高濃度地区は自動車かオートバイの通過と、許可された住民が昼間数時間のみ滞在が許可されています。徒歩やジョギング、マラソン、自転車の通常の通過は認められていません。
このことから、マラソンやジョギング、ハイキング、徒歩、高濃度地区でのバードウォッチング、釣りなどを行うことができません。
つまり、島一周をするには自動車かバイクでしかできないのです。
●島へ簡単に移送できるのはオートバイだけ
三宅島には、他の伊豆七島や小笠原諸島と同じく、海域や地形の都合上、大型のカーフェリーを就航させることができません。このため、250㏄以下のオートバイは通常、予約すれば定期旅客船のコンテナないし甲板での航送、自動車や250㏄以上のオートバイは別途、貨物船で運ぶしかありません。
今回のイベントはコンテナでオートバイ輸送専用の特別便貨物船で運びました。現実的に、自動車を大量に往復させるのは難しく、乗り物のイベントをやるならオートバイだけが実現可能だったのです。
●復興のシンボルは島一周
三宅島は、まん丸の島のカタチも特徴的です。もともとは、海岸線には集落が点在する島でした。しかし、2000年の噴火で阿古と坪田・三池の高濃度地区には未だ帰れない多くの住民がいらっしゃいます。家はあるのに帰れない島民。土地はあるのに、たった数年で家が朽ちてしまった島民。そこにはたしかに営みがあって築き上げてきた生活がありました。
火山活動はいつかは止むかもしれない。でも続いていくかもしれない。そこいらへんが、地震災害や台風災害とはやや違う面です。でも、三宅のひとびとは、20年に一回と言われる火山と共生してここまで来たたくましさがあります。
現在も火山活動が続いているなか、入れる場所でだけ行うイベントでは、三宅の全部を知らしめることにはならない。そういう意味で、島一周できるモーターサイクルフェスティバルは多いに意義があったといえます。
●観光立地のためのイベント開催
三宅島の主な産業は、2000年の噴火、そして全島避難から壊滅状態となりました。とくに、大きな基幹産業だった天草など海草採取の大きな漁場は現在も高濃度地区にあるため、以前のように採れないそうです。ちなみに、かんてんぱぱでおなじみ、伊那の寒天の原料になっているそうです。モタードをやっている伊那サーキットのある長野のあそこですよー。
畜産は全滅しました。農業の明日葉栽培は徐々に復活しているそうですが、それでもまだまだ以前の量には届きません。
もう一つ大きな産業が観光業です。三宅島の観光は主に、釣り・ダイビング・バードウォッチング。あとは火山関連の学者さん。しかし、残念ながらマスは限られてしまいます。シーズンもあります。
バイクなら、東京から南に180kmの温暖な気候の三宅島では通年楽しむことができ、新たな需要を掘り起こせます。
一次産業や生産物ですと、本土に渡って消費者に届けばそれでお終い。でも、バイクなら、三宅島に行って美味しいものを食べて、日本一安全な道路を楽しく走って、三宅島の皆さんの温かさに触れたことを、日本中走り回っているうちに伝えて広めていける可能性を持ちます。
つまり、ライダーは〈媒体〉〈ミディアム=ディバイス〉となるわけです。
イベントをやる意義とは、〈知らしめること〉、つまり三宅島の名を広報することに第一義があります。ですから、もちろん三宅島復興のために住民の皆さんの実際の生活を復興させること、インフラを整えることは優先されるべきことですが、イベントを行うことによって世論を三宅に向けることが可能になってくるのです。
そのための媒体がオートバイというコンテンツであるというのは、結果的に必然だった、とわたしは結論付けました。
来年以降のイベントに向けてさまざまな議論を繰り返して、徐々に三宅島スタイルを一緒に作っていければな、と思います。
++++++日乗++++++
グランドフェスティバルでいただいたアシタバ。夕べはツナマヨネーズ和えと、甘味噌コチュジャン和えに挑戦してみました。
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