後世に伝える文化事業『日本モーターサイクル史』
『日本モーターサイクル史―1945-2007 』を購入した。
厚さ4cm、重さ約3.5kg、総ページ数 1270ページという、とてつもない日本のバイク百科事典である。
定価も本体6000円+税というものだが、日本にこの手のバイブルがないことを思えばお安いものだ。
八重洲出版の日本モーターサイクル史シリーズはこれまでも何冊か発行されている。
古くは、1977年8月号モーターサイクリスト増刊 『国産モーターサイクルのあゆみ PART1 1909~1965』、1977年11月号同増刊『同 PART 2 1966~1977』、1982年10月号同増刊 『同 PART3 1978~82』の3分冊がある。
この3冊の存在を、わたしは雑誌編集者時代から伝説のように聞いていて、クラブマン誌の巻末、MCマーケットのコーナーで高値取引されているのを知っていた。あるとき、ひょんなことからメーカーに勤める知人宅に3冊ともあるのを発見。無理を言って1万円で譲ってもらった貴重な本がこれである。
このあと、通称「黒本」、「銀本」と続き、「金本」が発行される。
わたしが持っているのは1945~1997年を採録した金本である。正直、何度も何度もお世話になり、角はボロボロ。付箋が剣山のように貼ってある。
そして今回発売された、再び「黒本」。今回は八重洲出版50周年事業ということもあり、おそらくページ数に糸目は付けなかったのだろう。1300ページに迫るページ数もさることながら、200ページを越える日本のバイク史に関する読み物もたいへん読みごたえがあって読書の秋を退屈させない。
ところで、こうした歴史を綴る書籍というのは、日本ではあまり数がないように思うが、海外、特にヨーロッパでは盛んに出版されている。
二輪産業全体を俯瞰する百科事典もあれば、各メーカーごとの歴史本もある。レースの歴史本もあれば、ヘルメットやレザージャケットの歴史本まで存在する。
しかし、ヨーロッパにおける二輪文化が文化たらしめている証とも言えるのが、〈人〉に焦点を当てた本も少なくないことである。レーシングライダーのみならず、レーシングドクター、レースマーシャルに関する本もある。
日本のバイク業界に足りなかったものは、“語り継ぐ”ことではなかったか、と、最近、強烈に感じる。もちろん、オートバイは文明の機器として生まれたものだから、性能向上は永遠に課せられる課題なんだけど、そのときそのときを支えてきた〈人〉=経営者も、技術者も、テストライダーも、レーシングライダーも、そしてそれを受け入れた社会だとかユーザーの動向だとか、それを語り継がないことには、未来のバイクは地に足がついたモノにはならないのではないか、と思う。
戦後、政府の保護奨励政策によって本格的に二輪車産業が勃興し、のちにバイクやライダーは〈暴走族〉というシンボランズによってヒール的イメージ化されたが、それでも日本の二輪車産業は世界を牽引していることは間違いない。
戦後の本格的二輪車産業勃興から60年。モータースポーツ史が始まって約50年。当時を知る人は日に日に減っていくし、今を支える現役ライダーとて明日どうなるかわからない、なんて言いたくないんだけれども。早くしなければ。
ライダーに関する本、八重洲さんでもネコさんでもエイさんでも三樹さんでもいい。御社で作りませんか。
++++++日乗++++++
ところで、今回の『日本モーターサイクル史』、英語版出したらけっこうイケるんじゃないかと思いますがどうでしょうか。
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