今の鈴鹿8耐は……と言われる8つの理由
「今の鈴鹿8耐は……」
意訳すると、「あの頃の鈴鹿8耐は良かった、それに比べて今は……」というようなことを言う人がバイクファンのみならず、業界の中でも言う人がけっこういまして。
今年も現場に行ってみて、今まさに鈴鹿8耐に参戦している人たち、暑い中観に来ているファンの人たちからはあまりそういう言説を聞かないのですが、こう何度も何度も毎年毎年、それもここ10数年聞かされ続けると、なんだかなあ。やってみたり(2000年~2003年、わたしはチームとして8耐に参戦していました)、観に行ってみると面白いんだけどなあ。
というわけで、何でかなーって考えてみました。
【今の鈴鹿8耐は……と言われる8つの理由】
1.あの頃は15万人もいたのに今は……
・ここ数年、観客動員数は決勝当日は7万人前後で推移しており、今年は前年度比増。確かに「あの頃」に比べれば半減しているのは確かですが、3日間でのべ20万人も集まっている現状は間違いなく日本一のバイクイベントであり、空前のバイクブームを前提とした「あの頃」に比べてしまうのは酷なのではなでしょうか。
・「あの頃」を支えたバイクブーム世代は、実はベビーブーム世代。「あの頃」を創った世代は団塊世代。大きな人口の塊が二つ存在していたわけです。若年人口があのころに比べて半減していることを考えれば、15万人→7万人は妥当な数字ではないでしょうか。数字上は下がっているけど、分母が半減しているのだから人気が半減したわけではない、と無理矢理こじつけてみたり。
・「あの頃」を語る15万人と、今を語る7万人。両方知ってるコアなファン数万人。コアなファンほど声が大きいので、「盛り下がった」「今はショボイ」の言説ばかりが一人歩きしているのではないか。
2.なんだかんだ言って地上波テレビの力は大きい
・最低でも予選結果、決勝結果、決勝当日深夜または翌日のダイジェスト放送を地上波TVでやるというのは、バイクやロードレース、鈴鹿8耐にまったく興味がない人に対する波及効果がもっとも大きいのではないでしょうか。
・情報量は「あの頃」に比べ、インターネットがあるおかげで倍増、いや10倍、100倍にまで増え、いつでも誰でも8耐情報にアクセス可能になりました。が、なんだかんだ言って、情報垂れ流しの地上波テレビにはかないません。
インターネットは検索+アクセスの必要な能動的なメディアであるのに対し、地上波テレビはザッピングto情報垂れ流しのダイレクトアクセスという受動的なメディアであるからでしょう。そういう意味では、NHKの衛星放送も契約者数が増え、ある意味、受動的なメディアになったと言え、NHKで生中継していたというのは大きな意味があったのではないかと。雑誌も本屋さんへ行って買う、という行為は能動的メディアだと言えましょう。
・で、今現在、鈴鹿8耐のことがテレビで報道されていないわけじゃないのですが、いかんせん、どのメディアがとりあげるかはここ数年、固定化ができていない。どの放送局が8耐に絡んでるのかな、という検索から始めなければいけないわけです。どんなことでも3年以上は続けないと定着しにくいので、放映権は4、5年単位で販売されてはいかがでしょうか。
3.「あの頃」はあんなに道が混んでたのにな~
・「あの頃」は鈴鹿インターに向かうバイパスも無ければ、23号線バイパス、伊勢湾岸道も無かった。高速道路は名古屋で寸断されていた。鈴鹿市内は右折レーンや右折矢印信号が少なかったし、片側2車線化が進んでいたわけでもなかった。市内の道が渋滞して当然だったわけです。鈴鹿市内近郊の道路事情はここ10年で劇的にいい方向に変化しました。
「鈴鹿に行くだけで大変だった」という苦労話が達成感を生んでいたのは、ビリーズブートキャンプに入隊して達成感を味わうのに似てるかもしれない。
●鈴鹿8耐と言えば渋滞しなきゃ雰囲気ない、というファンの人への対策
・本田技研工業さまなどのお力を借りて、操業開始時間を8耐決勝日は朝9時前後に、交代時間は夜7時過ぎにしてもらって渋滞を激しくしてもらう。
・白子駅行き臨時バスは8番ゲートから裏道を行かずに堂々と遊園地正面ゲートからサーキット交差点を通って渋滞に拍車をかけてもらう。とか。ま、冗談ですが。
●鈴鹿8耐と言えばあの渋滞にうんざり、というファンの人への対策
昔ほど混まないのは道路事情が良くなったからですよーっていうお知らせが足らないのではないか。あと、白子駅前駐車場との連携によるパーク&ライドなどの対策が不十分かもしれません。そうはいっても、言うほど不都合を感じない程度の混雑ぶりではありました。
4.そうは言ってもスタンドのお客さんの数、減ったよ?
減ったように見えるのは気のせい。7万人のうち、半分以上はスタンドでじっと観戦してなんかいないんじゃないか。理由として考えられるのは、こんなことが想像されます。
・バイクブーム世代が成長して家族連れで来ることが多くなってきたが、チケットシステムが遊園地も利用できるようになり、スタンドでじっと8時間見るより遊園地での滞在時間が長くなった。
・同じ理由で、プールの滞在時間が長くなった。
・コアなレースファンはパドックパスを購入してスタンドでは観ない。パドックパスの金額自体、とても安くなった。5万円→2万円くらい
・パドックに行かないコアなレースファンは、スタンドで観るより、スタンド外側の木蔭に陣取るパターンも多く見受けられる。
・交通教育センターで行っているMOTO MAXも人気が高まり、滞在時間が長くなってきた。
・昔に比べて魅力的な鈴鹿8耐グッズや鈴鹿サーキットグッズが増えたため、グランドスタンドまでの通りに買い物しに行く観客が増えた。
・スタンドそのものが増設されて、閑散としているように見えてしまう。F1の影響で各コーナーのスタンドが指定席・自由席ともに整備・拡張された影響は大きいかも。
5.GPライダーが来なくなったから人が集まらないんだ!
……という理由であれば、もてぎの日本GPがもっともっと盛り上がってもおかしくありませんが。
「北駐車場は満杯なので南駐車場に行ってください」→「南駐車場は満杯なので北駐車場に行ってください」という、日本GPもてぎピンポンメソッドは、駐車するだけで大変な苦労→だからGP盛り上がってる感を煽る、という結果を生んでおり、同じモビリティランドである鈴鹿も導入してもいいかもしれません。
6.だいたい、日本人ライダーにとっても「バイクの甲子園」じゃなくなってきてるし……
元祖バイクの甲子園たる鈴鹿4耐はもはや、ロードレースの同窓会と化していて高齢化が進んでいますが、そうは言っても有望な若者ライダーたちも頑張っているわけです。
鈴鹿8耐も高齢化が進んでいますが、湯水のようにスポンサーが沸いてきた「あの頃」に比べたら、自力で資金調達して参戦するチームが多い今の方が健全といえば健全にも思えます。調達できるようになった年齢、その結果が高齢化なのかも。そのような草の根チームの情報フォローがまだまだ少ないのは業界として反省すべき点かもしれません。
では、ワークスやセミワークスばかりが上位を独占して……という言説はどうでしょうか。確かに4メーカー足並み揃えて本気でぶつかりあえば、それはそれで面白い。ワークスがいなくても、いわゆるレース屋さんチームたちが全力で闘えばそれだって面白い。要は、レースそのものはどっちに転んだって観てる方としては面白いはずだと思うんです。
問題は、上位陣だけでなく8耐の全体像が見えるような情報がフォローされているのかどうか。その情報フォローを、モビリティランド側がやるのか、MFJがやるのか、各チーム側がやるのか。コアなレースファンがやったっていいと思うし、いろんな形があっていいと思う。実際、やっている人たちはいるわけで。
話が逸れましたが、今年の8耐は「国際色豊か」という試みがなされまして、耐久選手権参戦の外国チームが多数招聘されました。手練のチームで手堅く上位ポイント確保するチームもあれば、すぐには鈴鹿を攻略できないチームもありました。
成功・不成功という二分法で結論を言うのは尚早だと思いますが、わたしは、鈴鹿8耐がゆくゆくは、バイクマーケットが膨らんで有望ライダーが出てくるであろうアジア地区のライダーの夢の舞台になればいいな、と妄想しています。
もちろん、日本人ロードレースチームの夢の舞台であることには変わりなく。
7.スーパーバイク一辺倒のレギュレーションがつまらなくしているのでは?
今年からXフォーミュラなど改造自由クラスがなくなり、基本的にはスーパーバイク、JSBだけが参戦できることになりました。
昨年まで参戦していた、Z1にこだわり続けた朝比奈さんの求心力は確かに高かった!10年近く続けたからこそ定着したと言えるかもしれません。同様のことはBMWチームにも言えるでしょう。
観ている側として、「音が違う」「見るからに形が違う」というファクターは面白味を増やす面もあります。マシン特性によってライン取り、アクセルの開け方が違う、という要素も観ている側からすれば面白いわけですが、走っている側にとっては、危険が増える要素だという声も聞きます。
観客を増やす要素か、安全なレースを目指す要素か。難しい問題です。
8.地元の盛り上がりはどうなのよ?
あいたたたたた。確かに「あの頃」は道の角々に町内会のテントが立ってて、8耐を目指すライダーに地元の人が手を振る、という光景が見られました。ついに鈴鹿にやってきた感が演出されていて、あれは良かったです。
似たような作戦は、WRCの十勝地域でも行われていて、町内会・商工会議所単位で、半ば強制的に沿道での声援を送ることにしているのだとか。でも、それが結果的に目に見えるカタチで地域の活性化として地元の人に捉えられているわけですから、大成功と言えましょう。
成功と言えば、鈴鹿8耐では前夜祭のときにバイクであいたいパレードというのが行われていまして、ここ数年はすっかり定着。集合地点の鈴鹿ハンターは出店なんかもあって盛況だったそうです。パレード自体は450台までとのことで、ちょっと規模が小さいのですが、沿道で見学する地元の人なんかも出てきているそうで、地元に根付いた文化になってきたと言えるでしょう。
欲を言えば、参加台数5000台くらいの馬鹿げた台数にまでしないと、パレードそのものの全国規模の認知度は高まらないだろうな、という点ですが、警察の警備の都合もあるでしょうし、今はとにかく続けていって欲しいな、というところで。
で。鈴鹿8耐は入場料を払って入るクローズドのモータースポーツイベントですから、レースそのものは地上波テレビで垂れ流しでもしない限り、ファン以外への訴求効果はなかなかないわけです。唯一、地域社会に訴求できるものとすれば、「花火」なんですが……。嗚呼。
とはいえ、ヨシムラの優勝は本当に感動的でした。圧勝でした。
大事故がほとんど無かったのも良かった。
完走率がかなり高かったのも良かった。なんせ、完走59台。(通常、50台程度) チェッカーを受けたのは64台。(うち、1台は最終ラップでピットレーンに戻ったため、完走周回数を果たすも完走扱いにならず) リタイヤわずか6台。という結果は素晴しかった。
そんなわけで、8耐に行ったことのない皆さんも、最近はご無沙汰という皆さんも、一度話のタネに鈴鹿8耐、観に行ってみませんか。語るのはそれからってことで。
++++++日乗++++++
ダメ出し3回目でGO。
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