マン島TTポスター
去年もTTウィークはプラクティスが始まるより前にマン島入りした。どのように日常から非日常に島が変化していくのか見届けたかったからだ。
プラクティスが始まって取材で忙しくなる前に済ませておきたいこともある。資料などの買い物を先に済ませたり、お世話になっている人々に会いに行くことだ。
昨年、私は現地に到着して早々、港のツーリスト・インフォメーションに よった。いろいろな資料やガイドをもらうためと、その年のTTのポスターを買うためである。TTのポスターは港のツーリストインフォメーションで売っているのしか最近は見たことがない。かなり以前はグランドスタンドで売っていたこともあったが。
すでに前田淳選手のインターネットの掲示板で、マエジュンがポスターに採用されたらしいことを聞いていたので、是が非とも入手したいと思っていた。しかし、本当にマエジュンのポスターがあるかどうかは半信半疑だった。なぜなら、TTでは通例として前年のセニアTTの優勝者がポスターに採用されるためだ。実際、マクギネスをキャラクターとして採用したデザインのものが公式に発表されていた。
しかし、マエジュンのサイトではすでにデザインを発表しているわけだし、100周年も近いので、「スター」の仲間入りをしたマエジュンがポスターに採用されることもあるかもしれないな、とも思った。
それで、マエジュンのポスターを買うために、ツーリストインフォメーションに足を運んだ。ツーリストインフォメーションでは残念ながらマエジュンのポスターを発見することはできなかった。
その後、自分のスクーターで島じゅうを回ったけれど、マクギネスのポスターはあれども、マエジュンのポスターを発見することはできなかった。自分が発見できなかったというだけであって、ポスターが存在しないとは思わなかった。引き続き探してみようと思った。
お世話になっている知人宅に遊びに行ったとき、話題は前田選手のポスターの件に及んだ。その人もぜひ入手をしたいのだが、まだ見かけたことがないと言った。私たちは半日以上、ランチやアフタヌーンティーを楽しみながらいろいろな積もる話をしたのだが、5時間も6時間も話し込んだうちの数分間の話題として、マエジュンのポスターの件を語り合った。
「もしかしてCGだったりして?」「フェイクなんて作るかな?」「まだTTウィークははじまったばかりだし」
そんな冗談まじりで、ほんの数分、話をした。
それでも、私は前田選手のポスターがあるのなら本当に凄いことだと思い、絶対に欲しいと思ったので、その人と、もし見つけたら入手しますからと伝えた。その人も、TTウィークが終わったら郵便局にあるかもしれないので、と言った。情報をやりとりし合いましょうと語り合った。
これが全てだ。
全てと言っても、これは私の視点、私の記憶ではあるのだが。
結局、私はマエジュンのポスターの現物を一度も見ることなく、島を離れることになった。
「悪しきものはババァ」発言とか、「産む機械」発言なるマスコミのミスリードの問題が日本にはある。
前後の文脈を無視して言葉を切り取ってネガティブなイメージをかぶせようとする問題だ。
その場に居合わせなかった人が、前後の文脈を無視して言葉の一部を自分の中のネガティブなイメージに都合のいいように合わせて、悪い方向に拡大解釈する。
勝手なイメージをその人の中で膨らませるのはかまわないが、勝手な拡大解釈を他人に言いふらしまくるのはいかがなものか。とはいえ、まあ勝手にすればいい。私は母に先入観を抱かない。
フィールドワークということをやっていると、何が真実なのか、とらえることがとても難しいということを痛感する。
現場に居合わせて取材し、写真を撮り、メモをとったとしても、取材者にとってのとらえ方、インフォーマントにとっての真実、いや、その人は真実を語っていないかもしれない、話し合って内容が誤解であるかもしれない、写真や録音はライブではないし、結局、取材者の編集という作業を経て、取材者の視点というバイアスがかかる。
ましてや、その場に居合わせなかった場合、他人から聞いた情報が真実であるのか否か。
あるいは、真実を語っていたとしても、聞いている人に先入観がある場合、まったく違った方向にとらえられることがある。
唯物論的論争を思い出した。マイルドセブンの箱の中身はマイルドセブンではないかもしれない。セブンスターかもしれないし、ホープかもしれない。
そのような大きな問題点を突きつけられた2006年のTTであった。
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