G-FP2DF1P69Y ナベゾ画伯こと渡辺和博さん: 小林ゆきBIKE.blog

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2007.02.07

ナベゾ画伯こと渡辺和博さん

既報の通り、ナベゾ画伯こと渡辺和博さんが亡くなった。ここ3年ほど闘病していた肝臓癌で、享年56歳だった。

(追記)ちなみに、和博さんはまるでお酒を飲まない人だ。というか、飲めない人。


わたしと和博さんとの出会いは、私がクラブマン編集部に入ってすぐに担当編集者になったことだった。
はじめてうかがった広尾の事務所で言われたことが忘れられない。

「ボクが、アナタを一人前の編集者にしてあげます」

こんな風に書くと、和博さんはギラギラとした、編集の、雑誌の、熱血漢のように思われるかもしれないが、実態はまるで逆だった。
取材に同行すると、いつもわたしの肩半分に一歩下がって、ときどきわたしのヒジを引っ張っては、
「ねぇねぇ、コバヤシ、コワイ。ねぇ。もう、いいよね」
と人見知りを発揮したものだった。
この業界でわたしは「ゆき」とか「ゆっきー」とか「ゆきちゃん」と呼ばれることが多いけど、和博さんはいつも「コバヤシ」とか「コバヤシさん」と呼ぶことが多かった。

かれこれ8年ほど担当していたクラブマン誌の「ヨーイングゾーン」だが、担当を外れてからも、ちょくちょく和博さんとは親交があった。よくあったのは、「○○ってどお?」という他誌のネタの下調べだったりとか、「○○編集部から一向に電話がかかってこない。コバヤシ、なんとかしろっ(苦笑)」とか、まるでわたしとの仕事とは関係ない電話があって、そこから話が脱線しながらお話しする、というものだった。
あるときなど、わたしの仕事とは全然関係ない取材に同行したことすらある(苦笑)。画伯曰く、「コバヤシさんもひとりじゃあんなとこコワイでしょう」。

その後フリーランスとなったわたしは、和博さんに内緒であることを真似した。それは、名刺の肩書きである。
和博さんの名刺は、「名前+事務所の連絡先」というシンプルなもので、会社名も肩書きも一切入っていなかった。確かに、和博さんの肩書きをどうするかは悩むところがある。もとは漫画家でもあり、いわゆるヘタウマなイラストを書くイラストレーターではあるが、文章を書くことも多かった。一時はテレビ出演もあったし。
要は、そのときどきに合わせて変幻自在になれるということだったのだろうか、とにかく和博さんの名刺に肩書きはなく、わたしもそれに倣って、自分の名刺に肩書きを入れていない。

クラブマンに在籍当時、和博さんから連載の書籍化の打診を受けた。わたしは編集者として書籍を編集する経験もしてみたかったので、これはありがたい申し出だった。かくして、“ヨーイングゾーン”という連載は、『エンスー病は治らない
』という書籍となって刊行された。

こうして思い出して見ると、和博さんとの思い出は数限りない。それだけ、極端な取材ばかりしていたということかもしれない。
鈴鹿までドゥカティ350を持っていったものの、押しがけ練習に終わったこと。
筑波のレースで転倒して鎖骨を折ってしまったが、病院に行くまで折れている事実を言えなかったこと。
解体屋、族車屋、有名H-D屋への潜入(?)取材。
広尾での美味しいお食事。
あるマシンへのいたずら。

思い出すときりがないけど、もう、あの特に用事もなくかけてくる電話がかかってこないかと思うと猛烈に淋しい。


++++++日乗++++++

夕べ、久々にネコに行った。駐車場でわたしのニンジャをぼぅっと眺めている人がいて、誰かと思ったら旧知の友人、ももちゃんだった。開口一番「ナベゾ画伯、死んじゃったよ! 連絡あって真っ先にゆきちゃんのこと思い出してたら、ゆきちゃんのバイクみたいのが置いてあって……」

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コメント

謹んでご冥福をお祈りします。

投稿: tip | 2007.02.09 01:21

突然の訃報、驚きました。56歳とは若すぎです。。。

知人が亡くなることってショックですよね。
でもナベゾ画伯はゆきさんに出会ったことで、
もし会ってなかったらという人生よりも絶対
楽しい事を色々プラスしてもらったと思いますよ。

謹んでご冥福お祈りします

投稿: わは? | 2007.02.09 02:57

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