新城ラリーのフィールドノーツ
先週の日曜日、11月19日(日)に愛知県新城(しんしろ)市に、新城ラリー2006を観に行ってきた。今回の視察は、「公道モータースポーツ」をテーマにした博士論文のための比較調査で、ざっくり全体像を観るのが目的。9月のWRCラリージャパン(十勝・帯広地方)に引き続き、クルマは門外漢の私だが、運営方法や地元住民の雰囲気などを感じることができた。
これからモータースポーツを地域活性につなげたい地方自治体やバイク関係者、地域団体のみなさん、画期的な前例として新城ラリーは参考になるのではないだろうか。
以下、フィールドノーツ(未完)から。
●新城(しんしろ)ラリーについて
・新城ラリーは地域活性法認定第一号として行政全面協力のモータースポーツとしては日本で初めて行なわれた。
・DOS(Do Outdoor Sports)地域再生プランは、自動車ラリー、パラグライダー、自転車レースなどアウトドアスポーツで地域振興を図るもの。
「新城市の地域資源である豊かな自然を活用したアウトドアスポーツのまちづくりを進め、経済の活性化と雇用の創出を図る。道路・河川使用許可等の条件整備を行い、アウトドアスポーツ大会を積極的に誘致し、流入・交流人口の増加につなげ、若者が恒常的に集う元気なまちの実現を目指す」(新城市役所のサイトから)
※地域再生計画は全部で5つ認定されている。DOSはそのうちの一つ。
・ラリーは3回目で地方選手権として開催されている。来年からは全日本選手権への昇格が決まっている。来年の日程は2007年11月8日~10日の3日間の予定で、全日本選手権の最終戦として開催される。
・DOSプランの一貫として、すでに自転車レース「ツール・ド・新城」を開催。耐久レースだけでなく2.7kmの公道を閉鎖したスプリントレースを行なっている。ツール・ド・新城には1200名の参加があった。
・今回のスタート地点の会場は旧鳳来町のほうらい公園。JR飯田線本長篠駅から徒歩10分ほどの小高い丘の上にある公園の駐車場にSS(スペシャルステージ)が設けられ、タイムアタックが行なわれた。
●新城市概要
・新城市は2005年10月1日に新城市・鳳来町・作手村3市町村が合併しできた。
・新城市は人口5万2000人、面積499平方㎞。主な産業はかつては林業だったが、現在は近隣の工場(トヨタ)など。
●当日の様子
・スタートは7時から。豊川から始発だと最寄りの本長篠着は7時ちょうどなので間に合わなかった。
・駅舎にはラリーのポスターはあるものの、会場がどこにあるのか、また盛り上げるようなのぼりなどは出ていない。
・駅から80mのところにバスのロータリーがあり、無料シャトルバスのポスターが。しかし、何時から運行するか書いていなかったため諦めて歩いて会場を探す。
・駅近くにラリーのための無料駐車場があり、その案内の看板は出ていた。案内係の人に会場の場所を聞いて歩いて向かう。
・公園入り口で自主的?とも思われる軽トラックの仕出し屋さんが出店していた。地元のお年寄りがサンドイッチ(200円)、おにぎり(300円)、炊き込みご飯(250円?)など格安で販売。出店料やマージンがないため安いのかもしれない。
Cf.十勝WRCラリージャパンの食べ物は総じて高かったので(串もの400円程度、ご飯もの800円程度)マージンが高いと思われる。
・ほうらい公園の来場者は約3000人と推定。朝7時の時点ですでに1000人ほどが集まっていた。
・セレモニアルスタートは7時から約1時間かけて行なわれ、スタートしたクルマは林道セクションのSSに向かった。
・セレモニアルスタートのフラッグはレースクィーン2人が大きな新城市旗を振っていたが、おそらくプロでないのか、コートを着たり、笑顔が崩れたり、二人でおしゃべりしていたり、姿勢が悪かったり、白いフラッグを地面に付けてしまってどろどろにしたりと、ちょっと興ざめ。
・セレモニアルスタートと公園で行なわれるSSの間に道路閉鎖のインターバルがあって、その間に来場者がどんどん増えた。
・公園の上で行なっているので、選手紹介のアナウンスは下の道まで聞こえたが、かすかに聞こえる程度。運動会並みだった。クルマの排気音などはほとんど聞こえないか気にならない程度。
・ほうらい公園には地元の出店によりお祭りのような雰囲気に。子どもが楽しめる屋台から、地元特産品の販売、パラグライダーのデモ、ロッククライミング体験などが行なわれたいへん賑わっていた。出店はプロの仕出し屋さんだけでなく、コンビニからの出店でヤマザキの肉まんを売っていたり、八百屋さん?、地元鮎の塩焼き、商工会議所?、商工会女性部など地域の団体が出店。また、来年工場移転が決まっているユアサ工機も出店しPR。ほかに、地元造形作家の出店、奥三河観光協議会のスキー場のPRなども。
・地元密着の出店のため、ラリーに興味のないお年寄りなども観戦ついでに茶飲み話ができる、といった風情だった。
・NPO法人縁日楽校ブースはとくに子どもたちが集まっていて大成功。独自の地域通貨を作って両替をする。地域通貨は間伐材を輪切りにして焼き印したもの。
・シャトルバスは三菱の岡崎工場の社員送迎バスを無償で提供してもらい活用。
・入場料、駐車場、パンフレットなど新城ラリーは全て無料。
・巨大アストロビジョンでのSSからの生中継も、地元企業やラジオ局の協力で無償で展示。
・市が使ったお金はわずか●万円(一応伏せる)とのこと。スタッフ、機材などほとんど全てボランティア、協賛で賄っている。
・参加台数は60台限定。70台以上の応募があり、書類選考を行なったとのこと。
・観戦者はマニア1割、普通のクルマ好き2割、残りはクルマ好きとは関係なさそうな地元の家族連れやお年寄りばかり。地元密着のイベントとしては大成功だと思う。
・1000円のマフラータオルを販売、応援に活用していた。昼前の時点で450枚売れたとのこと。
・緑色のマフラータオルは販売ブースに応援などの活用の仕方がポスターで掲示されていて、ラリーカーが来るたびにマフラーを振りながら応援する姿が見えた。
・市役所からは約100名が土日返上で無償で対応。
・実行委員は焼肉屋さんの社長さん。何かイベントごとをやるにしても、突拍子もないことをしないと全国の注目は得られない、と考え、花火やマラソンではなく、モータースポーツを選んだ、とのこと。
・地元のお年寄りに聞くと、「反対なんてなかったな」と皆異口同音に答えた。
・一方で市役所の担当者は、理解を得るのはたいへんで説明を何度も行なった、という。
・公園内のSSはスチールの仕切りコーナーとロープで仕切られた簡単なもので、スポンジパッドなどの安全策はない。数台、縁石に乗り上げるクルマもいたが、今年は大した事故もなかった。
・昨年は縁石に乗り上げたクルマが横転した事故があったそうだが、観客やオフィシャルへの被害はなかった模様。
・コースと観客との距離は非常に近く、一番近いところで2mほど。WRCに比べて格段に距離が近く、ほとんどノーマルで音に迫力のないマシンばかりでも視覚的に迫力を感じることができた。
・大成功の秘訣は、入場料無料、駐車場無料にカギがあるのではないか。
Cf.マン島TTもほぼ観戦無料、駐車場無料か格安である。そこまで行くのにお金がかかるため、遠方からの来場者への配慮だと思われる。
・SSの1台目、ゼッケントリプルゼロ?はなんと市長さん自ら自走で登場。SSの途中でクルマを停めて挨拶をした。通常、こういったイベントの場合、首長はスタートフラッグを振るなどの登場の仕方をするが、実際に走ってみせるというのは市民の理解を得るための大きなアピールになる。クルマは公用車ではなく、自家用車のアウディであった。手を振りながら退場し、うっかりコースミスも。
Cf.マン島の観光大臣も自ら走ることで有名。かつてはマンクスグランプリに参戦経験があり、TTレースではラップ・オブ・オナーのパレードラップに参加している。また、TTウィーク中、バイクであちこちに登場したりもする。
・セレモニアルスタートの脇やステージ脇に置かれたスポンサーを掲示する看板は、地元林業の間伐材を使っていた。
・参加マシンはチューニングしてそうなラリー専用車が3割、残りは普段は自家用車であろうと思われるステッカーチューンもほとんどしていないもの。軽自動車(ミラ)の参加もあった。
●その他、メモ
・競技会の名称……2006年JAF中部・近畿ラリー選手権第6戦 新城ラリー2006
・開催日程……2006年11月18日(土)~19日(日)
・開催場所……愛知県新城市
・オーガナイザー……モンテカルロ・オート・スポーツ・クラブ(JAF加盟クラブNo.23011
・競技内容……スペシャルステージラリー開催規約に従ったスペシャルステージラリー
・スペシャルステージの路面の種別……舗装路面
・コースの総距離……160km(内スペシャルステージ7か所・合計40km)
・前座イベント……18日(土)新城文化会館にて、レプリカカー展示&レースクィーン撮影会、エコドライブラリー「奥三河“味・走”選手権!」、市民感謝祭「あののんまつり」、新城ラリー2006開会式
| 固定リンク | 0
「スポーツ」カテゴリの記事
- マン島TTとは、いかなるレースなのか。~2013公式DVDライナーノーツより(2021.07.04)
- サーキットの入場料を一覧にしてみた(2018.05.11)
- 【お知らせ】5月6日スパにしサーキットスクールはレディスクラスも開催!(2018.04.10)
- 日本のMFJはFIMと違って引き続き「ロードレース」の呼称を使用(2016.01.15)
- FIMから“ロードレース Road Race”の文字が消えた(2016.01.14)
「08.交通問題・道交法」カテゴリの記事
- 【4月1日】悲願・38年ぶりに2段階右折を見直しか(2024.04.01)
- 『週刊新潮』(2023年9/28号)の原付関連記事にコメントが掲載されました(2023.09.25)
- 停まるときはリアブレーキも使いましょう(2023.09.19)
- 「中免(ちゅうめん)」復活:免許と車両の種類/区分のねじれ解消へ(2023.04.01)
- 【記事寄稿のお知らせ】バイクのニュースで「マン島TTトラベリング・マーシャル」について書きました(2022.07.11)
「12.モータースポーツ」カテゴリの記事
- 2024年も小林ゆきはバイクざんまいでした!(2025.01.01)
- 今晩! 2024年12月13日(金)すきぱむラジオに出演(2024.12.13)
- 【掲載情報】世界最古のバイクの公道レース「マン島TTレース」が今年も開催 2024年5月27日から(バイクのニュース)by小林ゆき(2024.05.29)
- 今年もマン島TTレースを取材しにきています(2024.05.26)
- 12月9日(土)10日(日)はバイク弁当さんにてイベント! 水野涼選手のトークショーもあります(2023.12.06)
「01.バイク」カテゴリの記事
- 2024年も小林ゆきはバイクざんまいでした!(2025.01.01)
- 今晩! 2024年12月13日(金)すきぱむラジオに出演(2024.12.13)
- 10月27日(日)“ワイルドボアで遊ぼう”マルシェ&ゆきズムin倉敷(2024.10.11)
- 9月15日(日)バイク女子部ミーティング-バイカーズパラダイス南箱根 「Kommonうでわ」で出店します!(2024.09.13)
- チェストプロテクターの説明が難しかった話(2024.09.11)
「四輪・クルマ」カテゴリの記事
- マニュアルのジムニー(JA11)に冬の北海道で乗ってきました(2022.01.09)
- 【YouTube】四輪『レーサー鹿島さん』バイクを語る!編をupしました(2020.05.06)
- 【かなり前に準備していた嘘記事です】道路交通法を知って交通安全! 国民皆免許キャンペーン発足、原付と小特の試験手数料1500円を先着500万人に助成(2020.04.01)
- 運転に必要なことは「危険発生 決めつけ運転」なんじゃないだろうか(2019.04.12)
- 小特免許改正へ~二輪メーカー主導なるか? 高齢化社会に向けて次世代モビリティ『超超超超モビ』計画発足(2017.04.01)
「16.ツーリング」カテゴリの記事
- 2024年も小林ゆきはバイクざんまいでした!(2025.01.01)
- チェストプロテクターの説明が難しかった話(2024.09.11)
- 12月9日(土)10日(日)はバイク弁当さんにてイベント! 水野涼選手のトークショーもあります(2023.12.06)
- 【Youtube】Kommonちゃんねる に「Vストローム250SX 試乗会の帰りに夏の思い出を語る」をupしました!(2023.10.01)
- 8月12日(土)13日(日) The Kommonsライブ・ゆきズムin北海道2023 &Kommonうでわマルシェ(2023.08.02)
コメント
取材していただきありがとうございました。
支援委員会の立場で協力してきました。
問題点も多く見受けられましたが成功と言っても良いでしょう(笑)チラシ等の製作の遅れが大きかったと思います。原因は明らかですので来年は改善されるでしょう
市民、近隣の方々への認知度はまだまだなので頑張らなければいけないでしょう。ネットのみならず、マスコミ関係の方々(特に自動車雑誌)へもっと新城ラリーというものがあることをアピールして言って欲しいです。
地元で圧倒的シュアのある中日新聞に出ていないのは悲しかったです。
次回も皆ボランティア精神で協力できる新城ラリーであって欲しいです。日本ではマイナー競技なんですからお金を取ってはいけません(カーリングが悪例)
近いうちに駄目だしの委員会で活発に意見交換がされるはずです。では乱文失礼しました。
投稿: 市民のひとり | 2006.11.23 18:47