ま、とりあえず生還したわけだがw
話は6ch(@関東地方)である。
「ま、とりあえず」
「ま、とりあえず」
「ま、とりあえず」
大人のオモチャの19歳の口癖を聞いて、「とりあえず」という言葉がこんなにも不愉快に感じるものなのかと気づかされるとともに、90年代後半に鈴鹿8耐で取材したとある大物ライダーの言葉を思い出した。
まだ私が鈴鹿8耐チームを結成して監督業をするんなんざ微塵も想像していなかったあの頃。ま、とりあえず(笑)4耐からウィーク中ずっといなきゃ8耐はわからんでしょ、というわけで、鈴鹿にずっと詰めて密着取材をした年のことだ。
その大物ライダーさんは開口一番、こう言った。
「ま、とりあえず暑いしー」
そのあとに続く言葉を想像するに、「頼まれたから仕方なく走る」「暑いから早く終わって欲しいと思っている」などなど、ネガティブな考えを想像してしまったのだった。
ネットで辞書を調べてみると(便利な世の中になったものだ)、とりあえず、という意味にネガティブな意味はない。
●大辞林 三省堂
[1] いろいろしなければならないものの中でも第一に。さしあたって。まずはじめに。
[2] すぐに。直ちに。
●大辞泉 JapanKnowledge 小学館
1 ほかのことはさしおいて、まず第一に。なにはさておき。
2 何する間もなく。すぐに。
念のため、手元の広辞苑でも調べてみる。
●広辞苑
①たちまちに。たちどころに。
②さしあたって。まず。一応。
おおっと、ここで若干ネガティブとも感じられる意味が出てきた。「一応」か。
●広辞苑
一応=一往
②ア ひととおり。ひとわたり。大略。
イ とりあえず。ひとまず。
大略
②あらまし。おおよそ。
おおよそ
①すべて数えて。おしなべて。
②大体において。ほぼ。およそ。
③なみひと通りであるさま。世間一般。なみたいてい。
きりがないので、ここまで。 その大物ライダーさんも関西人だったし、かの世界チャンピオンも関西人なので、もしかしたら関西人の言うところの「とりあえず」には、関東人の受けるような意味はないのかもしれない。あるのかもしれない。
いや、きっとそこには大した意味はないのかもしれない。
真剣な話をしているのに、そこらに寝っころがってこちらを見もしないで返事と言えば
「……だから?」
「……で?」
と答えるような人のように。
「とりあえず」の言葉には、相手に対して真剣に対峙しません、というメッセージが見え隠れし、虚しさを感じるのは私だけだろうか。
マクラが長くなってしまった。
鈴鹿8耐はかつて、今回渦中のTBSが放映権を持っていたことがある。BS-iというTBSのデジタル放送局の開局にあたって、要となるコンテンツとして鈴鹿8耐放送権をNHKから獲った。
その結果は、「ガチンコ」という番組によってサクセスストーリーという名の八百長がモータースポーツの世界でも実行できてしまうことに皆さん愕然としたのではないか。
もちろん、メディア露出という一定の効果があったことは認める。が、ガチンコのサスセスストーリーのプロセスには明らかに台本があった。バイクに関わるものとして、その台本通りに演出される現在進行形のモノガタリに違和感を感じたのは私だけではあるまい。
モータースポーツはさすがにボクシングのように世界チャンピオンまでは台本通りの演出をかけることはできない。けれども、あのままTBSの毒牙にかかっていたら、何が起こっても不思議はないと、今回の騒動を見ていてつくづく思うのだった。
ガチンコ時代も含めて、数年間はTBSが放送していた鈴鹿8耐。しかし、その結果は視聴率が取れないと見るやいなや、ポイっ、である。大事に育てる気はないのである。
でも、それでいいではないか。
モータースポーツは莫大なお金がかかる。バブル時代のようにお金が自動的に集まってくるわけでもなく、鈴鹿8耐や全日本に参戦するライダーやチームは日々汗水足らして金策に苦心していることと思う。
モータースポーツファンの皆さんは、かつてのようにファイティングマネーがモータースポーツに集まらないことを苦々しく思っている人も多いと思う。
だがしかし、スポーツを黒いビジネスの広告塔に狙う輩は相変わらず存在する。
バイクブーム、レースブームを経て様々なバイアスが淘汰された今、皆さんの目は肥え、健全なるモータースポーツ界を実現できるチャンスなのではないかと思う。
バイクブーム世代二世の子どもたちは今、小学生から中学生。たくさんの逸材が全国にいて、世界に羽ばたく準備をしている。
第二、第三の亀田兄弟のようにさせないためにも、TBSの今後の動きに注意していたいと思う。
♯後日談。何年かして、その大物ライダーさんに再会した。自費で海外のレースに参戦しているのを見て、この人は本当にレースが好き、バイクが好きなんだな、あのときの「とりあえず」は照れ隠しだったのだなあ、と自分を納得させたのだった。