G-FP2DF1P69Y 首都高二人乗り問題、矛盾だらけの読売報道: 小林ゆきBIKE.blog

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2004.10.23

首都高二人乗り問題、矛盾だらけの読売報道

 ヤフー読売新聞より。
こういった偏向記事にはほとほと呆れる。
 以下、筆者のツッコミ入りで記事を読んでいただきたい。

「安全」か「利便性」か、首都高バイク2人乗りに両論

 上記は記事のタイトル。タイトルからして偏向報道である、まったく。
「安全」と「利便性」、どちらかしか選べないような言い方で、読売新聞はまやかしの議論にしてしまっている。

 首都高速を知らない地方の方に念のために申し上げると、首都高速の総延長距離は226kmにも達する。「首都高は危ない」とかいう表面的な議論の根拠は恐らく欠陥道路としての都心環状線のことを指すのだろうが、都心環状線の延長距離はわずか15km。総延長距離の5%にすぎない。
 例えば、首都高神奈川県の湾岸線の端っこの「幸浦」から、埼玉県の川口線の川口に向かったとする。最短距離は横羽線~都心環状線経由の75kmだが、普通はより道が広く3車線あって走りやすい湾岸線経由で行くだろう。そうすると、距離にして82㎞。この82㎞はただの82㎞ではない。横須賀横浜道路の佐原から、東北道青森東を結ぶ約810㎞のうちの82㎞である。
 もし仮にこの首都高部分の82㎞を一般道で走るとなると、恐らく3時間はかかるだろう。
 さらに、幸浦から川口までの区間、曜日(金曜日や土日)や日にち(いわゆる5・10日)を避ければ、統計データを示すまでもなく、危ないどころか、かなり安全に走れる、と言い切れる。
 つまり、危なそうに感じる都心環状線というわずか首都高のうち5%の道路への主観的気分が前提で、「安全か利便か」を論じるのは詭弁だろう。 

 

今年6月の道交法改正で、高速道路での2人乗り原則解禁が決まったが、各都道府県の公安委員会の判断で、路線や区間によっては禁止にもなるからだ。首都高については「カーブが多く2人乗りは危険」と規制論も根強い。

 オートバイだけに「危険」をなすり付けるのは絶対におかしい。統計のウソ、まやかしの報道。
 カーブが多く危険と言うなら、後部座席シートベルトをさせないタクシーやハイヤーや運転手付き黒塗りセダンの方が走っている数からしてもっと危険だ。私は、タクシーの後部座席に乗客として乗っていて追突事故に遭い、片足切断した広告代理店の人を知っている。
 カーブが多く危険と言うなら、たびたび起こるトラックの横転事故を防止するためにトラックこそ首都高通行禁止にすべきかもしれない。そういう詭弁も成り立ってしまう。

これに対し、オートバイ愛好者らは「首都高は東名や中央などの高速道をつないでいる。禁止ならわざわざ一般道に下り都内を通過しなければならない」と不便さを訴える

 訴えたいのは不便さだけではない。不便かつ一般道の方が危険が多いからだ。一般道の方が危険なことは、過去の統計データからも明らかなのに、「オートバイ愛好家」の弁として一般道の方が危険というコトバを削除して「利便」をだけを語らせているのは、「利便ばかりを訴えるオートバイ愛好家像」を捏造したいだけなのだろう。

「安全」か「利便性」か。東京都公安委員会は年内にも、首都高速の規制方針を決める。

 もう一度言うが、今回の首都高二人乗りを認めるか、認めないかの議論の本質は、認める=利便性を優先、認めない=安全を優先、という議論では決してないはずだ。
 認めたくない=警察・公安委員会のプライド(?)、認める=警察・公安委員会の敗北(?)、のようにすら感じる。
 首都高二人乗りを認めることは、安全かつ利便性が生まれる、そういうことなのに。

 

首都高速や名神高速の利用が始まった1960年代前半、2人乗りオートバイの転倒事故などが多発したため、65年から高速道路での2人乗りが全面禁止となった。

 事故多発は本当はオートバイだけではなかった。クルマも、トラックも、オート三輪も、軽自動車も。そして当時、ヘルメット規制が甘かったことを忘れてはならない。そもそも、「転倒事故」が多かったのかどうかも怪しい。この記事の書き方だと、単独転倒が多かったような書き方だが、真実はどうなのか。

 

その後、オートバイ愛好者らから「夫婦や友人同士で2人乗りでの遠出ができない」「滑りやすいマンホールなどの障害がない分、一般道より安全」などの意見が警察庁などに寄せられるようになった。さらに、大型バイクの販売促進につなげたいメーカーの要望も強く、規制緩和の流れにも乗り、今回の道交法改正となった。

意見が寄せられたり、販売促進したいメーカーの要望が強かったり、規制緩和の流れに乗ったりすると法律が改正さるんだろうか。そんなにレベルの低い話なんだろうか。科学的根拠に基づいて安全を比較検証したからではないのか。

道路交通法の総則・目的の中で、

この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。

とある。今回の道交法改正は、その目的に則った改正ではなかったのか。

 (中略)しかし、警察庁は「危険性が高い道路は、2人乗り解禁後も規制する」との考えを明らかにしており、全面解禁には慎重な姿勢だ。道交法改正を審議した国会でも、「首都高速など危険が多い高速道路もあり、一律に解禁していいのか」と議論になった。

首都高速自体が欠陥道路である。オートバイが危ないのではない。道路の造りが危ないのだ。また、第一当事者は圧倒的にバイクではなく相手のクルマやトラックにある。つまり、クルマやトラックの方が危ない、という論理すら成り立つ。
というわけで、危険な首都高はクルマとトラックを通行止めにすればよい。それならオートバイは快適に走れる。そんな机上の詭弁まで言いたくなってくる。

 首都高速は、傾斜やカーブが多いうえ、ほとんどの路線で路肩がなく、事故に巻き込まれた時などに“逃げ場”がない。慢性的な渋滞により、進んだり止まったりの繰り返しが多く、オートバイはバランスを崩しやすいともいわれる。

事故に巻き込まれたら“逃げ場”なんか意味がない。巻き込まれた時点でオシマイだ。
ちなみに一般道では、事故に巻き込まれてすっ飛んでった先にガードレールの柱があって、そこで首を折って死亡、という事故があとを絶たない。ガードレールはライダーを守らない。

 高速道路で起きるオートバイ事故を、道路の距離1キロ当たりで計算すると、首都高速では過去5年間に0・5件の発生で、全国の高速道路の平均の5倍にもなる。オートバイが事故を起こした場合の死亡率は22・4%で、ほかの高速道路の平均6・6%の3倍以上だ

ここまで来ると、読売新聞の記者はいったいどこの大学で何学部を出たのかと問いたくなる。オートバイ事故の統計を高速道路と首都高だけで比べることはまったく無意味だ。統計のマジックだ。この場合、比較対象としてクルマとオートバイの場合、一般道と首都高の場合などなど、さまざまな統計をクロスして比較しなければデータとして意味がない。

 これに対し、全国のオートバイ販売店で作る「全国オートバイ協同組合連合会」(約1070店加盟)の福井二朗専務理事は「法改正で全面解禁と勘違いしているライダーも多い。高速道路で遠方から走ってきたライダーが土地カンのない都内で突然、一般道に下りると、かえって危険」と指摘。また、自動車メーカーの業界団体「日本自動車工業会」の大越茂交通統括部長も「首都高速は、東名、中央、関越などの高速道路をつないでおり、首都高で全面的に2人乗りが規制されれば、道路が分断されてしまう」と懸念する。

勘違いではない。法改正で全面解禁である。福井さん、あんたが勘違いだ。そうでなければ、読売の記者がわざと勘違いって書いたのか?
例外を作ろうとしているのはこれからだ。

しかし、福井さんはもう一つ勘違いを起こしていた。実際には、土地カンのない都内で突然、首都高都心環状線に入り込むとかえって危険なのだ。それくらい、首都高都心環状線は覚えるのが難しい。
しかし、さらに危険なのは、土地カンのない都内で突然、首都高環状線に入り込んでウロウロと迷う地方ナンバーの四輪ドライバーだ。何度も何度も事故に遭いそうになったことがある。一日の走行台数あたりの割合でいけば、二輪車は四輪車の0.03%ほどなのだから、「土地カンのない都内に行こうとしている遠方・地方のクルマは首都高進入禁止」にすべきなのである。

 首都高速は、環状線、湾岸線などの路線ごとに道路特性や事故の発生件数なども異なる。都公安委の決定に先立ち、事実上、規制方針を決める警視庁交通部は、「利便性に配慮しつつ、総合的な対策を検討中」としており、2人乗りを解禁する路線と禁止する路線を色分けするなどで、「安全」と「利便性」を両立させたい考えのようだ。

利便性はもちろんだが、安全性に配慮して欲しい。安全性に配慮したら、二輪二人乗りは首都高を走ったほうがいい、という結論に本来ならなるはずだ。さまざまな統計データを悪用し、読売新聞に偏向した記事を載せてもらうことで、どうにか世論を「二輪二人乗り=危険=首都高は禁止」という方向に持っていきたいのが見え見え。
オートバイ愛好家は利便性を追及したいのではない。安全に走りたい、その一心のはずだ。

路線を色分け? はぁ? 道路に色を塗るんだろうか? 地図に色を塗るんだろうか? 看板に色を塗るんだろうか?
そんなインフラは整備しなくていいから、公共の福祉たる道路を享受する国民の一人として、公平に道路を使用したいなのだ。二輪高速二人乗り問題とはそういうことのはずだ。

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コメント

実は私、親の代からの読売新聞の読者です。これはいかん!と思って、東京本社の社会部に電話をかけて、穏やかに念入りにお話してみました。

特に「バイク愛好家は利便性を追求したいのではなく、安全に走りたいだけなのだ」という主張を強調し、二輪ETCや駐輪場の問題も、ライダーのモラル啓発の観点を含めても良いから取り上げてほしい、とお願いしてみました。

この問題は、私も非常に関心が有ります。こうして書いてくださる方がおられると非常に嬉しいのです。いつも読ませていただいております。私も負けずに何か自分のブログに書こうと思っています。

がんばってください!!

投稿: Celica Negro | 2004.10.18 13:25

悲しいかなマスメディアの限界を感じる記事ですね。

時間に追われ、きちんとした取材も、うらづけの確認も不足
した記事だと思えます。

ま、それはともかく、小林さんのツッコミは痛快でした。

投稿: motoy600 | 2004.10.18 18:28

すみません。日記の修正をしていたら、トラックバックを連発して
しまいました。お詫びいたします。

投稿: motoy600 | 2004.10.18 19:28

はじめまして。HEYと申します。
小林さんのご意見、まったく同意です。
言いたいことをすべて代弁していただいたようで、すっきりしました。

こと日本の行政は自動車大好きですよね。
道路も自動車のことばかり考えていて、歩行者や自転車の安全のことなども後回しになる始末です。
ドライバーの利便性のために巨大ターミナルの地下に巨額の費用をつぎ込んで駐車場は作っても、駅前に溢れかえる自転車のために駐輪場を作ってくれたことなどないでしょう。よっぽどか自動車の通行を邪魔するような事態にでもならない限りは。

小林さんのおっしゃる通り、自動車から見て、邪魔な、鬱陶しい、臭いものに蓋をする行政ではなく、道路を公共の、共有財産であることから発想した、公平性と安全性を追求した本来の姿に立ち返って欲しいものです。

投稿: HEY | 2004.10.19 10:39

警視庁の10(テン)ロードプランのページ(http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotu/roadplan/10road1.htm)">http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotu/roadplan/10road1.htm
によれば、自分の通勤経路である「国道246号他」の過去3年間の平均事故密度(1kmあたり)は40.9件/年です。

「高速道路で起きるオートバイ事故を、道路の距離1キロ当たりで計算すると、首都高速では過去5年間に0・5件の発生」ってのが正しければ、40.9×5=204.5対0.5と400倍以上(ホントか!?)首都高速のほうが事故が少ないことになります。

上記経路の過去3年間の平均死亡事故は20.94kmあたり4.7件なので、1kmあたりの死亡者数を5年分で計算すると
R246ほか (4.7/20.94)*5=1.12225406(googleは便利だ)
首都高 0.5×22.4%=0.112(このぐらいは暗算してみる^^;)
≒1.12対0.112で、首都高速のほうがちょうど10倍ほど死ににくいことになります。

読売さんの貴重なデータのおかげで「首都高速は国道246(ほか)と比べて二輪車の事故発生率は400分の1で死亡率も10分の1だ」ということがわかりました(^^;

どこか計算間違えてます?

投稿: もっち | 2004.10.19 14:05

みなさん、コメントありがとうございます。

もっちさんの指摘通り、首都高の事故率を議論するためには、
『首都高と同じ経路を走る代替高速道路』(しかし、存在しない)、
または『首都高と同じ経路を走る一般道』の事故率を比較しなければなりません。

ところが読売新聞は首都高と経路の違う高速道路との比較で強引に「首都高をバイクで走ることは危ない」という論旨に持っていっている。

賢い読者の皆さんはこんな読売の記事に騙されないようにしましょう。

投稿: 小林ゆき | 2004.10.19 14:19

すいません、ETC料金問題で間違えてトラックバックかけてしまいました。(冷汗)でも首都高二輪二人乗り規制もなんでやねんって思ってます。

投稿: db | 2004.10.19 17:58

標識の素案ができたみたいですね。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041021-00000055-kyodo-soci">http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041021-00000055-kyodo-soci
国会の委員会でも出ていた意見ですが、二人乗り禁止区間の設定条件や合理的理由があやふやなままでは警察が恣意的に規制しないかどうか気がかりです。警察がそれを公開するだろうか…。

投稿: リッターVツイン乗り | 2004.10.21 17:19

Celica Negroさん>読売新聞に電話まで入れて下さったとのこと。それくらいしないと、「上手いこと騙せた」なんて思われるのかもしれません。

motoy600さん>「裏付け確認」、ジャーナリズムの基本なんですよね。読売はマスコミはマスコミであって、ジャーナリズムは要らないなんて思っているのかもしれません。警察の意見をマスにコミュニケーションする場合は。

HEYさん>危ないのは本当にバイクなのか? ということに尽きると思います。バイクが危ない、と言っているクルマの方がむしろ危ないのではないか? 検証が必要な議論なはずなのに。

もっちさん>社会学の統計用語で、従属変数と独立変数、なんて言いますが、何と何を比べると何が解る、ってのを、まったく関連ないものに当てはめて、自分の都合のいいデータに捏造する。読売の手口がわかりました。

dbさん>なんでやねん、って意見も貴重です。コメントありがとうございました。

リッターvツイン乗りさん>事故がないと警察の仕事が減りますからねー、などと穿った見方さえしてしまう今日このごろです。首都高二人乗りできて事故が減るより、このまま一般道の事故が減らずにいた方が処理しやすいのでしょうか。
警察24時かなんかで「命を顧みず摘発に励む警察官像」を造るためのダシか、ライダーは。

投稿: 小林ゆき | 2004.11.02 12:58

初めまして、大阪の林と申します。
「矛盾だらけの読売報道」拝見しました。
これは、読売新聞に向かってぶつけてみられたのでしょうか?
実は私もあの記事を見て、いてもたってもいられずになり、
大阪府警と、警視庁には「無用な規制は事故を招く」と読売新聞には
「表題の矛盾性について」など小林さんの文章をシンプルにしたようメールを送ってみました。
住所や電話番号の記載が必須なので少し抵抗がありましたが、
地元故か大阪府警からは「上の方に必ずご意見は申し伝えます」との電話をいただきました。効果のほどはわかりませんが・・・ 警視庁や読売新聞からは音沙汰がありません。
読売や警察にあなたの記事(もう少しマイルドな表現で)を読ませてやりたいものです。
ホームページ内のリンクがおかしいのか構造が複雑なのか、他の方のコメントを見ることが出来ません。もしすでにお答えいただいているような内容でしたら申し訳ありません。ますますのご活躍をお祈りしております。

投稿: 林 真人 | 2004.11.03 01:08

林さん>こんにちは、書き込みありがとうございます。
「矛盾だらけの読売報道」のエントリーは読売の陰謀か(?ウソです)、リンクがときどきおかしくなってしまっています。
バックナンバーか、カテゴリー別にたどっていただけると、きちんと表示される場合もあります。
恐らく、ニフティ側のバグではないでしょうか。

読売に直接投書してはいません。
これについてはいろいろ理由があるのですが、
ひとまず、こういう考え方がある、ということをブログでいろいろな方にお伝えすることが第一、と考えているから、ということでして。

投稿: 小林ゆき | 2004.11.03 01:17

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