インターモット雑感
今年もまた国際バイクショーを取材してきました。
新車の詳しい情報は9月24日売りあたりの各雑誌で掲載されると思いますので、ザックリと雑感を。
インターモット(INTERMOT)とは、ドイツはミュンヘンで行われるオートバイ関連のトレーディングショーです。来場客のおよそ40%がトレーディングビジター(商談)だということからもわかる通り、世界中のメーカーやパーツ、ウエアなど関連メーカー、商社が出展するショーです。
約40カ国から1000ブースを越える出展があります。
……あー、雑誌の原稿みたくなってきたので、はしょります……
96年まではケルンで行われていた、自転車も含めたケルンショーが大規模なショーだったのですが、ヨーロッパは自転車の注目度も高く、よりオートバイに特化したイベントとして、ミュンヘン空港跡地に出来たニューメッセがオープンしたのに合わせて、98年、こけら落としのイベントとして、ミュンヘンのインターモットが始まりました。
2000年までの右肩上がりは終了、成熟時代へ
ヨーロッパの大規模な国際バイクショーは、偶数年がドイツはミュンヘンのインターモット、奇数年はイタリアのミラノショー、その2週間後に行われるフランスのパリショー(ミラノとパリは自転車も併催)が有名です。この他にも、イタリアのボローニャや、イギリスのバーミンガムなどでも行われますが、規模で言えば、インターモットが一番、二番がミラノ、三番がパリ、といったところでしょうか。
インターモットの場合、会場の規模は11万平方m。ちなみに、東京モーターショーは会場面積が 21万平方m。で出展者数は約280団体。展示面積は4万平方mだというから、インターモットがいかにバイクだけで広大な敷地を埋めつくしているイベントかがわかる。
いけないいけない、本題。
で、「国際的な」という枕詞が付くインターモットですが、ドイツの二輪市場は99年、00年を頂点に右肩上がり成長が止まり、昨年今年は下げ傾向にある、といった状況にあります。
一方、イタリアはまだまだ右肩上がり、イギリスも同様、スペインは横ばいだが好調、フランスはやや減、というように、一口にヨーロッパと言っても、マーケットの現状はさまざまです。
といった背景が反映されてか、出展されたバイクメーカーの雰囲気は、よりドメスティック(国内)向けな雰囲気になってきたような気がしました。
それは、ワールドプレミア(世界初公開)のモデルがほとんどなかったことでも解ります。日本メーカーでは衝撃的なニューモデルはヤマハのMT-1くらいだったでしょうか。
また、プレスカンファレンス(プレス向け発表会)の規模も、日本のメーカーとBMWこそかなり派手にやっていましたが、ヨーロッパの他のメーカー、例えば、ドゥカティやMZ、ピアッジォはいわゆる記者会見スタイルだったし、ピアジオとアプリリアとBMWは一生懸命、ヨーロッパの二輪市場の説明、ファンドの説明ばかりしていた印象です。
日本のメーカーはというと、今年のキーワードは「ファッションショースタイル」。カワサキは舞台正面のスクリーンからバイクが登場。スズキは中央に縦長の舞台を設置、物語性のあるファッションショー的な見せ方で進行。ホンダは会場外の印刷工場を借り切り、約150mという細長い特設舞台を設置、まさにファッションショーを展開。さらに、ヤマハはブースでのカンファレンスだったものの、昨年のパリショーで度肝を抜いた“金粉ショー”ならぬボディペインティングギャルを登場させ、印象づけを明確にしました。
個人的には、スズキが最後の方で展開した、GSX-R1000の発表です。商品性や技術説明を、な、なんと『日本語』で展開。(普通、東京モーターショーも含め、こういう国際的な場では英語で発表するのが一般的。)我々日本人ジャーナリストは、通訳用インカムを付ける必要がなかったのでした。
何がいいたいかというと、日本語で聞けて良かった、というのではなく、見てくれ的には安かろう悪かろうの日本以外のアジア製品を作っている人種と変わらない日本人のオッサン(失礼)が、下手くそな訛った英語で説明するより、日本ならではの高品質をアピールするためには、普段使い慣れている日本語で堂々と発表した方が好感度が高い、ということです。
そういう意味で、スズキのアピールは大成功ではなかったかと。
(カワサキの緑のお寿司もおいしゅうございました)
さて、個別の感想です。
ホンダ
今年はとにかく「SM」って名前のバイクばっかりあった。猫も杓子もSM。スーパーモタード、です。
でも、ホンダはちゃーんとその先のマーケットを考えている。冷静に考えれば、街でドリフトする人なんか少ない。実際にカリカリのモタードマシンなんかお尻が痛くて乗りづらい。本当にモタードのレースに出場する人など、ヨーロッパでは特に稀だ。というわけで、“ファンなんたら”。ドミネーターベースでモタードイメージだけどフツーに乗れる。この「フツーに乗れる」ってところがキーワードか。
スズキ
なんと言っても新型GSX-R。そのままでも十分速いのに、新型もちゃーんとチャレンジしている。▼三角形のマフラーは、これまで「マフラーなんかどうせ替えられちゃうし」というメーカーの諦めがコストダウンを真っ先にさせていた部分だったような気がするのですが、そのマフラーそのものに“価値観”を見い出した、という点で新しい試みだと感じた。
センター出しにすれば見えなくなっちゃうのだから安いステンレスにでも出来るのに。心意気を感じた。
ヤマハ
トリッカーを発表したのにはビックリ。今回の金粉ショーには再びびっくりしたが、それを加えたとしてもなお、日本での昨年の東京モーターショーのヤマハブースの凄さを感じざるを得なかった。日本4メーカーの中で、日本市場を大切に考えてくれている、というのを、インターモットで再確認した次第。それくらい、他のメーカーは日本市場を置き去りにし過ぎ?と最近感じている。たしかに、生産台数の数割にも満たない日本市場ではありますが。
「新しいカテゴリーを創造」というチャレンジ精神も好感が持てた。
カワサキ
ZX-6Rが丸くなった。10Rもいずれこうなるのか?! それとも?!
それにしても、Dトラッカーを輸出しないとは!!今こそ公道SMの先駆、Dトラッカーがヨーロッパで大ブレイク!のチャンスなのに。日本で\518,700-で売っているってことは、単純に1ユーロ=140円くらいで計算すると……3700ユーロ!安っ!それなのに……。
総感
それにしても、日本からの出展が少な過ぎる。現地法人があるようなグローバル企業は別として、例えば日本で作られているハードパーツ系のメーカーやそれを扱う商社が出展してもいいような気がするのです。
確かに、ヨーロッパのバイクブームは一段落傾向にあるけれど、それはこの後の市場の成熟をも意味するのではないかと。ですから、すでに10年前から成熟してきた日本市場で培われたニッポンの高精度なパーツ、アイディアは、ヨーロッパ市場でも立派に商売になるのではないでしょうか。つまりは、今後進むであろうヨーロッパの二輪市場の二極化の上の極を狙った市場展開が有り得るのではないかと。
これを読んでビビッときた企業さん、来年の9月はミラノショー、そしてパリショーです。キーワードはANCMA。この二つに行けば、ヨーロッパ市場だけでなく、アジアが、アメリカがどうなっているか、現場で空気を感じることができるんじゃないかと思います。来年はぜひミラノ、パリへ。特に、ミラノは大量にワールドプレミアが発表されそうな予感。
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