高速二輪二人乗り解禁、警察庁一部規制残す
警察庁、高速道路でのバイク2人乗り解禁、首都高など都市内で一部規制残す
改正後も引き続き、2人乗り禁止規制が必要であると認める区間を設ける姿勢■高速道での二輪車二人乗り、警察庁が都市内で一部規制残す
高速道路の二輪車2人乗り解禁を控え、先月に改正道路交通法案が通過した参議院での国会答弁が二輪車業界に波紋を呼んでいる。警察庁は首都高など都市内高速を想定し「自動二輪車の2人乗り禁止規制が必要であると認める高速道路の区間については、改正後も引き続き規制する」との姿勢を示した。最終決定ではないものの、二輪車業界からは「一般道の方が危ない」(日本二輪車協会)などと懸念の声があがっている。改正法案は来月上旬の本会議で可決・成立の見通しだが、ライダーの悲願である高速道路の2人乗り全面解禁は視界不良だ。
(ソース:日刊自動車新聞)
高速道路二輪二人乗り解禁を含む道交法改正法案が参議院で可決された、と喜んでいたら、一部ぬか喜びなことがわかった。
これに関する参議院内閣委員会での会議録を読んでみたい。例によって長文ではあるが。
まず、参考人として長江啓泰氏(日大理工学部名誉教授)からの発言があった。
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第159回 参議院 内閣委員会 第8号 平成16年04月06日
○参考人(長江啓泰君) 現在提出されております道路交通法の一部を改正する法律案、これが成立することを望んでおります。この件について、参考人としての陳述理由とその考え方を述べさせていただきます。
車社会、国民皆免許時代を迎えた今は、運転そのものが国民の生活と密着した生活行動になっていると言えます。運転を一つのシステムと考えますと、それを構成する要素は、運転をする人、扱われる車、それと運転を取り巻く道路環境というふうになります。
安全運転を確保するためには、システムの質的・量的水準を高めなければいけませんが、システムの限界は、これを構成する要素の中で最も低い要素が全体の限界を決めることになります。これはシステムの一つの宿命的なことだと言えます。したがって、より良いシステムとするためには、それを構成する要素のバランスの取れた性能を確保することが必要ということになります。
一方、運転の主体はあくまでも基本的には人であります。安全運転を進めるために、質の高いドライバーが不可欠であります。このような意味合いから、より多くの良きドライバーをはぐくむための動機付けとなる奨励策が必要であります。同時に、国民一人一人が是は是、非は非とするめり張りのある法令の執行を望んでおります。現在提出されております法律案の中の違法駐車対策、暴走族対策、携帯電話等の使用に関する罰則の見直し、飲酒運転対策がこれに当たるものと考えております。
システムの中で、人を除くその他の構成要素であります車と道路環境は、科学技術と密接な関係にあり、特に近年の進歩は、車の操作の簡便化と運転作業の中での認知、予測、決断、操作の誤りを補完する技術開発と実用化が進みまして、運転というシステム全体のレベルを維持しようとする観点から、運転者対策がこれに当たるものと思われます。
陸上交通における事故の要因は、その九〇%を超えるものが人的要因であるとも言われております。同時に、国際化が進む中で、諸外国との法令内容の整合化も重要な問題と考えます。運転教習時あるいは運転免許試験時で使われております車両と運転可能な車両とは必ずしも一致し得ない現状にありますが、運転特性、車両性能が相似する車両に区分して免許の範囲を定めること、車両特有の性質と運転の対処法を学習させ、試験に合格した者のみに運転免許証を交付することは交通安全を維持する上で大切であり、特に大型車については重要と考えます。
自動二輪車の二人乗り規制の見直しについては、先進国で高速道路を二人乗りで走行することを禁じているのは我が国が唯一であり、その見直しは当然と言えると考えます。しかし、一方では、暴走族が横行するのではとの懸念も払拭し切れないことも事実であります。運転者には適切かつ効果的な教育を施すとともに、自動二輪車以外の車両の運転者に対しては、これまた適切な情報を与え、相互理解を徹底させるとともに、暴走族対策を含めた対策を実施し、多くの善良な運転者の要望に耳を傾けることが優先すると考えます。
これらの見直しを進め、より良い交通社会の構築に向けて明確な道しるべができることを願っております。同時に、成立の暁には、積極的に広報啓発活動を展開し、効果を発揮する方策を実行されますことを希望いたします。
罰則の強化も重要ですが、同時に、二度と事故、違反を起こさないための問題意識の形成、行動変容、協力、協調を実践できる規範確立という個人個人への心の働き掛けにも力点を置いてほしいと考えております。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。
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長江先生のありがたいお話しがあったというのに、森田次夫君が。森田君は夫婦別姓に反対しているし、靖国神社にも参拝しているし、外国製CDの輸入禁止に賛成している比例代表選出自民党加藤派参議院議員である。
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第159回 参議院 内閣委員会第 9号 平成16年04月08日
○森田次夫君 規制の見直しに当たりましては、安全教育、それから違反者や暴走族の取締りを強化する、それらは十分行っていただきたいと思います。
しかし、現在自動二輪車が禁止されている高速道路や自動車専用道路の中には、構造上、車線ですとか路肩が狭かったりカーブが多くあって、そうしたことで適していないところもあるんじゃないかなというふうに思うわけでございます。特に首都高なんかそうだろうと思います。
そこで、高速道路であればすべて一律に認めるのかどうなのか、その辺、これは簡単にひとつお願いをします。
○政府参考人(人見信男君) お答え申し上げます。
道路交通法では、法律で禁止していないものであっても、都道府県公安委員会が個別に道路標識等を設置して道路における交通の規制を行うことができることとしております。このことは高速道路についても同様であります。
したがいまして、都道府県公安委員会におきまして、交通の安全等を図るため自動二輪車の二人乗り禁止規制が必要であると認める高速道路の区間につきましては、改正後も引き続き規制することとなります。
○森田次夫君 高速道路の二人乗りの禁止規制を見直すということでございますけれども、まず、そういったことで、これをお聞きしまして頭に浮かんだのは、今申し上げましたけれども、首都高で認めて大丈夫かということが私、一番最初に頭に浮かびました。そういった首都高の危険性は法案の作成段階でも国家公安委員会でも議論があったと、このようにお聞きしておるわけでございます。
そこで、首都高での二人乗り通行を認めるのは私は極めて危険と、こういうことで先ほどから申し上げているわけでございますけれども、大臣、この辺に対する御所見は、お聞かせください。
○国務大臣(小野清子君) このたびの二人乗り規制の見直しの検討の過程におきましては、国家公安委員会におきまして、暴走族対策の強化、あるいは適正な事故捜査の推進や危険性の高い区域への対策の必要性等について議論を行ったところでございますが、特に個別の路線、区間について安全性に関して分析を行いまして、危険性が高いと認められる場合には、改正法の施行後も引き続き二人乗り禁止の交通規制を行うことも含めて、各都道府県警察を指導する必要があるとの議論がございました。
そのようなわけで、高速道路につきましては、自動二輪車の死亡事故率、一キロメートル区間当たりの事故件数のいずれもが高速道路、国道全体の平均あるいは指定自動車専用道路全体の平均よりも高く、自動二輪車にとって他の高速自動車国道等より危険性が高いと考えており、引き続きまして自動二輪車の二人乗りを規制すべき区間がある道路と考えておりますので、そのように警視庁を指導するように警察庁を督励してまいる所存でございます。
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とは言え、修正案は否決され、今回の改正案が参議院を通った。
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第159回 参議院 本会議 第14号 平成16年04月09日
○簗瀬進君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、最近における道路交通をめぐる情勢にかんがみ、放置違反金制度の新設、放置車両の確認事務等の民間委託その他の違法駐車対策の推進を図るための規定の整備を行うとともに、中型自動車に係る運転免許の新設、共同危険行為及び携帯電話使用等に対する罰則の強化、大型自動二輪車等の複数乗車に関する規制の見直しその他の運転者対策の推進を図るための規定等の整備を行おうとするものであります。
委員会におきましては、四名の参考人から意見を聴取した後、小野国家公安委員会委員長等に対して質疑を行いました。
委員会における主な質疑の内容は、放置車両確認事務等の民間委託の是非、駐車監視員による確認事務の在り方、放置違反金制度の運用と放置違反金の使途、高速道路における自動二輪車の二人乗りに対する国民の不安等でありますが、その詳細は会議録によって御承知願います。
昨日、質疑を終局した後、民主党・新緑風会の松井委員より、放置車両の確認事務等の民間委託に関する規定を削除すること等を内容とする修正案が提出されました。
次いで、討論に入りましたところ、民主党・新緑風会の神本理事より、修正案に賛成、原案に反対の旨の意見が述べられました。
次いで、順次採決の結果、松井委員提出の修正案は賛成少数により否決され、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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この件については、レスポンスが全国オートバイ連合会の話しを交えて詳しく報じている。
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二人乗り部分解禁に全国オートバイ組合連合会がNG
2004年5月20日
「連合会は業界団体などと協調して、この10年来、オートバイの高速道路2人乗り解禁を申し入れてきた。ところが、参議院の審議経過を見ると、とても全面解禁といかない状況に不安を感じている」
全国のオートバイショップで構成される「全国オートバイ連合会(吉田純一会長)の福井二朗事務局長は、道路交通法改正案で審議されている二輪車の高速道路二人乗り規制緩和について、強い懸念を表明した。
「国家公安委員の意見や参議院での答弁を見ると、首都高速、阪神高速など都市部の高速道路の通行は一部で規制されると思わざるえない。都市高速は独立して存在しているわけではないので、法律が改正さたと思って走っているバイクが、突然の規制に慌てて事故を起こさないとも限らない」
参議院内閣委員会では、自民党・森田次夫参議の高速道路の中には、構造上2人乗りに適していないところがあるという指摘に答える形で、「必要のある区間では、改正後も引き続き規制する」(警察庁・人見信男交通局長)答弁があった。(~中略~) 設計上、二輪車2人乗りが不可能な高速道路は、そもそも存在しているのか。警察庁は2人乗りの安全性を3000万円の予算をかけて検証済みである。
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二人乗り規制により事故が起こるのでは、という意見が主要因ではいささか主張が薄いような気もするのだが。
私は今、週に3日、用賀から護国寺まで首都高を横断するようにオートバイで走っているけれども、危ないかどうかは、二輪車において一般道と首都高の事故率を比べるのではなく、二輪車と四輪車をそれぞれ一般道と首都高で比べなければ意味がないと思う。相対的危険と絶対的危険、ってやつかな。ということで、小野君の答弁はまやかしっぽい。
で。例えば常磐道や東北道から東名に抜けたいってときに、首都高が使えずに一般道を使わなければならないとしたら……ツーリングそのものを中止したくなるほど、うんざりですよねえ。けっこう長い。40㎞くらいはあるだろうか。その間に出くわす、交差点の数々。一般道の事故形態として一番多いのは交差点だから、ここを回避できるだけでも、かなりの事故を減らすことができるはずだ。
論点としては、首都高二人乗り解禁の話しにおいても、今までの高速二人乗り解禁問題と同じく、交差点がないことによる事故率低下=高安全性と、公共の利便性を主張するしかないのではないか。
それより何より、首都高は道路として欠陥道路であるからして、二人乗り云々以前に存在そのものがどーかと思う今日この頃。
えー道路交通問題を語るときに欠かせない「欧米諸国は……」という話しをしてみますと、イタリアには首都高より危ない首都高速的道路が都市には必ずあって、もちろん二輪二人乗りできます。事故率も低い。(高速道路全体と一般道を比べると、死亡事故率は高速が一般道の3分の1)
本日時間切れ、やや〆めが甘くてすみません
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コメント
バイク愛好家です。これまで不当な差別を受けていましたが
今度の選挙では自己主張しましょう。
森田次夫議員を今年の「比例」参議院選挙で落としましょう。
自民党、加藤派だそうです。
以上
投稿: kuni | 2004.06.10 15:04
同感ですね>kuniさん
投稿: 883 | 2004.06.12 10:06
バイク愛好家です。選挙でライダーの意見を繁栄させるしかないと思います。取りあえず選挙に行きましょう!
投稿: 千葉 和喜 | 2004.06.13 12:30
実際の所一般のバイクユーザーに危険なのは確か。
夜間規制程度はやらないと
投稿: 都民 | 2004.09.25 19:08
首都高速のタンデムについて、立場やバイクに馴染んでいるかどうかで、理解に温度差があるのを何となく感じます。
そんな目的ではなく、単純に「4輪でもバイクでも、実際の眺めを動画で見て首都高の理解の手助けになれば」として撮影したのが、リンク先です。
(撮影走行車種はHONDA_AX-1です。元職業ライダーだったので、体で道の感覚は慣れていた事を補足しますが、撮影画面をちらちら見ながら走るのは、「カーナビ見ながら走る感じ?」を連想してさすがに怖かったです。元々は自分でオーサリングしての自主販売も考えてました(苦笑))
ここでは、正否は言いません。このムービーを見て、「どのように首都高ではタンデムが安全なのか・危険なのか?」のたたき台の材料になれば幸いです。
投稿: こぐれ@東京 | 2004.11.29 04:36