スカイダイビングの事故から学ぶ
今日はちょっと長いブログなんだけど、モータースポーツにも当てはまる問題山積みなことを考えたので、ぜひ読んで下さい。
昨日の日テレ系「今日の出来事」という報道番組の中で、スカイダイビングのタンデム事故の原因を探った、ということを報道していた。以下、事故当時の報道から(一部省略)。
スカイダイビングで墜落死 埼玉県で、男女2人11日午前10時半ごろ、埼玉県川島町東野の荒川河川敷近くの水田で、スカイダイビングをしていた男女2人のパラシュートが開かず地面に激突し、全身打撲で2人とも死亡した。死亡したのは、イベント会社(中略)主催の体験ダイビングに参加した会社員女性(33)と、非常勤インストラクター男性(37)。東松山署が事故原因を調べている。調べでは、インストラクター4人と体験者ら6人の計10人が同日午前10時すぎ、軽飛行機で川島町の本田航空の飛行場を飛び立ち、高度約3800mに上昇した。女性は、パラシュートを背負ったインストラクターと器具で固定し2人1組で一つのパラシュートで降下する「タンデムジャンプ」で、ほかの3組とともに降下。単独の2人も飛び降りた。(共同通信)
事故原因についてのこんな報道もあった。(一部省略)
川島町「タンデムジャンプ事故」 ~「タンデムジャンプ」の国内初の死亡事故となった。原因も世界的に前例がないといい、関係者も「想定していない事故」と口をそろえる。~統括する任意組織の「日本パラシューティング委員会」によると、年間を通じて体験コースなどを主催しているのは全国で五団体ほどあり、八百人から千人が会員登録。「タンデムジャンプを楽しむ体験者の数は特定できないほど多い」という。(~中略)何らかの原因でメーンのパラシュートが開かなかったため、インストラクター(37)が予備のパラシュートを開こうとした際、パラシュートを開くための「パイロットシュート」が、落下速度を抑えるために開いていた「ドローグシュート」のひもに絡まり、予備のパラシュートも開かないまま受講者の会社員女性(33)とともに落下したとみている。(中略)スタッフは「世界で初めてのケース。過去の事故を調べても、同様の原因は見つからない」と漏らす。 スカイダイブジャパンが日本パラシューティング委員会に提出した事故報告書によると、空中での姿勢や、当日の風の強弱などで気流が乱れたため、上にまっすぐ伸びて開く予定のパイロットシュートと、ドローグシュートが絡んだのが原因としている。 しかし、県警の調べでは、インストラクターが最初に開くはずのメーンパラシュートのコードを引いた形跡がないといい、疑問も残る。県警によると、コードは簡単に引ける状態だったといい、機材の不良は考えにくい。 ~同委員会によると、これ以前のスカイダイビングによる落下死亡事故は、一九九七年から二〇〇〇年までに国内で三件。いずれも単独での飛行で、うちパラシュートが開かずに落下したのが石川県で一件、メーンと予備のパラシュートが絡まった事故が栃木県で一件起きている。
この事故を受けて、愛好団体スカイダイブジャパンと運営会社メイクは、アメリカで検証実験を行い、テレビで詳細に報道していた。そして、検証結果は検察に(うろ覚え、警察だったかな)参考意見(か、証拠かもうろ覚え)として提出するらしい。
事故を受けて主催団体がいち早く事故原因を探り公開する。素晴らしいことではないだろうか。
翻って、オートバイの世界ではどうか。加藤大治郎選手の件(バックナンバー参照)が日本では初めてだったように思う。
ちなみに、恐らく世界でもっとも大きいライダー組織、アメリカのAMAでは、レース部門のサイトに
WARNING Motor vehicle mishaps, in competition or otherwise, can result in injury or death. Motor vehicles should never be used by minors without parental consent or supervision. バイクは危ねーよ、ケガしたり死ぬことだってあるよ、未成年はパパママと一緒にね!
ってちゃんと警告している。
スカイダイビングの場合、事故を受け、原因を探り公開した。素晴らしい。今後の啓蒙啓発に努めて欲しいと思った矢先のこのニュース。
スカイダイブ団体解散へ 男女墜落死事故で埼玉県川島町で1月、スカイダイビングの男女が墜落死した事故で、死亡したインストラクター(37)が所属していた任意団体「スカイダイブジャパン」(埼玉県所沢市)は6日、事故の調査終了後に団体を解散すると発表した。
また運営会社もスカイダイビング事業から手を引くという。遺族への対応は行う、とは言え、残念なことだ。
さて、他のスカイスポーツの状況はどうなんだろうと思い見つけたこのサイト。現在更新停止中なのが残念な、茨城県ハンググライダーの会(茨城ハング)の事故発生に伴う臨時会報(エリアルール改正)と、エリアルールがたいへん興味深い。
臨時会報においては、「事故後の経緯」「事故直後にとった対策」「今後の対策」がきちっとまとめられ公開されている。
またエリアルールもルール違反に対しての対応が具体的である。
アウトサイドの処理1耕作地に降りた場合や建物などに損害を及ぼした場合は酒1升程度をもって耕作者または被害者の家に謝りに行く。なお、謝りに行った家でアウトサイド封筒に署名を貰うこと。
3アウトサイドレポート(着地場所を明記すること)を書き、罰金2,000円を同封して他の会員にアドバイスと署名を記入して貰い、エリア関連のショップに提出する。(ビジターの場合は推薦者が提出する)。
4山チンの場合は罰金2,000円、スタチンについては罰金1,000円として3.と同様の手続きをする。
6ビジターのアウトサイド(山チンを含む)は当日を含め以後10日間の当エリアでのフライト停止とする。
3.危険行為に対する罰則規定
フライト中の次の行為は当日を含め1カ月間のフライト停止とする。
ロードレースなどにおいても、もっとも危険な多重クラッシュなどは、罰金・走行停止など明確な規定を厳格に運用すべき時期に来ているのではないだろうか。
そもそも、ロードレースに於いて、レース中のルール違反は何らかの罰則を受けることはあっても、練習中、スポーツ走行におけるルール違反は、口頭で注意を受けることはあっても、その後の走行になんら影響を及ぼさないのである、現在は。
罰則の明確化も大事だが、そもそも、事故形態のデータがまったくないのが現状である。単独転倒にせよ、多重クラッシュにせよ、「いつ、どのような状況で、何が原因で、結果としてどのような損害が起きた」というものをデータ化して公表するだけでも、次世代への警鐘となるのではないか。
上記のハンググライダーのエリアルールの場合、エリア外に着地したとき、相手方に謝りに行くだけでなく、事故を起こした証明となる封筒に署名をもらうこと、そして罰金を払う封筒の中に他の会員にアドバイスと署名をもらうこと、としている。
これをモータースポーツで応用するならば、例えば、2台が接触した場合。お互い相手をはっきりさせるためにも事故証明にお互い署名をもらう。罰金とともにチーム関係者にアドバイスと署名をMFJやサーキットに提出する。そして、MFJやサーキットはこれを基に、事故形態などの統計を公開する。とかね。
太田哲也氏裁判(バックナンバー12を受けて統括団体は裁判対策なんかしている場合ではないんである。
★2004年12月6日追記★
(ソース:毎日新聞MSN)墜落死:グアムでも日本人死亡 埼玉の事故と酷似
記事によれば、
二つの事故を「装備も形態も酷似し、同類の事故」と断言。その上でパラシュートの仕組みについて「構造改良が必要かもしれない」と指摘
している人もいる。
事故原因の検証と追求、そしてそれらの発表がなければ、次の事故防止にはつながらない。
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