最近気になる記事から~太田哲也氏のコラム
モータースポーツ界ではすでに“太田裁判”と呼ばれ、事故の内容も裁判の行方も注目されている裁判がある。
98年5月3日、富士スピードウェイで開催された四輪のレース、全日本GT選手権で全身やけどで瀕死の重症を負った太田哲也氏が起こした訴訟である。
事故の経緯を簡単に説明すると、雨の中の多重クラッシュで氏の乗ったフェラーリが全焼。救急員の現場到着が遅れ、後続の選手が消火活動したものの、鼻を再生するなど全治3年、手足に障害が残る大怪我を負ったものだ。
そのリハビリの過程は、書籍「クラッシュ」(幻冬舎)や映画「クラッシュ」に詳しい。
そんな太田氏が、朝日新聞の2003年11月22日朝刊(首都圏)に、
◆レース界
安全高める知恵役立てよ
と題したコラムを発表した。10月末に東京地裁での判決を踏まえたレース界への提言である。
太田氏は四輪の自動車レーサーとは言え、ここ数年の重大事故の増えているオートバイレースにも太田氏の言うことが全く当てはまる。
判決は太田氏の勝訴。しかし、主催者などの被告が控訴したため、裁判はまだ続く、という。
判決の主旨は以下の通り。
「事故発生の原因は主催者側にあり、消火態勢を整える義務も怠っていた」と断定
争点は、“死人に口無し”の誓約書の条項にある。例えば、四輪の場合はこうだ。
「主催者などの手違いに起因した事故でも、一切の損害賠償を請求しない」 ~故意の接触などはありえないというフェアプレーの精神が前提だからだ。
しかし、そのことと「主催者の手違い」を無限に許すことは別問題である。
さらに。
私の入院中に主催者側が発表した事故原因は「ドライバーのミス」。事実と異なる一方的な内容だった。
次の一文に、重要な問題が提言されている。
安全対策が不十分なために、選手が次々に倒れていくプロスポーツに未来はあるだろうか。
そんな氏も、多少は主催者側を評価している部分はある。
事故後、様々な改善策が図られてはいる。
なんだか歯切れが悪い。
~ドライバーがレース場で危ない個所をみつけても、それを公にする機会も場所もいまだにない。
なるほど、四輪もバイクレースと同じ問題を抱えているというわけか。
かつての職場で太田氏をよく見かけたというだけでなく、レースに関わる一介のジャーナリストとして、氏の活動を応援しないわけにはいかない。
太田氏は「第二、第三の太田哲也を出さないために」こんな言葉でコラムを締めくくった。
今こそ、関係者が知恵を絞る時ではないか。それが近い将来、日本のモータースポーツが欧米のように文化として根づくきっかけになる、と私は信じている。
欧米ということばはあまりにも大雑把だ、と普段は感じるものだが、モータースポーツ文化に於いての“欧米”というククリは成り立っている。
ニッポンにも、モータースポーツ文化を。
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コメント
ゆきさん
はじめまして、花 と申します。
私も最近バイクに興味を持ちまして興味深く読ませていただいております。
今後ともよろしくお願い致します。m(_ _)m
※ゆきさんの本家のHPの方が2000年から更新が滞っていますが活動の方は続いているのでしょうか?
投稿: 花 | 2003.12.09 14:07
花さん、コメントありがとうございます。
アメリカはマイアミから書き込みしています。
花さんのblogも拝見しました。
ステキなページですね。
もしかしてお花屋さん?
それにしても1㎝までの接写が出来るデジカメがあったとは!
私はフィルムとともに心中する予定なのですが、
今持っているコンタックスG2やN1、コニカ現場監督だと
全然接写が出来ないので、せいぜいN1のマクロで撮るくらいです。
本家の方、最近も細かくちょくちょく更新していますよ!
更新情報が更新されてないだけのようで。
BBSでは活発に意見交換しています。
いずれ本家とこのブログを合体させるときも、
BBSは併用していくつもりです。
ブログは一方的に情報発信するには都合がいいのですが、
皆さんの書き込みがトップに持っていくことができない
ですからね、
あ、スタイルシートなるものまで使ってらっしゃるんですねえ!
すごい。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: YUKKY | 2003.12.10 12:52
モータースポーツを愛する者に一人として、この裁判が残す経過は今後にとって貴重なことになると思います。先日、市内の公会堂で太田哲也さんの講演会が開かれ、私は仕事で行きそびれ、家内が講演会を聞いてきました。かなり感動して帰ってきました。「あきらめないで何かをし続けよう」のチャレンジ精神、「KEEP ON RACING!」私も生で聞いてみたかったです。
投稿: しんさん | 2006.01.21 12:55