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2009.11.15

「世界にはまだまだスゴイひとがいる」

今回は急な来萌だったにも関わらず、いろんな人がなぜか噂を聞きつけて「ウチに泊まりなさい」とおっしゃってくれてありがたい限り。

で、昨日までサイドカーの元パッセンジャーで何度かTTにも出たことがあるヘレンさん(女性)宅にごやっかいになった。

「世界にはまだまだスゴイひとがたくさんいる」

とおっしゃったのは、パリダカールラリーを完走された柏秀樹御大であったが。

ヘレンから聞いたサイドカーの世界もなかなかスゴイものがあった。

・サイドカーのチャンピオン(世界チャンプだったか欧州チャンプだったか)は、下肢の障碍があって車椅子を利用しているが、それでもサイドカーレースに出ている。運転操作はパドルシフトと手元ブレーキに改造してあるので問題ないし、コーナリングはパッセンジャーに任せればよい

・TTレースにも出ているサイドカーのあるドライバーは片足の股から下が義足で、サイドカーに乗り込むとき、義足をいったん外して乗りこむので、周りの人がギョッとする

・TTのサイドカーレースのトップエントラントのハンクス氏は今年63歳。しかし、そんなのは序の口、TTでは珍しいことではなく、誰それは70歳になってもTTに出ている

・長年、サイドカーレースに出ているある女性は来年、TTレースに出ることを決意した。彼女は60歳を超えている

「障害者、高齢者、女性……ハンディキャップなんか関係ないのよ、やりたいと思ったら不可能はないのよ」

とヘレンは語った。

今年のTTで大怪我を負ったニック・クロウとマーク・コックス両氏。とくにニックは片腕を失ったけれども、リハビリは順調で、先日のチャリティパーティで二人とも、なんらかの形でレースの世界に戻ると宣言したのだという。

ニック&マークの事故に関して、友人や関係者らの大規模な募金活動が行なわれてきた。
彼らには奥さんや幼い子どもたちがいること、手術やリハビリのためイギリスの病院にいて、何度も家族がマン島からの行き来を余儀なくされること、ACUのレース保険がびっくりするほど少額なこと、そして障碍を負ったあとの今後の生活……もろもろに対して寄付を募っていた。

好きでやってきたレースでの怪我、日本人なら「自己責任」という言葉が浮かぶが、友人らの募金活動はそんなことではくくれない文化を生み出しているのかもしれないと思い至った。

確かに高額の保険に入っていないと、万が一に備えられないのだけど、どんなに高額な保険でもカバーできない部分はあるだろう。たとえば、実際の介護、介助とか、医療費以外の部分とか。
システムとしての保険の整備ももちろん必要なことで、世界グランプリロードレースでは、リスクの対価としての賞金の引き上げをめぐって70年代前後に何度もボイコットがあったほどだ。

ニック&マークの友人らの活動は、「相互扶助」(相互扶助、という言葉自体、日本語にするとなんだかちんけに感じてしまうけれども)の精神の現われであり、保険システムだけでなく、レース関係者やレースファン、そしてライダーらの相互扶助、すなわち「心の支え」の文化を生み出しているのだと思う。
そのような「心の支え」のあるモータースポーツならば、ライダーたちは安心してモータースポーツ活動をしていくことができる。

このような心の支えを感じられ安心してレース活動ができるモータースポーツは、産業化した「モータースポーツ産業」では獲得しえないことで、これこそが「モータースポーツ文化」なのではないか。

念のため。レースそのもの、コースそのもの、レース運営そのものと、レース活動の裏支えは、それぞれのレイヤーで考えていかなければならない、と前置きした上で。

スゴイ、と感じたことは伝えていかなければ、と思った来萌でした。

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