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2007.02.09

「世界最速のインディアン」~これを観ずして何を見るのか

映画「世界最速のインディアン」を観た。

Indian

公開2日目。バイク乗りたち、というよりは、アンソニー・ホプキンス見たさの渋い映画ファンが多かったように思う。日曜日の午後だというのに、ひとりで観に来ている人も大勢いた。

場面は、ブロックを積んだだけの小さなガレージの中にベッドだけを置き住んでいる老人が、ハっと目を覚まし、「時間がない」と飛び起きて、早朝からインディアンのエンジンをかけて隣人に怒られる場面から始まる。

キッチンもない。バスルームもない? もしかしてトイレも?(これは映画をご覧になるとオチがわかる)

Offerings to the God of Speed

という象徴的な言葉が書かれているジャンクパーツの棚。そこからいくつかを取り出し、ぐつぐつと煮えたぎった鍋(?)に、「今日のレシピはフォードとシボレーと……」と言いながら何かを作る主人公、バート・マンロー。ニュージーランドの片田舎、インバカーギルという町の出来事だ。

彼は1920年型インディアン・スカウトをいかに速くするか、のためだけに生きている。そして、いつか「ボンヌヴィル」の塩平原(ソルトフラッツ)で世界最高速の記録を出してみたいと夢を持っている。しかし、お金がない。人生の残り時間も少ない。

資金集めも兼ねたパーティにちょっと悪そうな59クラブっぽい若者たちが乱入してくる。そして、彼らのマシンとバート・マンローのインディアンがビーチで対決する。若者たちのバイクはBSAにAJSにトライアンフ。当時(おそらく1963年)の時代背景を忠実に再現したモデルたち。60年代はイギリス製バイクが世界を席巻していたのだ。その結果は……。

本当にボンヌヴィルに行けるのか? このあたりから物語は転がってゆく。そのさまは、まるでチェ・ゲバラを題材にした「モーターサイクル・ダイアリーズ」のようなロードムービーへと展開していく。
出会う人、出会う人、このしょうもなく愛すべきやんちゃオヤジが見舞われるトラブルに手を貸す。良い人しか登場しない。悪い人(?)と言えば、強いて言うなら20ドルもせしめた花売りの女くらいか。でも、悪いというよりは、アメリカという国がそういう国なのだから仕方ない、という描写なはずだ。

ところで、「ボンヌヴィル」の表記だけど、日本のバイク乗りにとっては「ボンネビル」という響きの方がおなじみだろう。トライアンフ・ボンネビル。ヨシムラ・ボンネビル。
それだけ、このソルトレイクのボンネビルがスピードの聖地だ、ということなのだ。それで、映画では敢えて聖地を強調するために「ボンヌヴィル」と表記したのかもしれない。

予告編を見ると、ほのぼの感動映画かと思ったら、もう、泣きツボの嵐。
アンソニー・ホプキンス演じるバート・マンロー像は、なんとなく、わたしがマン島でお世話になっているおじいさんに似ている気がする。というか、あんなジイさん、マン島にわんさかいる。そこもわたしにとってはツボ。

わたしにとってもっとも来たのは、ボンヌヴィルについにやってきて

「ついにホーリー・グラウンド(=聖なる地)にやってきてしまった……」

とバート・マンローがつぶやくシーン。

わたしが2000年に初めて鈴鹿8耐に挑戦したとき。数々のトラブルなんてもんじゃない苦難を越えて、ようやくスタートグリッドに立ったときの、なんとも言えない清々しさと畏れ。数万人の観客の声援とアナウンスが響き渡っているのだが、監督であるわたしと、第1ライダー、第2ライダーが待機するスタートサークル、そこだけは、バート・マンローが降り立ったボンヌヴィルのように静寂で包まれていたかのようだった。
あのときの感慨に自分を重ね合わせたら、もう……。

もちろんこの映画はバイク乗りでなくとも何かを感じ取れると思う。宣伝文句では、主役がアンソニー・ホプキンスだからか、団塊の世代におすすめ、なんて言っているけれど、若い世代だって“何か”をやり遂げたことのある人ならきっと共感・感動できるはずである。

逆に、この映画を観て何とも思わない人がいるんだとしたら、うーん、あんまりそういう人とは付き合いたくないなあ。
この映画は、観る人の人生を炙り出すリトマス試験紙になるかもしれない。
結婚に迷っている女性は、彼氏を伴ってこの映画を観て彼の瞳を観察することをおすすめする。
逆に、この映画を彼女と観に行く男性へ。もしかしたら彼女はほのぼの感動で終わるかもしれない。だって、女性はなかなか心底何かに打ち込むという経験をすることは社会的背景上、少ないから。で、自分ばっか号泣しちゃうってことも覚悟の上で。

なお、新宿南口のテアトル タイムズスクエアで2月中旬まで、この映画で使用したインディアンを展示しているという。
もう一度、観に行こうかな。

追記:最後の最後にバイク用語の翻訳の監修として、有名な日本のバイクの会社名が出てくる。これはこれでけっこうウレシイことだった。ネタバレになるのでここでは名前を書かないけれども。

++++++日乗++++++
銀色(500円・100円・50円)貯金箱にしている、ハート型のアクセサリーケース。これもナベゾ画伯にいただいたものだったなぁ。

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