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2004.12.16

チャンプU、ありがとう、さようなら

モトチャンプの兄弟誌であり、中古車雑誌の黎明期からその中心的役割を果たしてきた、『チャンプU』が12月発売号を持って休刊することになった。

※豆知識
『休刊』……なぜ廃刊ではないのか。それは日本の雑誌流通システムに関わりがあるらしい。日本の雑誌流通システムは、トーハンや日販など大手取り次ぎ各社の寡占により、早くからシステムが確立されてきた。そのシステムの核となるのが「雑誌コード」だ。雑誌コードは、書籍や別冊やムックなどの形式で発売したあと、実績があると月刊や週刊などのコードが割り当てられるわけだが、そのハードルは富士山よりは高いらしく、この雑誌コードがないと事実上、日本中に流通させることはできない。バブルの頃は、数億円で取引されるほど、この雑誌コードという数字が一人歩きしていたが、現在は数千万円、いやそれ以下ということも。つまり、雑誌が休刊になったとしても、雑誌コード自体には価値があるため、出版社間で雑誌コードが売買されたり、同じ出版社でも別の名前の雑誌に割り当てたりすることが可能らしい。雑誌コードが割り当てられた雑誌は、復活することもあるため、「廃刊」ではなく、「休刊」とする場合が多い。また、雑誌名を商標登録してある場合もあり、雑誌名と出版社間の移動は様々な裏事情が絡み合っていたりする。出版社間移動をした雑誌の例として、「レディスバイク」(休刊中)、「ライトニング」、「アウトライダー」などがある。

『チャンプU』と言えば、私がフリーランスになって最初に仕事をした思い出深い雑誌だ。ラ・モト時代の元同僚Kさんが声をかけてくれたんだけど、その後もたびたび、前編集長から声をかけてもらったり、持ち込み記事をカラーで掲載してくれたりした。その編集方針は一貫していて、うまく言えないけど、「伝えたいことをわかりやすく伝える」みたいな感じで、前編集長には、編集者としてのイロハを再確認させてもらえたように思う。少なくとも、入稿しました→(校正省略)→雑誌掲載されました、みたいな垂れ流しのスルーではなかった。必ず、編集者や編集長のエディットが加味されるような仕組みが生きていた。
チャンプUさんと仕事をしていてなんと言っても嬉しかったのは、編集者の皆さんがいつも楽しそうにしていたことだ。締切りに追われて追い詰められているような表情をしている編集者ばかりの編集部を見てきた私にとって、それはとっても新鮮なことだった。つまりは、(ま、当たり前のことなはずなのだが)編集者自身がバイクを楽しんでいる、そういう編集部だったと思う。

『チャンプU』がほかの中古車雑誌と一線を画していた部分はたくさんあった。秀逸なのはインデックス。創刊当初から変わらないというチャンプUのインデックスシステムは、良く練られていて、検索性の高いものとなっている。検索と言えば「図書館学」みたいな学問もあるが、昨今のIT化された検索システムもそもそもは「人間は何の情報が欲しいか、その情報をどうやって手に入れようとするのか」ってところにシステムの根源がある。ちょっと誉め過ぎかもしれないけど、チャンプUのインデックスシステムは、そうしたアカデミックな匂いさえ漂わせていた。

『チャンプU』のアドバンテージは、実は4メーカーの広告が入らないことに、もともとはあった。現在は、4メーカー広告が揃っている雑誌の方が少ないのだが、総合バイク雑誌全盛の90年代初頭、4メーカー全ての広告が入らないバイク雑誌は、バイク雑誌ではない!なんて風潮すらあった。カワサキモータースジャパンが雑誌広告を止めるずっと以前の話である。(現在カワサキは、川崎重工業が雑誌広告を入れているようだが)その代わりに風俗広告が入ったりもしているが、それでも4メーカーの広告が入らないということは、日本のバイクメーカーに媚びることなく記事を展開できる、というメリットがあった。ある意味、真のジャーナリズムも展開できた、というわけだ。その分、メーカー主催のニューモデル試乗会において、チャンプUならではのご苦労もあったと聞くし、あるジャーナリストは「チャンプUが一番好きなことが書ける」とも言っていた。そのアドバンテージが、ワンダバダ長沢氏のギリギリな路線のマンガにつながっていた。(それが、すんごく面白かったわけだけど)

『チャンプU』のアドバンテージでもある、あるポリシーが今回休刊の決定打にもなったような気がする。ほかの中古バイク雑誌と比べるとわかるが、チャンプUはあるジャンルのバイクを一切排していた。それだけでなく、そのバイクの原産地の表記など、マジメ過ぎるほどマジメに雑誌作りを行っていた。それが致命傷になっていたとしたら、本当に残念だ。

ところで、一つの雑誌が休刊することで、「バイク雑誌は不景気だ!」「バイク業界はやっぱり不景気」みたいなことを言う人も多いんだけど、それはちょっと違うと思う。現在、バイク関係の定期刊行誌は実に40誌以上。80年代が10誌程度だったことを考えると、ずいぶんと増えている。バブル崩壊直後の90年代前半でも20誌程度だったから、いまだに増え続けていることがわかる。もちろん、80年代は1誌につき10万部以上が当たり前、現在は数万部が当たり前だし、細分化が進んでいるからトータルしてのマスは変わらないかもしれないけれど、バイクの販売台数が半減したにも関わらず、相変わらずバイク雑誌は売れ続けているのは確か。

雑誌創刊は、「これを言いたい!」「これを伝えたい!」という強烈な編集者の熱意やポリシーで創刊される場合と、出版社の売上増だけを狙って作られる場合とある。両方が合致する場合だってある。100頁のうち、1頁でも編集者の強烈なメッセージが伝わってくるものがあれば、その雑誌の存在価値はあるんだと思う。
まあ、売れていても休刊する雑誌もある(実売部数と広告収入との兼ね合い)ので一概には言えないが、チャンプU休刊はとにもかくにも残念だ。

チャンプUよ、ありがとう。さようなら。

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