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2004.06.25

左右盲



最近、気になっていることに“左右盲”がある。簡単に言えば、『右、左の区別が付かないこと』である。

かくいう私は、小学校1年生の健康診断後まで、左右を理解していなかった。厳密に言うと、右左の概念は理解していたのだが、どっちが右でどっちが左かを知らなかった。
なぜ発覚したかと言うと、視力検査で0.5の仮性近視と診断されてしまったからである。親が慌てて、「アレは見える? コレは見える?」と聞くが、どれもこれも見える。実は、私は両利きで、よく「お箸を持つ方が右」などと教わるのだが、どちらの手も使うことがあったので、どっちが右か解らなかったのだ。
で、健康診断の視力検査は「C」の開いている方を指すわけだが、どういうわけか、そのときは指で指すことが許されず、言葉で「右、左、上、下」を言わねばならなかった。自分自身、右左がよく解らないのは自覚していたが、それを悟られるのは子どもながらプライドが許さず、適当に答えていたら仮性近視、ということになってしまったというわけである。実際には2.0の視力だった。

左右盲について説明した文章があるので紹介する。

■左右盲(295)  ドイツの心理学者クルト・エルゼ(1925)は、「色盲」からの類推かと思われるような「左右盲」という新造語を考案した。その例として、帝政ロシアの補充兵のことをあげている。左右の区別がどうしてもできないので、その違いを教えるのに、右足にはワラ束、左足にはまぐさの束をつけさせて訓練したという。ただし、左右盲は単に知能が低いためばかりではない、というのがエルゼの主張である、かの著名なジグムント・フロイトやヘルマン・フォン・ヘルムルツ、詩人シラーたちも、左右の区別に悩まされた人たちの仲間入りをしているという。(語彙の森DICTIONARY out of focusより引用)

この説明では、左右盲は知能が低いためばかりではない、というのはわかるが、どうして左右盲が起こるのか分かりにくい。
最近では、下のような研究があることを知った。言葉が介入すると左右の混同が起きやすい、しかし言葉の介入なくしても左右の混同は起きる、という主張である。

吉村浩一: 法政大学文学部

タイトル: 左右の混同は言葉が介在しなくても起こるのか?

内容:左右方向への働きかけに際しての混乱は,誰もが経験するところである.際だって顕著な人は“左右盲”と呼ばれるそうである.その混同には,「みぎ」「ひだり」という言葉が介在することが多く,言葉が関わらない状況では,混同は目立たない.しかし,言葉が介入しなくても,左右混同はなお起こる.鏡の問題,画像再認課題での左右反転刺激の誤再認問題,対称性認知の問題,などを通して,左右問題の本質を考えていきたい.そして最後に,「知覚することは記述すること」とのIrvin Rockの主張を通して,知覚・認知過程における命名・記述の重要性を提案したい.理解することと行為することとの乖離を考える手がかりになるかもしれない.(第5回 認知と行為についての研究会のサイトより引用)

ところで、なぜこんなことを思い出したかと言うと、最近、“左右盲”と思われる人に二人出会ったからだ。

一人は、外車特有の左ウインカーレバーを理解することができなかった。レバーをどちら側に動かすと、右折合図になるのか、左折合図になるのか、なかなか理解できない。(答えは、上に動かすと右、下が左)
さらに、助手席で私が「次を右折です」とか「左折」とかナビをしても、すぐには理解できない。途中で気がついて、言い方を「次をみぎ」「ひだり」と言うようにしてみたら、少しはよくなったが、それでも、ウインカー動作とはなかなか結びつかなかった。

もう一人は、自分で左右の区別が付きにくいことを自覚していて、自主的に左手首にミサンガを付けていた。その人は左利きだった。


左右盲の人はどれくらいいるのだろうか。
多数の初心者に接している、教習所の指導員にリサーチしてみた。すると、「月に一人はいないが、年間数人は出会う」とのことだった。それほど多くはないが、それでもたまにはいる、ということだ。
教習所は「教習コース」というのがあったり、路上教習では「自主経路設定」と言うのがあって、指導員とのやりとりの中で、「右、左」の指示は重要な項目となる。それで、左右盲を疑われる教習生に、どのように指導するのか尋ねると、「なるべく“右折、左折”という言葉は使わず、“みぎ、ひだり”と言う」とか「言葉で言うだけでなく、指で方向を示す」とのことだった。
先程の外車のウインカーの場合(最近は、教習生確保のために、外車を教習車に導入している教習所も多いようだ)、「ハンドルを回す方向、行きたい方向にウインカーレバーを動かす」と指導するそうだ。なるほど、右に行きたい場合はハンドルを右に回す。ウインカーレバーもハンドルを回す方向、すなわち左レバーなら上側、右レバーなら下側となるわけだ。

ごくたまに道で、ウインカーの動きとは逆の方向に行くクルマを見かけることがある。もしかして、彼らは“左右盲”ではないか?
ウインカーの点滅を見て、「あ、このクルマは右折をするから、左側から追い抜けるな」と思って左側方を通過中、そのクルマが左折してきて巻き込まれてしまう……。そんな事故もあるのではないだろうか。
前を行くクルマが、右折ウインカーを出しているからといって、本当にドライバーは右方向を見ているだろうか? そのクルマは交差点の中央に向かっているだろうか?

それでは、“左右盲”の人は運転が危ない、免許を取らせないようにしろ、という短絡的な考えもあるだろう。しかし、多くは言葉が介在したときに左右を混同している場合が多い。横にナビゲーターがいるときとか、始めて行く場所に地図を見ながら行くときに起こる混同だ。自分が理解している道順に対しては、左右盲であることは問題がないのだ。
困るのは、もし左右盲の人がタクシーの運転手になりたいとかそういうときに不自由なだけで、初心者や高齢者の運転を暖かく見守るとき同様、周りの運転者が注意深く運転すればいいだけのことである。

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コメント

ボクも40年以上左右盲(って言葉初めて知りました)です ~_^
でぇ、生活上デメリットの大きい箸とエンピツ、それからパチンコ(笑)以外は、左です。
いまだに「右手挙げて」って言われたら、左手が反応します。
その他エピソードもyukkyさんの書かれていること同様なのがたくさん。

アノKRSの卒業生ですが、教官は左右盲早めに判ってくれて助かりました。
古~いハナシですが4輪の教習では、場内で教官の右左折指示を間違えて、軽い事故起こしたことも(涙)左右盲なんて指摘されると、アノ事故もソレだったんだなぁって。

投稿: aki@神戸 | 2004.06.29 10:48

私は道案内を聞かれて、普通に右を指して「左に曲がって…」とかいいます。

自分は左利きなので、脳内イメージが
左← →左 >>>>(右)
なのです。
たぶん、こんな私は左右盲だと思います。

投稿: minase | 2009.05.25 19:10

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